OTC類似薬の自己負担見直しで与党合意 何がどう変わるのか?やさしく解説
市販薬と成分や効果がほぼ同じ「OTC類似薬」について、医療機関で処方された際の自己負担を見直す方針で、自民党と日本維新の会が合意しました。薬の値段(薬剤費)の4分の1を追加で自己負担してもらう仕組みとしつつ、子どもや入院中の患者などは対象から外すなど、一定の配慮も盛り込まれています。
本記事では、この「OTC類似薬」の仕組みや、今回決まった見直しの内容、家計や医療にどのような影響が出るのかを、できるだけわかりやすく解説します。
OTC類似薬とは?まずは基本を確認
OTC類似薬とは、「市販薬(OTC医薬品)と成分や効能・効果が同じ、あるいはよく似ている医療用医薬品」のことです。たとえば、ドラッグストアで買える風邪薬や解熱鎮痛薬と、病院で処方される似た成分の薬がある場合、後者がOTC類似薬に該当する可能性があります。
ただし、成分が同じでも、
- 用法・用量(飲む回数や量)
- 効能・効果の範囲
- 対象年齢
- 剤形(錠剤・液剤・貼り薬など)
- 投与経路(飲む、塗る、貼る、点眼など)
といった点が市販薬と異なることも多く、「まったく同じ薬」とは限りません。そのため、いきなり保険適用から外すのは難しいとされてきました。
なぜいまOTC類似薬の負担見直しなのか
背景には、日本全体の医療費の増加と、それに伴う保険料負担の重さがあります。政府・与党は、医療保険制度を持続可能にするため、さまざまな分野で医療費の抑制策を検討してきました。
これまでの議論では、
- OTC類似薬を保険適用外(10割自己負担)にする案
- 保険適用は維持したまま、追加負担を求める案
など、複数の選択肢が検討されてきました。
しかし、
- 患者負担が一気に増えすぎる
- 低所得者や慢性疾患の患者への影響が大きい
- 必要な受診が減ってしまうおそれ
といった懸念から、完全な保険適用外とする案はいったん見送られ、今回のような「保険給付は残しつつ、追加で一部を負担してもらう」方向で調整が進められてきました。
自民・維新が合意した「4分の1追加負担」とは
与党が合意した今回の見直し案では、OTC類似薬は引き続き保険適用の対象としつつ、薬剤費の4分の1を追加負担してもらう仕組みが採用されます。
ポイントを整理すると、次のようになります。
- 対象:市販薬と成分や効能が同等・類似しているとされる医療用医薬品(OTC類似薬)
- 負担の仕組み:通常の自己負担(例:3割負担)に加え、薬剤費の4分の1を上乗せ
- 例外(除外される人・場合):子どもや入院中の患者など、負担に特に配慮が必要なケースは対象外
- 対象成分・品目:77成分・約1100品目程度を対象とする案が示され、約900億円の給付費削減が見込まれています
政府試算では、花粉症薬や解熱鎮痛剤など、約1000成分を対象に4分の1追加負担とした場合、約4100億円の医療給付費削減効果があるとされていますが、与党協議の中で対象を絞り込んだ結果、削減規模は約900億円とする方向で合意したと報じられています。
患者の自己負担はどのくらい増えるのか
ここで、具体的なイメージを持ちやすいよう、簡単な例で考えてみます。実際の負担額は保険の種類や所得区分などで異なりますが、仕組みのイメージとしてご覧ください。
例えば、あるOTC類似薬の薬剤費が1000円だったとします。
- 現在:3割負担なら、自己負担は300円
- 見直し後:通常の3割負担300円に加え、薬剤費の4分の1、つまり250円を追加負担
この場合、合計の自己負担は550円となり、約1.8倍に増えるイメージです。10割負担(完全な保険適用外)になるわけではありませんが、負担増は確実といえます。
一方で、もともと検討されていた「保険適用外(10割自己負担)」案では、同じ薬1000円に対して、自己負担は1000円となります。これと比べれば、追加負担方式のほうが負担増をやわらげる形になっているとも言えます。
子どもや入院中の患者などは除外へ
今回の見直しでは、すべての人が一律に4分の1追加負担になるわけではありません。政府・与党の協議や有識者の議論では、
- 子ども
- 入院中の患者
- 慢性疾患で継続的にOTC類似薬を使う患者
- 低所得者
など、特に配慮が必要な人たちをどう守るかが大きな論点でした。
その結果、子どもや入院時などは、OTC類似薬の4分の1追加負担の対象から外すことで、自民党と日本維新の会が合意しました。詳細な対象範囲(年齢の区切りや所得基準など)は、今後の制度設計の中で詰められていくとみられます。
医療費全体ではどれくらい削減されるのか
政府が与党に示した試算では、
- OTC類似薬を完全に保険適用外とした場合:約1兆円の医療費削減効果
- OTC類似薬の薬剤費の4分の1を追加負担とした場合:約4100億円の医療給付費削減
とされています。ただし、実際に与党が合意した案では、対象成分を77成分・約1100品目に絞り込んだため、削減額は約900億円規模と報じられています。
また、医薬品全体の見直しや、ほかの施策も含めて、約1880億円の医療費削減を見込むとの報道もあり、OTC類似薬の見直しはその一部を担う位置づけです。
この削減効果は、医療保険の財政改善や、将来的な保険料の上昇を抑えることにつながると期待されていますが、一方で、
- 患者の実感としての「負担増」がどこまで許容されるか
- 受診行動や薬の使われ方にどのような変化が出るか
など、慎重な見極めも必要です。
患者・利用者への影響と注意点
今回の見直しにより、OTC類似薬が処方された場合の自己負担は増える可能性が高くなります。一方で、同じ成分・似た効果をもつ市販薬がドラッグストアなどで購入できる場合、どちらを選ぶかという選択肢も現実味を帯びてきます。
患者側の視点で考えると、次のような点が重要になります。
- その薬が本当に市販薬で代替できるのか(用量・対象年齢・他の病気との兼ね合いなど)
- 医師が処方する理由(症状の重さ、ほかの薬との飲み合わせ、持病との関係など)
- 市販薬を自己判断で使っても問題ないかどうか
医師や薬剤師は、こうした点も踏まえて薬を選んでいます。金額だけで判断せず、必ず医師・薬剤師に相談しながら選ぶことが大切です。
医療現場・薬局側の視点
医療現場では、OTC類似薬の追加負担導入により、
- 患者へ費用面の説明が増える
- 市販薬での代替の可否について、より丁寧な説明が必要になる
- 処方設計の段階で、OTC類似薬以外の選択肢を検討する場面が増える
などの変化が想定されます。
また、薬局・ドラッグストアにとっては、スイッチOTC(もともと医療用だった薬が市販薬に転用されたもの)の活用や、セルフメディケーション支援の役割が、これまで以上に重要になると考えられます。
今後のスケジュールと制度設計の行方
自民党と日本維新の会の合意では、OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直しについて、2025年度中に制度設計を進める方針が示されています。その後、必要な法改正などを経て、順次実施される見込みです。
今後、制度設計の中で具体的に決められていく主なポイントとしては、
- 対象となるOTC類似薬の成分・品目の最終確定
- 子ども・入院中・低所得者など除外対象の具体的な要件
- 追加負担の上限や、高額療養費との関係
- 医療現場への周知、患者向け情報提供の方法
などが挙げられます。
制度がスタートする前後には、保険証や医療機関の窓口、自治体からの案内、メディア報道などを通じて詳しい情報が提供されると見込まれますので、ご自身やご家族が対象になるか、どのように影響するかを、早めに確認しておくことが大切です。
まとめ:負担増と医療費抑制のバランスをどうとるか
今回のOTC類似薬の自己負担見直しは、
- 患者の自己負担を一定程度増やす一方で
- 医療費を抑制し、保険制度を持続可能にする
という、非常に難しいバランスを取ろうとする取り組みです。
OTC類似薬を一律に保険適用外とする案に比べれば、負担増は抑えられているものの、それでも日々薬を使う多くの人にとっては、家計への影響が無視できない規模になる可能性があります。
私たち一人ひとりにできることとしては、
- 症状が軽いときには、セルフメディケーション(自分で市販薬や生活改善を活用する)も上手に取り入れる
- 継続して薬を使う場合は、医師や薬剤師と費用や代替手段も含めて相談する
- 制度の詳細が固まり次第、最新の情報を確認する
といった点が重要になってきます。
制度は今後も見直しが続く可能性があります。生活への影響を丁寧に見極めながら、必要な医療はきちんと受けつつ、賢く医療や薬と付き合っていくことが求められています。




