中小企業にも広がる「確定拠出年金」導入支援と、「はぐくみ企業年金」の役割とは

2025年10月28日—ここ数年で日本社会の少子高齢化が深刻化し、長期的な資産形成や老後資金確保への関心がますます高まっています。こうした背景の中、従来は大企業中心だった「確定拠出年金(DC)」が中小企業にも拡大しています。さらに、「はぐくみ企業年金」といった新しい企業年金制度も注目を浴び、従業員の定着やエンゲージメント向上の実証が進められています。本記事では、最新の政策変更や導入支援策、そして中小企業における確定拠出年金の重要性について、やさしく丁寧に解説します。

確定拠出年金とは何か?

確定拠出年金とは、企業や個人が毎月一定額の掛金を拠出し、その資金を加入者が自ら運用し、運用成績に応じて将来の給付額が決まる制度です。掛金の拠出段階で法人税の節税や社会保険料の適正化などのメリットがあり、老後資産の自助努力を後押しする仕組みでもあります

中小企業への導入が進む背景

  • 従業員100人未満の企業向けに導入支援
    2025年の制度改正により、従業員100人未満の中小企業が確定拠出年金を導入しやすい環境が整いました。特に「1社あたり20万円」の導入費用補助という大きな支援策が話題を呼んでいます。これにより、資金面や制度運用に不安を抱えがちだった中小企業でも、年金制度をスムーズかつ低コストで導入できます。
  • 制度導入による人材確保と定着促進
    終身雇用が揺らぐ中、企業側にとっても福利厚生の充実=“人材確保・維持”の象徴となりつつあります。確定拠出年金の積極導入が、若年から中高年層まで幅広い世代の人材定着を支えているという実証結果も増えています

2025年度法改正のポイント

  • 拠出限度額の引き上げ
    2025年の法改正により、企業型確定拠出年金の拠出上限が月額55,000円→62,000円へ引き上げが決定しています。制度を併用する場合も、限度額の範囲内で柔軟に拠出額の調整ができるようになります
  • マッチング拠出の規制緩和
    これまでは会社の掛金を超えて個人が拠出できない規制がありましたが、2026年4月からは加入者が上限まで自由に拠出できるようになります。自分のライフステージや資産形成目標に応じて最適な運用プランが選べるようになりました
  • 運用の可視化
    年金運用の透明性が強化され、厚生労働省が運用状況を集約・開示します。加入者は運用商品や過去の実績、手数料を見比べながら、納得のいく資産運用がしやすくなります
  • 段階的な施行
    一部の改正内容は2026年4月、拠出限度額の引き上げは2027年1月からと、施行時期に差があります。最新情報は公式発表で必ず確認しましょう

中小企業が確定拠出年金を導入するメリット

  • 税制面の恩恵
    企業拠出分は全額損金算入となり、法人税の軽減、社会保険料の適正化にもつながります。「役員報酬調整」や「決算賞与の活用」などの従来型の節税策と相乗効果があります
  • 福利厚生の強化・採用競争力アップ
    福利厚生施策の充実は、求人募集における注目度を飛躍的に高めます。特に若年層を中心に“自助努力による資産形成”への関心が強いため、導入企業は求職者から選ばれる理由の一つとなっています
  • 従業員の資産形成サポート
    運用成績次第で資産額が増加しやすく、早期加入メリットも大きいため、従業員の将来不安の軽減や、安心して長く働く環境づくりに貢献します。
  • 経営者自体の退職金対策
    オーナー企業でも役員加入ができるため、経営者自身の退職金や将来資金の準備にも最適です。

「はぐくみ企業年金」とは?

「はぐくみ企業年金」は、特に中小企業向けに開発された総合型の確定給付企業年金制度です。従来の多くの企業年金制度が手続きやコスト、運用管理の手間が大きかったのに対し、「はぐくみ企業年金」は小規模な企業でも参加しやすい設計を実現しています。

具体的には、制度運営や管理コストの低減、柔軟な掛金設定、中小企業が連携してリスクや負担を分散できる仕組みなどが評価されています。各企業が個別で年金制度を運用するよりも経済的・実務的負担が軽くなり、導入障壁が大きく下がりました。

実証される人材定着・エンゲージメント向上

  • 人事・組織面での効果
    近年、「はぐくみ企業年金」を導入した企業では、従業員の離職率低下、エンゲージメント(自社への働きがい・愛着心)の大幅向上が報告されています。「退職金・年金がある会社」で働き続けたいという心理的安心感が、従業員の定着や社内の一体感を促進する大きな要因とされています。
  • 中小企業の採用競争力アップ
    福利厚生面で大手並みの制度を整えることで、地元優秀人材や新卒・即戦力を採用しやすくなり、経営基盤の強化につながります。

導入・運用における留意点

  • 制度設計や導入時には専門家のサポートが不可欠です。社内説明会から各種手続き、規程整備、運用開始後のフォローまで、信頼できる外部パートナーの活用が推奨されます
  • 法改正や制度変更の内容・時期を必ず確認し、最新情報に基づいたアップデートを行いましょう

まとめ—「確定拠出年金」を味方につける中小企業の明日

今後、中小企業にとって「確定拠出年金」や「はぐくみ企業年金」の導入は、従業員満足度や人材定着・採用競争力アップのための最重要施策になりつつあります。
制度導入に不安や疑問がある場合は、早めに専門家に相談し、自社に最適な仕組みを見つけましょう。新しい年金制度を上手に活用して“選ばれる会社作り”を進め、自社の未来を明るく切り拓いてください。

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