岐阜県の高校生が挑む宇宙への第一歩 ― 静岡大学超小型衛星「STARS-Me2(蓬莱)」が宇宙空間へ

静岡大学が開発した超小型衛星「STARS-Me2」ついに宇宙へ

2025年9月19日、静岡大学工学部能見公博教授が率いる研究チームによって開発された超小型衛星「STARS-Me2(愛称:蓬莱)」が、国際宇宙ステーション(ISS)から宇宙空間へと放出されました。この衛星は、1Uサイズ(約10㎝四方)のCubeSatと呼ばれる超小型衛星で、宇宙ゴミを除去する技術開発だけでなく、未来の宇宙エレベーター構想を見据えた壮大な実験の舞台となっています。

このプロジェクトは「STARS-Me」の後継機であり、静岡大学能見研究室の学生が中心となって設計・開発を進めました。さらに、岐阜県の高校生たちも一部開発に参画し、高校生としては全国的にも珍しい宇宙実験の現場に携わったことが大きな話題となっています

衛星ミッションの概要と「宇宙エレベーター」への夢

  • テープテザー伸展実験
    STARS-Me2最大の目玉は、先代機STARS-Meでも実施された「テープテザー伸展」ミッションです。衛星から長さ約10mのテープ状物質(テザー)を宇宙空間で伸ばす技術に挑戦。その途中経過を、衛星先端のカメラで撮影します。
    テザーには剛性の高いコンベックス材が採用され、展開はモーター制御によってなめらかに行われます。
  • 宇宙ゴミ掃除技術の探求
    昨今、地球周回軌道上に存在する「宇宙ゴミ(スペースデブリ)」の大量発生が大きな課題となっています。STARS-Me2は、テザーを使い宇宙ゴミの除去・減速への応用可能性を探る実験要素も備えています。これは将来の宇宙環境安全保障のための重要な一歩です。
  • 宇宙エレベーターへの技術的チャレンジ
    テザー技術は、本来地上と宇宙を結ぶ「宇宙エレベーター」構想に不可欠な基礎技術です。STARS-Me2での研究開発は、遠い将来の宇宙輸送革命を見据えた壮大な挑戦でもあるのです。
  • 教育的意義と岐阜県高校生の参加
    本プロジェクトには、静岡大学の学生はもちろん、岐阜県の高校生も重要な役割を果たしました。設計支援や一部組立、通信試験などに積極的に参画し、科学教育と実践的キャリア育成を両立させています。これにより、地元岐阜県や静岡県に限らず全国の青少年への「宇宙教育」の普及が期待されています。

打ち上げから宇宙放出まで ― 一大イベントの流れ

STARS-Me2は2025年8月21日、日本時間17時、米スペースX社のFalcon9ロケットに搭載されて打ち上げられました。その後国際宇宙ステーション(ISS)へと無事到着。入念な準備の後、9月19日に宇宙空間へ正式に放出されました。この瞬間は、開発関係者のみならず岐阜県や静岡県の学生・児童や、関係教員にとっても特別な出来事となりました

放出直後、衛星からの通信を日本各地のアマチュア無線家が受信しようと、SNSや各種受信報告フォームなどで盛り上がりを見せるなど、全国的に多くの人々がこの衛星の運用に関心を寄せています。

「交信できず」 ― 静大教授による記者会見、原因究明へ

放出後の初期運用では、衛星と地上局との通信が予定通り確立しませんでした。これを受けて、静岡大学の能見教授は緊急の記者会見を行い「現在、原因を調査中であり、必ず解決の道を探る」と力強くコメントしました。

通信不良は衛星開発において珍しいものではなく、地上局のアンテナ状態、衛星側のバッテリーや送信機の動作不備、宇宙環境の影響など原因が多岐に及びます。静大チームは早急に原因分析を進め、再度の受信・通信確立に向けて全力で取り組んでいます。

この過程には、高校生開発メンバーも記録・分析サポート等で関わっており、実際の宇宙運用最前線の経験を積み重ねています。

岐阜県高校生の挑戦 ― 地元への広がりと教育的効果

岐阜県の高校生がSTARS-Me2の開発に携わったことは、地元教育界にとって大きな意味があります。今回のプロジェクトを契機に、以下のような広がりが生まれています。

  • 校内・地域の宇宙実験や科学教育の機運の高まり
  • 地元新聞社や自治体、各種科学イベントでの表彰・紹介
  • 将来的な大学進学やキャリア形成への新たな目標設定
  • 全国レベルの学生・生徒ネットワーク拡大

岐阜県の参加校では衛星製作体験ブースや通信体験講座なども開催され、地元企業・教育委員会との連携が進行中です。大学との架け橋となり、地域活性化への新たな道ともなりつつあります。

衛星「STARS-Me2(蓬莱)」プロジェクトの今後

今回宇宙空間に放出されたSTARS-Me2は、予定された通信回復に向けて運用体制を強化しながら、実験データの収集を続けています。また、テザー伸展実験から得られる知見は、今後の宇宙ゴミ除去技術や宇宙エレベーター関連開発に直結する貴重な成果となります。

岐阜県の高校生による技術参画は、2025年現在、全国の学生による最先端宇宙開発への参加モデルケースとして注目されています。教育現場における宇宙への志・科学的探究心の育成、そしてチームワークの大切さを知る良い機会になりました。

「宇宙は遠い世界ではない――若い世代の一歩が、未来の日本の宇宙科学を切り拓く」。STARS-Me2(蓬莱)に込められた夢と現実への挑戦は、これからも多くの人々、特に岐阜県ゆかりの高校生たちに刺激と勇気を与え続けていくことでしょう。

皆さんも参加できる!受信報告や応援の輪

アマチュア無線を通じた衛星通信ミッションでは、全国の学生や一般市民も受信報告に参加できます。静岡大学公式サイトやSNSを通じてアンテナ設置法、受信報告フォームなども公開されており、科学への好奇心を誰もが実践できる時代となりました。

一部受信報告フォームや関連イベント情報は、静岡大学のWebサイトやX(旧Twitter)公式アカウントで随時配信されていますので、ぜひチェックしてみてください。

まとめ:岐阜県の高校生と静岡大学が拓く新たな宇宙チャレンジ

  • 静岡大学が開発した超小型衛星STARS-Me2(蓬莱)がISSから宇宙空間に放出
  • 岐阜県の高校生がプロジェクト開発に積極参加し、新たな教育モデルを構築
  • 通信不良問題も起きたが、原因究明と改善に向けてチーム一丸で取り組み中
  • 宇宙ゴミ除去技術や未来の宇宙エレベーターの基礎となるテザー伸展実験を実施
  • 地元岐阜県全体への波及効果と次世代育成、科学教育活性化に期待

岐阜県から全国へ、日本中の青少年が宇宙を身近に感じ新たな科学の時代に挑戦する――そのきっかけとなる「STARS-Me2(蓬莱)」プロジェクト。今後もみなさんと共に進化し続けます。

参考元