京都大学が依存性なし、モルヒネに匹敵する新鎮痛薬「アドリアーナ」を開発

2025年8月5日、京都大学の研究チームが新たな鎮痛薬「アドリアーナ」を開発したと発表しました。この薬は現在医療現場で使われている強力な麻薬性鎮痛薬「フェンタニル」やモルヒネに匹敵する痛みを和らげる効果を持ちながら、依存性や重篤な副作用がほとんどないことが特徴です。2028年の実用化を目指しており、医療現場のみならずアメリカで深刻な社会問題となっているオピオイド依存症の解決にも大きな期待が寄せられています。

これまでの鎮痛薬の課題と「フェンタニル」問題

モルヒネやフェンタニルは、強力な鎮痛効果がある一方で、依存症や過剰摂取による死亡事故が多発し、特にアメリカでは深刻な社会問題となっています。フェンタニルの過剰摂取を原因とする死亡者数は年間7万人以上とされ、社会的にも多くの犠牲者を出してきました。このため、より安全で依存性の低い鎮痛薬の開発が強く求められていました。

「アドリアーナ」の開発背景と特徴

京都大学大学院医学研究科の萩原正敏特任教授らの研究チームは、痛みが脊髄から脳へ伝わる仕組みと神経伝達物質「ノルアドレナリン」の役割に着目。通常、命の危険を感じる状況ではノルアドレナリンが分泌されて痛みを抑える自然のメカニズムが働きます。これを応用し、新しい作用機序によって効く鎮痛薬「アドリアーナ」を作り出しました。

  • 強力な鎮痛効果:フェンタニルやモルヒネに匹敵する痛みの緩和力。
  • 副作用の軽減:依存症のリスクが極めて低く、重篤な副作用は動物実験や現在の治験で確認されていない。
  • 飲み薬で手軽に使用可能:速効性もあり、2~30分ほどで効果が現れる。

今後の展望と医療現場へのインパクト

研究チームは2026年にもアメリカで治験を開始し、2028年の実用化を目指しています。実用化されれば、がん患者の痛みケアはもちろん、オピオイド依存症の問題解決にも大きく貢献すると期待されています。萩原教授は「がんで亡くなる日まで意識もはっきりし、副作用なく痛みを感じずに過ごしてほしい」という思いを語っています。

アメリカの一部地域で問題となっている「ゾンビ・タウン問題」(フェンタニルの過剰摂取で意識が朦朧とし、歩行も困難な人々が集まる状況)を解消する一助にもなるかもしれません。この薬の開発は、麻薬性鎮痛剤に依存しない安全な痛み治療への扉を開く重要な成果です。

まとめ

京都大学が開発した「アドリアーナ」は、モルヒネやフェンタニルに匹敵する鎮痛効果を持ちながら、依存性や重篤な副作用を抑えた全く新しいタイプの鎮痛薬です。動物実験や現在の治験ではこれらの安全性が確認されており、2028年の実用化を目指して今後も臨床試験が進められます。

がん患者や慢性痛に苦しむ人々のQOL(生活の質)向上に繋がることはもちろん、アメリカで社会問題化しているオピオイド依存症や過剰摂取による死者数削減にも期待がかかっています。医療現場の痛み治療に革命をもたらす新薬として世界中から注目されています。

【参考情報】

  • 毎日放送(MBS NEWS)「京都大学が依存性少ない新たな鎮痛薬開発」2025年8月5日
  • フジニュースネットワーク(FNN)「依存性ない鎮痛薬を京都大が開発」2025年8月5日
  • TBSニュース「京都大学がフェンタニルに代わる鎮痛薬を開発」2025年8月5日

参考元