次世代太陽電池「ペロブスカイト」が注目される理由
近年、太陽電池業界で大きな注目を集めているのが「ペロブスカイト太陽電池」です。従来のシリコン型太陽電池と比較して、ペロブスカイト太陽電池は薄くて軽く、柔軟性に優れているという特徴があります。さらに、高い発電性能を持ちながらもモジュールコストやシステムコストが低いという利点も備えています。
このような特性から、ペロブスカイト太陽電池は様々な用途での活用が期待されています。宇宙機器や電気自動車、スマートウェア、電波ソーラー時計、CO2センサーなど、従来の太陽電池では設置が難しかった場所や用途への応用が可能になるのです。また、室内の低照度環境でも発電できるという特性を活かして、IoTセンサーやアロマディフューザーなど、すでに実用例も増えてきています。
ペロブスカイト太陽電池の最大の課題「耐久性」
しかし、ペロブスカイト太陽電池には大きな課題があります。それが耐久性の問題です。発電性能や軽さ、柔軟さなど多くの優れた特性を持つペロブスカイト太陽電池ですが、屋外で長期間使用する際の耐久性が十分ではないとされています。
この耐久性の課題を克服することが、ペロブスカイト太陽電池の実用化と普及を大きく左右する重要なポイントとなっているのです。
コニカミノルタの「バリアフィルム」が解決策に
この課題に対して、画像機器メーカーとして知られるコニカミノルタが革新的なソリューションを提示しました。それが「バリアフィルム」です。
バリアフィルムは、ペロブスカイト太陽電池に水分が浸入することを防ぐ保護フィルムです。コニカミノルタは、水分の浸入を抑制するバリアフィルムを薄膜化する独自技術を開発しており、これによってペロブスカイト太陽電池の耐久性を大幅に向上させることができるとされています。
ペロブスカイト太陽電池においては、ガラス型と比べてフィルム型の場合、バリアフィルムの重要性がより一層高まります。フィルム型の製造では、バリアフィルムが全体構成において非常に重要な役割を担うようになるのです。
業界首位を狙うコニカミノルタの戦略
コニカミノルタは、ペロブスカイト太陽電池向けバリアフィルム事業で2035年に業界トップシェアを獲得することを目指しています。同社では、2035年の国内を中心とするバリアフィルム市場規模を500億~800億円と想定しており、この巨大な市場への参入を積極的に進めています。
具体的なロードマップとしては、2026年に太陽電池モジュールメーカーへ量産サンプルの提供を開始し、2030年頃には生産体制を確立する計画となっています。この計画に基づいて、着実に事業展開を進めていく方針です。
また、コニカミノルタはペロブスカイト太陽電池の実用化に向けた多角的な取り組みも行っています。フィルムモジュールで世界最高レベルの21%超の変換効率を達成した他、ペロブスカイト/シリコンの4端子タンデム型太陽電池では変換効率30%超も実現しています。
エネコートテクノロジーズとの協力体制
コニカミノルタのバリアフィルムは、ペロブスカイト太陽電池の開発企業であるエネコートテクノロジーズに供給されることが発表されています。エネコートテクノロジーズは2025年9月に、薄くて曲がるペロブスカイト太陽電池の開発に向けた産学連合を設立しており、トヨタ自動車、日揮、豊田合成など9社と京都大学、青山学院大学が参画しています。
この連合は2030年までの協力を予定しており、次世代太陽電池の実用化に向けた一大プロジェクトとなっています。エネコートテクノロジーズは2026年に量産工場を完成させ、2027年から量産を開始する計画であり、初期段階では室内や低照度向けのペロブスカイト太陽電池が中心となる見込みです。
多面的なアプローチでペロブスカイト太陽電池事業を展開
コニカミノルタは、ペロブスカイト太陽電池分野での取り組みをバリアフィルムだけに留めていません。耐久性向上に寄与するバリアフィルムの開発に加えて、ハイパースペクトルイメージングを使った特性や品質の検査に関連する技術開発にも取り組んでいます。
さらに、同社が2025年9月に発売した産業用インクジェットヘッド「KM1024iSHE-HM-LV」も、ペロブスカイト太陽電池の研究開発に活用されています。このインクジェットヘッドは溶剤への耐性に優れており、ペロブスカイト層の精密な塗布が可能です。マイクロジェット社が培ったインクジェット技術の知見とコニカミノルタの付加価値の高いインクジェットヘッドを組み合わせることで、ペロブスカイト太陽電池普及に向けた研究に貢献していくとされています。
実用化に向けた次のステップ
ペロブスカイト太陽電池は、その薄さと軽さ、柔軟性を活かして、建物の壁面など従来の太陽電池では設置困難だった場所への導入が可能になります。また、トヨタ自動車とコニカミノルタは共同で、電気自動車のルーフにペロブスカイト太陽電池を搭載する検証も始めており、走行距離の延伸を目指しています。
こうした取り組みを通じて、ペロブスカイト太陽電池は次世代の再生可能エネルギー源として、社会への導入が加速していくと期待されています。コニカミノルタのバリアフィルム技術は、この次世代太陽電池の実用化を支える極めて重要な要素となるのです。



