創業133年の米コダック、再び「事業停止の危機」報道と実情

写真フィルムのパイオニアとして世界的に知られるイーストマン・コダックが2025年8月、再び「事業停止の危機」に直面しているのではないかという報道が波紋を呼びました。コダックは130年以上にわたり写真文化をリードしてきましたが、その背後で経営面ではこの数年、厳しい状況が続いてきました。

事業停止危機報道の背景

  • 米コダック(Kodak)は2025年8月11日に発表した第2四半期決算で「継続企業としての存続能力(ゴーイングコンサーン)に重大な疑義が生じている」と記載しました。これは、およそ5億ドル(約740億円)分の債務に対して「確約された資金調達や利用可能な流動性がない」としたことに由来しています。
  • この発表を受けて、米CNNなど各メディアが「コダックは事業停止や破産の危機にあるのでは」と一斉に報じ、世界的に大きな関心事となりました。
  • コダックの株価も不安定な動きを見せており、投資家や顧客、取引先など関係者の間で動揺が広がっています。

コダック側の公式見解―「危機」報道への反論

  • コダックは「破産や事業停止の計画そのものはなく、債務返済や借り換えについても自信がある」と明言し、危機報道に反論する声明を発表しました。
  • 具体的には、

    • 約4億7700万ドルの長期債務と1億ドルの優先株を保有しているが、
    • 2025年末の退職年金制度終了により、約5億ドルの資産を受ける見込みで、
    • このうち約3億ドルを今年中に債務返済へ充てる計画です。
  • これらを完了すれば「過去数年で最も強固なバランスシートになる」と自信を見せ、「実質的に純負債ゼロ」の状況も達成できると発表しています。
  • また、カメラやインク、フィルムなどの主要製品については米国内での製造体制を維持しており、関税など外的要因が事業継続に大きく影響することはないとも述べています。

なぜ「ゴーイングコンサーン」注記が付いたのか

「ゴーイングコンサーン」とは、「企業が今後も事業を継続できるかどうかに重大な疑義がある」ことを指す企業会計上の用語です。

  • 今回コダックの決算には「ゴーイングコンサーン(継続企業の前提)」の注記が付されました。
  • その理由は、債務返済資金の確保が完全には契約・確定していないため、米国会計基準(US GAAP)上、「債務返済計画が自社の完全な管理下にない場合、確実とはみなせない」と判断されるからです。
  • つまり、帳簿上は大きな現金収入が見込まれているものの、「現時点で100%確定している」わけではないため、やむを得ず「企業継続への重大な疑義」が記載されました。

コダックが直面している課題

  • 約5億ドルの債務返済:特に、退職年金制度の見直し(終了)で得られる資金を活用した返済計画が進行中です。
  • デジタル化時代の経営難:かつて写真産業を席巻したコダックは、デジタル技術の急速な普及に対応しきれず、2012年に一度経営破綻(破産)を経験しています。その後も再建に努めてきましたが、フィルム需要の減少や新たな収益源の確立に苦しんできました。
  • 年金債務や製造コスト:長年の従業員への年金支払い義務など歴史の長い企業ならではの資金的負担も重荷となっています。

業界と市場への影響

コダックは現在も一部で根強い人気を持つフィルムやカメラ用製品を製造しており、昨今はインクジェットプリンターや商業印刷、医療向け画像技術などにも挑戦しています。しかし、主力製品だった写真フィルム需要が激減した影響は今も尾を引きます。投資家や業界関係者は、今後のコダックの資金調達や経営状況を注視しています。

今後の見通し

  • コダック側は「年内債務返済の完了に自信あり」としており、これが実現すれば経営は大きく改善すると表明しています。
  • ただし、実際に資金の確保や債務返済計画が順調に進むか、今後の進捗次第で再び状況が変動する可能性もあります。
  • デジタル時代の波に飲まれた象徴的な老舗として、今後の経営再建の歩みが注目されます。

コダックから学ぶこと

コダックのケースは、技術革新と事業転換の重要性、そして経営基盤の強化が企業存続に不可欠であることを改めて教えています。アナログからデジタルへの大きなパラダイムシフトのなかで、世界の大企業も例外ではない「経営危機」のリスクと、そこからの対応策を模索し続けるコダックの姿勢は、今後多くの企業にとっても参考となるでしょう。

まとめ

  • コダックは2025年8月時点で「事業停止の危機」報道に揺れるも、公式には否定。
  • 大きな債務返済が差し迫っていますが、新たな資金調達と年金制度の改革により、経営改善の見通しを持っています。
  • 今後の経営状況と債務整理の進捗に、世界中の注目が集まっています。

参考元