隈研吾が手がける新名所「KIRISHIMA GREENSHIP icoia」――霧島酒造×スターバックスが描く、森と人がつながる未来

宮崎県都城市に、いま全国から注目を集める新スポットが誕生します。霧島酒造スターバックス コーヒー ジャパンがタッグを組んだコラボレーション施設「KIRISHIMA GREENSHIP icoia(キリシマ グリーンシップ イコイア)」です。 この施設の建築デザインを担当したのが、日本を代表する建築家隈研吾さん。宮崎の豊かな自然に溶け込むような建築と、サステナブルな取り組みが一体となった、新しい「森とまちの憩いの場」として期待されています。

隈研吾建築が彩る「森の憩い場」――KIRISHIMA GREENSHIP icoiaとは

KIRISHIMA GREENSHIP icoiaは、宮崎県都城市に2026年1月27日にオープン予定の、霧島酒造とスターバックスの共同プロジェクトから生まれた新施設です。 焼酎メーカーとコーヒーチェーンという異業種がコラボし、「地域」「自然環境」「人々のくつろぎ時間」をキーワードに、これまでにない体験を提供する場として構想されています。

建築デザインを手がけた隈研吾さんは、木材など自然素材を生かし、周囲の環境になじむやさしいデザインで知られる建築家です。宮崎の豊かな森や、都城というまちの風土と調和する建物づくりによって、「森の中のリビングルーム」のような空間が生まれました。 記事などでは、木の温もりを感じられる外観や、光と風を取り込む開放的な造りが紹介されており、自然の中でゆっくりとくつろげる新名所として紹介されています。

施設名の「GREENSHIP」には、緑(GREEN)と人、企業、地域をつなぐ船(SHIP)のような存在でありたいという思いが込められています。また、「icoia」は「憩いの場」や「行こや(行ってみよう)」といった親しみやすい響きも重ねられており、誰もが気軽に立ち寄れる場所を目指しています。

霧島酒造×スターバックスのコラボレーションの背景

霧島酒造は、1916年創業の老舗焼酎メーカーで、「地域に根ざし、地域と共に発展する企業」を掲げ、宮崎の自然と共生した焼酎造りを続けてきました。 2004年からは従業員参加型の植林活動を行うなど、森林保全や再造林支援にも力を入れてきた企業です。

一方のスターバックス コーヒー ジャパンも、全国各地で地域と連携した環境活動・コミュニティ活動を展開しており、店舗デザインや地域限定商品などを通じて、土地の個性を大切にする取り組みを続けています。

こうした両社の姿勢が重なり、「地域の自然環境を守りながら、人々にくつろぎの時間を届ける場所を一緒につくろう」という思いから誕生したのが「KIRISHIMA GREENSHIP icoia」です。 コーヒーと焼酎という、日常の中の「くつろぎ」を象徴する飲み物を提供する2社ならではの、新しい憩いの空間づくりと言えます。

「みやこんじょ資源循環森林プロジェクト」とは

この施設を舞台に大きな注目を集めているのが、『みやこんじょ資源循環森林プロジェクト(通称ODEN)』です。 霧島酒造とスターバックスが「KIRISHIMA GREENSHIP icoia」で実施する地域社会や自然環境への前向きなアクションを、都城市と一般社団法人more treesが進める「多様性のある森づくり」と連携させた取り組みです。

このプロジェクトの大きな特徴は、資源を無駄にせず循環させながら、森を育てていくという点です。両社はこれまで、「たい肥クラブ」として、南九州大学環境園芸学科の教授や学生と協力し、事業活動で排出されるコーヒーかすや焼酎粕を材料にしたたい肥づくりの実験を行ってきました。

その成果として完成したたい肥を、今度は都城市とmore treesが取り組む「多様性のある森づくり」に活用します。 具体的には、都城市内で採取したイチイガシなどの種子(どんぐり)を「KIRISHIMA GREENSHIP icoia」の敷地内で育苗し、将来的に都城地域の森へ植林することで、豊かな森づくりにつなげていく計画です。

つまり、店舗や工場から出る“廃棄物”が、たい肥として森を育てる力に変わるという、資源循環型の取り組みになっています。こうした仕組みを通じて、「毎日の一杯」が、やがて地域の森の豊かさにつながっていくという、サステナブルな循環が描かれています。

都城市とmore treesが進める「多様性のある森づくり」

都城市は、宮崎県内でも森林資源が豊かな地域であり、その森を未来につなぐための取り組みを進めてきました。 一般社団法人more treesは、音楽家・坂本龍一さんが創設に関わったことでも知られる森林保全団体で、日本各地の地域と連携し、「多様性のある森づくり」を掲げて活動しています。

今回の連携では、都城市とmore treesが行っている多様な樹種を組み合わせた森づくりに、霧島酒造とスターバックスが資源循環の仕組みや、施設を通じた情報発信・体験の場づくりで参加する形となっています。 企業・自治体・NPO・大学など、さまざまな主体が役割を分担しながら、森と人との関係を再構築していくモデルケースと言えるでしょう。

お客様も参加できる「森の集い場 ワークショップ」

このプロジェクトでは、施設を訪れるお客様が森づくりに参加できる機会も用意されています。そのひとつが、霧島酒造、スターバックス、都城市、more treesが共同で開催する「森の集い場 ワークショップ ~木とコーヒーの香りに包まれて、休日のひと時をのんびり過ごしませんか~」です。

ワークショップの内容として紹介されているのは、例えば次のようなプログラムです。

  • つみきで森とまちの未来地図づくり:木のつみきを使って、子どもから大人まで楽しみながら、森とまちのこれからを考える体験。
  • 小さなスツールづくり:施設の家具づくりの過程で出た端材を活用し、自分だけのスツールをつくるワークショップ。
  • 小さなクリスマスツリーづくり:同じく端材を使い、木の温もりを感じるミニツリーを手づくりする体験。
  • 「どんぐり芽吹くかな!?」実験:焼酎パックやコーヒー豆の袋をリユースして、どんぐりの発芽を観察する人気企画。
  • キッズバリスタ体験:子どもたちがバリスタになりきって、コーヒーの世界に触れられる体験プログラム。
  • 「紙漉き文化再生プロジェクト」によるオリジナル一輪挿しづくり:宮崎県立都城商業高等学校による、紙漉き文化をテーマにした手仕事体験。

これらのプログラムを通じて、木材の再利用資源循環の大切さに触れたり、森と私たちの暮らしのつながりを自然と学べるよう工夫されています。単に情報を伝えるだけでなく、「つくってみる」「触ってみる」「香りを感じる」といった体験を重ねることで、子どもから大人まで森への関心を高められる場となっています。

霧島酒造とスターバックスが目指す「持続可能な地域の未来」

霧島酒造は、これまでも従業員参加型の植林活動や、都城地域の再造林支援など、森を守り育てる取り組みを続けてきました。 スターバックスもまた、コーヒーかすのリサイクルや地域とのコラボレーションを通じて、環境負荷を減らしながら新たな価値を生み出す活動を展開しています。

「KIRISHIMA GREENSHIP icoia」『みやこんじょ資源循環森林プロジェクト』は、そうした両社の経験と価値観が、ひとつの「場」と「プロジェクト」に結実した取り組みです。

施設内では、日々のコーヒータイムや、家族・友人とのひとときが、森づくりにつながるアクションへとつながっていきます。例えば、たい肥づくりに使われるコーヒーかすや焼酎粕は、私たちが日常的に楽しむ商品から生まれるものですし、ワークショップでつくるスツールやツリーは、家具づくりの端材から生まれます。

こうした小さな循環を積み重ねることで、「使い終わったら捨てる」から、「次のいのちにつなげる」へと意識を変えていくきっかけを提供していると言えるでしょう。霧島酒造とスターバックスは、「KIRISHIMA GREENSHIP icoia」を通じて、お客様一人ひとりの日常に彩りを添える時間を提供するとともに、持続可能な未来を目指した前向きなアクションを続けていくとしています。

隈研吾の建築が映し出す、森と人の新しい関係

このプロジェクトを語るうえで外せないのが、やはり隈研吾建築です。木材を多用したデザインや、細やかなディテールによって、建物そのものが「森と人をつなぐ媒介」として機能するように設計されています。

雑誌やウェブメディアの記事では、「南九州の週末ドライブで立ち寄りたい新スポット」「旅の目的地になる場所」といった表現で紹介されており、建築そのものを楽しみに訪れる人も多くなりそうです。 カフェとしての居心地の良さに加え、霧島酒造のブランドや地域の文化、森づくりのストーリーが重なり合うことで、ただの「おしゃれな建物」を超えた深みのある体験が生まれています。

木の香りや手触り、差し込む光や風――そうした感覚的な心地よさが、森や自然への興味・関心を呼び覚まし、「この環境を守りたい」という気持ちにつながっていく。隈研吾さんの建築には、そんなさりげない「きっかけづくり」の力があります。KIRISHIMA GREENSHIP icoiaもまた、その一例として、多くの人の記憶に残る場所になっていくことでしょう。

地域から全国へ――広がる森づくりの輪

『みやこんじょ資源循環森林プロジェクト』のような取り組みは、都城市だけで終わらせるのではなく、全国各地へと少しずつ広がっていくことが期待されています。 霧島酒造とスターバックスは、群馬県みなかみ町や大阪府河内長野市など、他地域とも連携しながら、森と人をつなぐ活動を広げていく方針を示しています。

宮崎・都城発のこのプロジェクトは、地域の資源を活かしながら、企業・自治体・市民が一体となって森を育てるモデルとして、これからの日本の地域づくり・まちづくりにも大きなヒントを与えてくれそうです。

隈研吾さんがデザインした「KIRISHIMA GREENSHIP icoia」は、単なる観光スポットやおしゃれなカフェを超えた、「未来の森を育てるための、みんなの憩い場」として、静かに、しかし確かな存在感を放ち始めています。

参考元