キリンビール、海外売上比率20%に向けてマレーシア新会社設立
2025年9月25日、キリンビール株式会社は、東南アジア市場における事業基盤の強化と持続的成長を目指し、マレーシア・クアラルンプールに新会社「KIRIN BREWERY SOUTHEAST ASIA SDN. BHD.(KBSEA)」を設立し、2025年10月1日から事業開始することを発表しました。
この大きな転換点は、キリンビールのグローバル展開と海外売上比率20%という明確な成長目標に向けた「夢への一歩」として、飲料業界のみならず多くの経済関係者から注目されています。
キリンビールの「夢への一歩」―海外売上比率20%への挑戦
キリンビール社長の堀口英樹氏は、今回の新会社設立について「海外売上比率の引き上げこそが、夢への一歩だ」と語っています。
2024年時点でキリンビールの海外売上比率は7%でしたが、今後10年で持続的な成長を実現し、2035年までに20%達成を目指すことを明言しました。
この目標達成のため、東南アジアを中心とした新興市場への進出が不可欠であり、マレーシアでの現地法人設立はその戦略的な布石となります。
世界のアルコール市場の変化と新たな成長領域
- アルコール市場は2010年以降ほぼ横ばいですが、先進国では減少傾向、新興市場は成長期待が高い。
- 特に東南アジアは人口増加・経済成長が著しく、今後の成長エンジンと位置付けられています。
- 消費者ニーズの多様化や健康志向の高まりが市場環境を変動させています。
世界のアルコール消費動向は変化しています。既存先進国では消費量が減少傾向なのに対し、アジアの新興国では、若い世代の増加や所得向上により、アルコール市場の拡大が顕著です。堀口社長は「現状に安住せず、地域ごとのニーズを捉えた商品開発とマーケティングで確かな成長を掴みたい」と語っています。
東南アジア地域本社「KBSEA」設立の目的と役割
- 東南アジアの成長潜在力を最大化し、キリンビールとして現地法人設立。
- 営業・マーケティング・商品開発・OEM事業推進など事業機能の強化。
- 現地代理店と連携し、現地ニーズに根差した事業運営を推進。
これまでキリンビールはシンガポール拠点で東南アジア事業を展開していましたが、現地の機動的な経営判断とマーケット変化への迅速な対応のため、マレーシア首都クアラルンプールに新会社KBSEAを設立しました。これにより、マーケティング戦略はもちろん、ブランド展開、商品開発、現地との品質管理やOEMビジネスによる多様な価値提供が可能となります。
キリンビール海外事業の歴史
- 1888年 ジャパン・ブルワリー時代から輸出開始。
- 2009年 ライオン社(オーストラリア)買収による基盤拡大。
- 2020年 ニューベルジャンブルーイング(米国)子会社化。
- 2025年 現在、世界40カ国以上でキリンブランド展開。
長い歴史の中でキリンビールは着実に海外ネットワークを拡大。近年は北米での「一番搾り」展開や台湾でのブランド販売、「富士」ウィスキーの韓国進出など多面的な事業を進めています。
グローバルでの売上規模は堅調に伸びているものの、売上比率自体は依然として低い水準にあります。
新たな戦略を駆使し、今後の成長基盤をより強固なものにする考えです。
地域別の具体的な展開戦略
- 北東アジア:中国・台湾・韓国において、RTD(Ready To Drink)や洋酒など新商品カテゴリー育成。
- 東南アジア:KBSEA設立を軸に、現地ニーズに即した商品開発・マーケティング・製造拠点設置など。
- 北米:New Belgium Brewing社を活用し、「一番搾り」や「富士」ブランドの供給体制強化。
- オセアニア:Lion社との協業による「一番搾り」ブランド拡大やRTD首位維持。
- 欧州:「一番搾り」「富士」ブランド展開および生産体制の最適化。
各地域別に異なる市場環境や消費者ニーズを把握し、多様な商品ポートフォリオで対応します。特に東南アジアではブランドマーケティングや新商品の展開、現地での製造拠点や代理店連携強化による拡大戦略が進行中です。
東南アジアの市場ポテンシャル
人口増加と経済成長により、東南アジアの酒類市場は拡大が進んでいます。
現地特有の需要に応じた商品開発、マーケティング活動、多様な流通経路の確立、代理店連携を通じて、キリンビールは現地消費者のニーズに素早く対応する体制を構築しています。
また、OEM事業や新商品の投入など柔軟に市場変化へ対応しています。
新会社「KBSEA」の詳細
- 会社名:KIRIN BREWERY SOUTHEAST ASIA SDN. BHD.
- 所在地:マレーシア・クアラルンプール
- 事業内容:マーケティング戦略立案、営業・マーケティング機能強化、商品開発、品質管理、OEM事業推進、代理店連携強化
- 事業開始:2025年10月1日
- 出資者:キリンビール株式会社 100%子会社
KBSEAは、現地に根差した事業運営を推進することで、東南アジア市場における持続的成長と競争力強化を目指します。
サステナビリティと社会への責任
キリンビールは「食と健康」の新たなよろこびを広げ、社会と環境に配慮したものづくりを続ける企業です。
今後もSDGsへの貢献や持続可能な成長を目指し、地域社会・環境に配慮した取り組みを積極的に推進していきます。
キリンビール社長のメッセージ
堀口英樹社長は「消費者の価値観が急速に変化する中、キリンビールは夢に向かい挑戦し続ける企業でありたい」と述べています。
現地法人設立は、グローバルでの事業成長と商品・サービス価値の最大化だけでなく、地域社会への貢献や新たな雇用の創出など、総合的な企業価値向上にも繋がる取り組みです。
今後の展望と期待
キリンビールは「海外売上比率20%へ」という目標達成に向け、多様な商品展開と海外市場でのブランド力強化に取り組みます。
マレーシア現地法人設立による俊敏な経営判断と現地密着型ビジネスモデルは、今後の成長を力強く牽引することが期待されています。
また、引き続きアジア・北米・オセアニア・欧州での展開強化を目指し、世界の消費者へキリンブランドの魅力を届けていきます。