キオクシア株価が急落、決算内容が市場の期待を下回る
東京証券取引所プライム市場に上場するキオクシアホールディングス(証券コード:285A)の株価が、2025年11月14日に大きく下落しました。前日の11月13日の終値1万3,025円から3,000円(23.03%)下落し、取引制限値幅の下限であるストップ安の1万25円で引けることとなったのです。この急落は、前日に発表された第2四半期決算の内容が市場の期待に届かなかったことが直接的な原因となっています。
決算内容が市場の期待値を下回る
キオクシアは2025年11月13日の取引終了後に、2026年3月期第2四半期累計(4月~9月)の連結決算を公表しました。その主な内容は以下の通りです。
- 売上収益:7,911億円(前年同期比13.0%減)
- 営業利益:1,308億円(同55.2%減)
- 最終利益:589億円(同66.5%減)
特に第3四半期単独(7月~9月)の成績は一層厳しく、売上高が4,483億円(前年同期比6.8%減)、最終利益が407億円(同61.7%減)と、前年同期比で大幅な減益となりました。営業利益も前年同期比54.7%減の1,323億円となり、会社計画は上回ったものの、市場予想は下回る結果となってしまいました。
特に懸念されたのは、第4四半期(10月~12月)の見通しです。同社はこの期間のNon-GAAP営業利益見通しを1,000億円~1,400億円のレンジと発表しました。しかし、市場の期待値は1,500億円~1,800億円程度と高く、この発表により大きな失望感が広がることになりました。
単価上昇が想定を下回った点が指摘
キオクシアの業績悪化の背景には、複数の要因が絡み合っています。4月~6月期比では出荷量の増加が見られたものの、メモリー単価の上昇が想定を下回ったことが業績に大きく響いています。AIデータセンター向けのNANDメモリー需要は堅調だと見られていましたが、実際の単価上昇はそれより低い水準にとどまってしまったのです。
このギャップが投資家の期待と現実とのズレを生み出し、大量の売り注文が殺到する事態につながったと考えられます。
株価推移の背景:テンバガー期待から調整局面へ
キオクシアの株価は、9月以降に上昇ペースを強めており、上場来高値である約14,405円(2025年11月11日)まで達していました。年初来の安値が1,510円(2025年4月7日)だったことを考えると、わずか数ヶ月で約10倍近くに跳ね上がるという劇的な上昇を見せていたのです。
この急速な上昇は、AIサーバーやデータセンター向けのNANDメモリー需要が急増するという市場の強い期待に支えられていました。いわゆる「テンバガー」(10倍株になる可能性)への期待が高まっていたわけです。しかし、今回の決算発表を機に、その期待が調整局面を迎えることになったのです。
市場の反応と取引状況
11月14日の取引では、株価は寄り付きからストップ安の1万25円となり、取引時間中も売り気配が継続しました。さらに私設取引システム(PTS)では一時20%を超える下落が記録されるなど、投資家の売り圧力がきわめて強かったことが伺えます。
この急落は、市場の期待値と会社の業績見通しとのギャップを如実に表すものとなってしまいました。10月後半から株価の上昇ピッチが強まっていた反動も強まる形となったのです。
AIデータセンター需要への根強い期待
一方で、市場ではAIデータセンター向けのNANDメモリー需要に対する期待は依然として根強く存在しています。11月11日には、キオクシアがAIデータセンター向けNANDメモリーの特需が株高思惑につながるとのニュースが報道されていました。
この事実から考えると、今回の急落は一時的な調整に過ぎず、今後の業績回復次第では、再び株価が上昇する可能性も残されていると言えるでしょう。ただし、市場の期待値を下回る見通しが示された以上、投資家はより慎重な姿勢で同社の今後の動きを注視することになると考えられます。
今後の展望と投資家の課題
キオクシアにとって現在の課題は、下期の営業利益がどの程度改善するかという点に集約されます。1,000億円~1,400億円という見通しが市場の期待値に近づくかどうかが、株価回復の鍵となるでしょう。
また、メモリー単価の動向も重要なポイントです。AI需要の本格化に伴い、単価がどの程度上昇するのか、あるいは競争激化で下落するのかといった点が、今後の業績を大きく左右することになります。
投資家にとっては、AIデータセンター市場の長期的成長性への期待と、足元の業績悪化という現実をどう評価するかが問われています。テンバガーへの期待はおあずけの状態となりましたが、中長期的には依然として材料豊富な銘柄として注目を集め続けることになるでしょう。


