キオクシアが切り拓くAI時代の新たなSSD革命――100倍速SSDとAI社会の未来
はじめに
キオクシアが発表した次世代SSD技術は、2025年現在のテクノロジー業界やAI市場において非常に大きな話題を呼んでいます。特に、NVIDIAからの要望に応える形で開発が進められている「AI時代向け100倍速SSD」は、従来製品を大きく凌駕する性能で、業界に大きなインパクトを与えています。この記事では、その背景や製品特長、開発の経緯、そしてAI社会とデータセンターの現場に与える影響まで、幅広く分かりやすく解説します。
AI時代の「ボトルネック」問題とSSD技術の進化
AI技術の進歩により、生成AIや高性能計算(HPC:High Performance Computing)など大規模なデータ処理が日常的に行われるようになりました。しかし、その根幹となるストレージが「ボトルネック」として技術進歩を阻害してきた背景があります。従来のSSDやHDDでは最新のGPUの高速処理能力に見合うだけのデータ供給が難しく、GPUの稼働率を最大限に引き出すには記録媒体そのものの飛躍的な進化が待ち望まれていました。
キオクシアの次世代SSD「KIOXIA CD9Pシリーズ」とその特長
- 高スループット・低遅延:CD9Pシリーズは従来比一桁以上(最大10M IOPS超)の性能向上を実現し、AIサーバやHPCサーバでのデータ供給遅延を大幅に低減します。
- PCI-Express 5.0対応:次世代の高速接続規格であるPCIe 5.0に準拠し、NVMeプロトコルで高速・大量データ転送が可能。
- 次世代3Dフラッシュメモリ搭載:第8世代BiCS FLASHを採用し、TLC型3D NANDで耐久性とレスポンスも向上。
- AIワークロード特化:生成AIや機械学習、推論・大規模言語モデルなど次世代AIアプリケーション向けに最適化された設計。
業界最大規模の大容量SSD革命――245TBモデルも登場
2025年にはキオクシアが業界最大級となる245.76TB SSDの試作品も発表しました。これは32層QLC NANDスタック技術により実現されたものであり、単一ドライブで超大容量かつ高速アクセスを実現しています。大規模なAIデータセットや推論処理でHDDアレイを置き換えることで、エネルギー効率の向上、物理スペースの削減、運用コストの最小化など、多くのメリットが得られます。これにより、数兆パラメータを持つ大規模言語モデルも高速で学習・推論できるようになります。
強まるNVIDIAなどGPU大手メーカーとの連携
GPUメーカーのNVIDIAからの要望を受け、ストレージ分野におけるパートナーシップも一層強化されています。AIシステムの性能向上にはGPUの計算能力だけでなく、安定したデータ供給が必要不可欠です。キオクシアはAIサーバやデータセンターでの実環境において、GPU稼働率を最大限引き出すための「ストレージ最適化」を目指しています。
SSD×AI専用ソフトウェア――RAG時代を支える新アプローチ
AI領域では大規模言語モデルの性能維持とともに、「検索拡張生成(RAG)」技術などAIデータベースへの高速アクセス需要が急増中です。キオクシアはSSDと連携可能なAI専用ソフトウェア「KIOXIA AiSA」を開発。DRAMよりコストを抑えつつ、大規模データの高速検索や推論アルゴリズムの向上に寄与しています。これにより、AI学習やリアルタイム推論時のメモリ限界をSSDで補完するアーキテクチャが普及しつつあります。
データセンター現場で起きる変革とメリット
- 物理フットプリントの削減:従来は複数HDDで分散管理していたデータを、1台の超大容量SSDで一元管理可能に。これにより設置面積・運用コスト共に削減。
- 消費電力と発熱抑制:高効率SSD導入により、AIデータセンターの消費電力および冷却コストが大幅に低減。
- 拡張の柔軟性:将来のAI需要増大にあわせて、SSDの追加・拡張やシステム最適化が容易に。
- クラウドプロバイダーとの協業:グローバルなクラウドベンダーとも共同開発・サンプリングが進み、より広範なAI基盤への展開が期待される。
なぜ「メモリではなくSSDで拡張」なのか ― 新しいストレージの考え方
生成AIをはじめとするAIアプリケーションでは膨大なデータを高速かつ安定的に扱うために、従来DRAM(メインメモリ)に頼っていた部分がSSDへと置き換わりつつあります。SSDはDRAMと比べてコスト効率に優れ、大容量のデータを現実的な価格でストックし、かつ高速アクセスを可能にします。キオクシアはこの発想転換により、「足りないメモリは超高性能SSDで補う」というAI時代の新しいスタンダードを確立しようとしています。
今後の展望とまとめ
2025年から2026年にかけて、キオクシアはAI向け次世代SSDの本格展開を進めます。大容量・高速・省エネ・低コストという全方位の要素を高い次元で統合し、AI時代に不可欠なインフラを担う存在です。海外での展示やクラウドプロバイダーとの協業も加速し、AI開発者およびデータセンター現場の“データの壁”が劇的に打破されることでしょう。
100倍速SSDの登場は、AI社会の真の基盤革命となると言えます。今後の続報にもぜひご注目ください。