キーエンス決算発表速報──2025年10月29日
株式会社キーエンスは2025年10月29日、2026年3月期第2四半期(中間期)の連結決算を発表しました。本記事では、最新決算内容とともに、キーエンスの収益力の秘密や注目されるポイントを専門的かつわかりやすく解説します。
最新決算サマリー
- 経常利益: 2,850億円(前年同期比7.3%増)
- 営業利益: 2,721億円(3.1%増)
- 四半期配当: 年間配当を従来計画の350円→550円に増額(前期比+200円)
- 直近3ヵ月(7-9月期)経常利益: 1,534億円(14.3%増)
- 営業利益率: 50.3%(前年同期52.4%からやや低下)
キーエンスの決算は市場の注目を集めており、安定した高収益を維持しつつ更なる業績拡大を実現しています。特筆すべきは、利益成長と株主還元の積極的な姿勢です。
継続する高収益構造の背景
キーエンスは「高収益企業」として日本国内外で名を馳せていますが、その秘密は以下のような特徴にあります。
- 営業力: 営業担当者が現場の課題を徹底的にヒアリングし、解決策を即提案。取引先に「ここまでやるか」と唸らせる密着型営業が特徴です。
- 製品開発: 現場ニーズを深く分析し、それに応じたソリューション型商品を素早く提供。汎用的なセンサーからカスタム機器まで幅広いラインアップを誇ります。
- 業務効率: 濃密な仕事ぶりで知られ、業務のムダを徹底排除。生産性向上と利益率維持が社風として根付いています。
- 現場密着: 直接現場で課題を抽出・解決することで、顧客満足度とリピート率を高めています。
キーエンスの営業スタッフは、ただ注文を受けるだけではなく、顧客の課題を根本から分析し、現場ごとに最適化した自社製品を提案することで、他社との差別化を図っています。
決算の詳細分析
今回発表された2026年3月期第2四半期の連結経常利益は前年比7.3%増の2,850億円でした。直近3カ月(7-9月期)では前年同期比14.3%増の1,534億円と、好調さを維持しています。営業利益も2,721億円(3.1%増)となり、前期から堅調な成長を続けています。
- 売上高や利益率: 過去数年継続して50%以上の営業利益率を達成。研究開発や営業効率の高さがその原動力です。
- 配当政策: 今期の年間配当は、従来計画の350円から550円へと大幅増額が発表されました。株主への還元姿勢が鮮明です。
- 株価動向: 決算発表後の株価は一時1.92%高となり、市場もポジティブに反応しています。
過去の業績推移と安定性
キーエンスは直近10年間で売上高・営業利益ともに右肩上がりの成長を続けています。2024年度の売上高は1兆591億円、営業利益5,498億円、営業利益率51.9%という高い水準を維持しました。
- 自己資本比率: 94.5%と極めて高く、財務も健全です。
- 当期純利益: 毎期増加傾向。2024年度は3987億円、2025年度もさらに伸長しています。
取材困難な“謎の企業”の実像
キーエンスはマスコミによる“取材困難な謎の企業”とも呼ばれています。情報公開が非常に限定的で、社外に出るニュースは決算、製品発表などに限られることが多いです。社員教育や採用活動も独自性が強く、会社の根底にある「現場主義」と「成果主義」は外部からはなかなか知ることができません。
- 企業文化: 結果重視型の評価制度、徹底的な現場主義。社員一人ひとりの役割が明確であることも特徴です。
- 情報戦略: 日々の業務や社内活動は外部に漏れにくく、その分、決算や新製品リリースが市場の関心を引き寄せます。
この透明性の高さ/低さもまた、業界内での独自ポジションを築き上げている要素です。限られた情報開示ながらも、決算発表のたびにその業績と経営力の強さが際立っています。
今後の見通しと注目点
市場コンセンサスでは、今期も引き続き堅調な成長が見込まれています。半導体、製造業向けのFA(ファクトリー・オートメーション)関連製品が需要拡大を続け、グローバル展開も加速しています。特に新興国や欧米市場での営業拡大がキーエンス全体の収益基盤をさらに強固にしています。
- FA機器のトレンド: グローバル自動化需要でさらなる成長が期待されます。
- 研究開発投資: 新規製品開発へ積極的な投資を続けており、イノベーションが企業価値の向上につながっています。
キーエンスの今期業績は、営業利益率のやや低下(52.4%→50.3%)を見せつつも、経常利益・営業利益・配当の全てで過去最高水準となりました。日本の製造業界、電子部品・FA業界の中でも唯一無二の収益力を誇り、来期以降もさらなる成長と株主還元が期待されます。
まとめ:話題の「取引先うならせる営業力」の秘密
キーエンスは取引先企業を満足させる提案力、現場密着型の課題解決力、独自の成果主義文化など、総合的な営業力と開発力で業績を牽引しています。情報開示の少なさとは裏腹に決算発表の精度と信頼性は国内外の投資家にとって極めて重要な評価基準であり、その高収益構造と未来志向の経営姿勢が本日の決算にも鮮やかに反映されています。


