川崎汽船 2026年3月期 第2四半期決算発表―純利益66%減の背景と今後の展望
2025年11月5日、国内外の海運業界で長い歴史を持つ川崎汽船株式会社は、2026年3月期第2四半期(中間期)決算を発表しました。今回の決算内容は、運賃の下落による収益減少や各事業の市場環境変化が影響し、純利益は前年同期比で約66%減(686億3200万円)に大きく落ち込む結果となりました。本記事では、決算内容の詳細やその背景、今後への影響をご紹介し、わかりやすく解説します。
決算内容のポイント―売上・利益ともに減少
- 売上高:5005億6500万円(前年同期比7.0%減)
- 営業利益:429億5500万円(前期比29.7%減)
- 経常利益:596億6900万円(前年同期比68.1%減)
- 親会社に帰属する当期純利益:686億3200万円(前年同期比62.5%減)
前年同期と比較して、全体的に大幅な収益減が記録されたことが、川崎汽船の決算における最大の特徴です。特に経常利益と純利益の減少幅が著しく、運賃市況の悪化や主要セグメントの減収が主な要因とされています。
セグメント別の業績状況
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ドライバルク事業
- 売上高:1425億円(前年同期比16.9%減)
- セグメント利益:9億円(前年同期比87.0%減)
ドライバルク事業は市況エクスポージャーの管理や運航コスト削減に努めましたが、市場全体の需要低迷により業績が大きく後退しました。
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製品物流事業(自動車船等)
- 売上高:3038億円(前年同期比1.9%減)
- 営業利益:575億円(前年同期比68.9%減)
自動車船事業は米国向け自動車への追加関税が発動されたものの、各国の堅調な需要に支えられて一定の業績は保った一方、営業利益は大幅に減少しています。
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エネルギー資源事業
- 売上高:493億円(前年同期比2.8%減)
- セグメント利益:48億円(前年同期比414.5%増)
エネルギー資源事業はセグメント利益が増加していますが、全体への影響は限定的です。
収益減少の主な要因
- 運賃市況の下落:海運市況全般で運賃が下落し、川崎汽船の本業収益に大きな打撃
- 競争激化と需給調整:国内外での競争が激しく、ドライバルクや製品物流の価格競争力が低下
- 一部地域の港湾混雑、中東情勢の緊迫:運航効率やコストへの悪影響
- 米国向け自動車への追加関税:製品物流事業にマイナス要因
- 営業外収益(持分法投資利益)の落ち込み:前年同期と比べ大幅に減少
これらの複合的な要因によって、営業利益と経常利益、そして純利益の減少幅が拡大しました。海運業界特有の市況変動リスクに加え、国際情勢や規制強化の影響も明確に業績へ響く形となっています。
市場の反応と今後の展望
- アナリスト予想を下回る決算発表により、投資家心理はやや慎重となり、株価や評価に影響
- 2025年度下期(10~3月期)の連結経常利益見通しも前年同期比約66%減と厳しい状況が続く見込み
- 企業側は運航効率の改善施策やコスト削減の強化を継続し、次期以降の回復をめざす姿勢を明確にしています
今回の決算発表を受けて市場では今後の業績回復や海運市況の反転に注目が寄せられており、川崎汽船も体質強化や効率化投資を継続することで競争力の維持と収益基盤の再構築に努めています。
直近の財務状況と資本政策
- 自己資本比率は74.6%(2025年3月期)と安定的に推移
- 総資産は2,210,049百万円、純資産1,677,449百万円と堅実な財務内容
- 配当方針も明示されており、基礎配当1株当たり40円+追加配当を継続する旨を表明
- 負債管理も長期借入金の減少や流動負債のコントロールに努めている
まとめ―今後の課題と成長戦略
今回の決算発表は、川崎汽船が直面する市場環境の厳しさや、業界全体の変化に対応する必要性を如実に示しました。特に運賃市況の変動や国際需給の調整に迅速かつ的確に対応することが、今後の最大の課題です。
- 事業ごとの効率化とコスト最適化の追求
- 国際情勢・規制強化への柔軟な対応力強化
- 環境への取り組みやデジタル化による競争力向上
- マーケット市況の回復を見据えた中長期戦略
厳しい経済環境下でも、川崎汽船は豊富な経験と業界ネットワークを生かし、今後も持続可能な成長への再投資を続けていく方針です。引き続き、海運市況の動向や会社の最新施策に注目していきましょう。
参考:主な決算データ(2026年3月期 第2四半期)
- 売上高:5005億6500万円
- 営業利益:429億5500万円
- 経常利益:596億6900万円
- 親会社に帰属する当期純利益:686億3200万円
- ドライバルク事業:売上高1425億円、セグメント利益9億円
- 製品物流事業:売上高3038億円、営業利益575億円



