鹿児島大学が奄美大島にサテライトキャンパスを開設へ~離島の人口流出問題に立ち向かう新たな挑戦
鹿児島大学は2月6日に記者会見を開き、離島の人口流出に対応するため、2028年度を目標に奄美大島にサテライトキャンパスを開設する計画を発表しました。新キャンパスは「TSUMUGU(つむぐ)AMAMI(あまみ)キャンパス」と名付けられ、地方創生と人材育成の両立を目指す、これまでにない新しい教育拠点となります。
離島の人口流出問題への対応
奄美大島をはじめとする離島地域では、「島立ち(しまだち)」と呼ばれる現象が深刻な課題となっています。これは若者が仕事や教育の機会を求めて島を出ていく人口流出のことです。井戸章雄学長は会見で、この問題に対して「若者が島に住み続ける選択肢を作る」というコンセプトを掲げ、大学が地域と一体となって課題解決に取り組む姿勢を示しました。
鹿児島大学はこれまでも、教育学部が離島教育の実習を、医学部が離島医療の実習を行うなど、離島地域への貢献実績がありました。今回のサテライトキャンパス開設は、これらの実績を踏まえ、さらに実践的で継続性のある教育プログラムへと発展させるものです。
実践的な地域課題解決を目指す教育方針
新キャンパスの最大の特徴は、学生が実際に奄美大島に3ヶ月から半年の期間、長期滞在しながら地域の課題に取り組むという実践的な教育アプローチです。井戸学長は、「奄美大島に3ヶ月、半年と住みながら、地域の公民館の再生事業といったところからこの地域に入っていく。そういった課題を解決する実習を色々な学部が絡みながら新たな地域社会を作っていくことに学生と共に取り組んでいきたい」とその方針を説明しました。
新キャンパスは、これまでの教育学部と医学部を柱としつつ、島民が島を出ていく現象に着目した新たな学科を加える予定です。例えば、社会学科の学生が地域の公民館の再生プロジェクトに参加するなど、複数の学部が連携して「実際に住んでいる人たちの顔が見える実習」を実現させることを目指しています。
このような教育体験を通じて、学生たちは机上の学習ではなく、地域の実際の課題と向き合い、解決策を考案し、実行する力を身につけることができます。同時に、地域側にとっても、大学の知識と若い世代の視点が流入することで、新たな地方活性化の道が開けるという相乗効果が期待されています。
他大学との連携による共同キャンパス構想
鹿児島大学の新キャンパス構想の特徴のひとつは、東京や大阪などの他大学との連携を視野に入れている点です。様々な地域から学生が集まる合同キャンパスとして機能させることで、多様な視点から離島の地方活性化に取り組む狙いがあります。
将来的には、鹿児島大学の学生だけでなく、県内や大都市圏の他大学の学生も共にこのキャンパスで学べるようにすることを目指しています。このアプローチにより、離島という地理的制約を逆手にとった特色ある教育プログラムの提供が可能になると期待されており、地方都市の価値を見直し、新たな地方活性化へとつなげていきたいという方針が示されています。
研究・学習環境としての奄美大島の価値
奄美群島は2021年に世界自然遺産に登録されており、その学術的価値も高く評価されています。鹿児島大学では約150人の研究者が奄美をテーマに研究活動に従事しており、国内外の研究者も多く訪れる地域となっています。新たなサテライトキャンパスは、こうした豊かな研究環境を活かしながら、実際に奄美に中長期で滞在する研究者や学生を増やし、地方創生を目指すものです。
準備体制と今後のスケジュール
鹿児島大学は2026年度から予算がついて準備を開始し、2028年度からの本格稼働を目指しています。具体的には、「奄美群島共創連携推進センター」が中心になって準備を進める予定で、現在、鹿児島市の郡元に設置されているセンターを、奄美市名瀬にある分室へ移転することが計画されています。
新キャンパスの計画については、2月25日に奄美群島の自治体関係者が集まる会議で詳細を話し合う予定となっており、地元自治体との連携が不可欠となります。大学、自治体だけでなく、産業界、金融機関、メディアとも連携し、共同キャンパスプラットフォームの設置を目指す方針です。
地方創生の新たなモデルケースとして期待
鹿児島大学の「TSUMUGU AMAMI キャンパス」構想は、単なる大学施設の拡張ではなく、地方創生や離島振興の新たなモデルケースとして注目されています。離島の人口流出という喫緊の課題に対して、大学が教育機関としての強みを活かし、実践的な学習環境を提供することで、若者が地域に留まり、地域を支える人材として育成する仕組みを構築しようとする試みは、全国の地域課題を抱える自治体にとっても参考となるものです。
「地域に住み、本物の地域を知って学ぶ」というコンセプトのもと、大学と地域が一体となって進める取り組みは、今後の地方活性化を考える上で、重要な示唆を与えるものになると期待されています。




