過去最大規模の半導体展示会「セミコン・ジャパン(SEMICON Japan 2025)」が開幕 日本の技術力に世界の視線
世界の半導体サプライチェーンが一堂に会する国際展示会「SEMICON Japan 2025(セミコン・ジャパン)」が、東京ビッグサイトで開幕しました。今回のセミコンは、出展規模・企画内容ともに過去最大級となり、日本の半導体産業の存在感をあらためて示す場となっています。半導体を意味する「セミコン」という言葉が、ニュースやビジネスの現場で以前にも増して頻繁に語られるようになってきました。
「セミコン・ジャパン」とは? 世界の半導体産業が集まる国際展示会
「セミコン・ジャパン」は、半導体製造に関わる装置・材料・設計・サービスなど、マイクロエレクトロニクス産業のサプライチェーンが広く集結する国際展示会です。主催は業界団体のSEMIで、毎年、国内外の企業・研究機関・教育機関が参加し、技術交流やビジネス商談、情報発信の場として定着しています。
2025年の会場は東京ビッグサイトで、35カ国から1,216社・団体が参加し、2,900小間という規模での開催となります。前回の1,107社・団体、2,789小間からさらに拡大しており、主催者は延べ12万人の来場を目標に掲げています。過去の開催でも東展示場のすべてを使用するなど、その規模は年々拡大してきました。
AI×半導体で「持続可能な未来」をテーマに
今回の「セミコン・ジャパン 2025」の大きな特徴は、AIと半導体、そしてサステナビリティ(持続可能性)を正面から取り上げている点です。テーマの一つとして掲げられているのが、「AI×半導体が導く持続可能な未来」です。
会期中は、電力効率の改善やCO2排出削減、グリーンなサプライチェーンの構築などをめぐって、世界中の半導体企業や研究機関が意見を交わします。特別企画として、エネルギー効率向上・排出削減・サステナブルなサプライチェーンなどの課題に取り組む「AI x Sustainability x Semiconductor Summit(AIS)」が初開催される予定です。
業界トップが集う「Super Theater」 NVIDIAやIntel、Appleも登壇
会場西4ホールに設けられた「Super Theater」では、世界の半導体業界を牽引するトップ企業や研究機関が登壇し、最新動向や将来像について講演・ディスカッションを行います。
- グローバル半導体エグゼクティブサミット:NVIDIA、imec、Micron、Intelなどが登壇し、世界の半導体ビジネスと技術戦略を議論
- 次世代半導体技術1 ~デバイス編~:TSMC、Preferred Networks、サンディスク、IBMなどがデバイス技術の最前線を紹介
- 次世代半導体技術2 ~装置・材料編~:Lam Research、JX金属、富士フイルム、ディスコなどが製造装置や材料技術の進展を解説
さらに、グランドフィナーレとして「半導体サプライチェーンの未来:グリーン化と持続可能性への挑戦」をテーマに、Applied Materials、東京エレクトロン、Appleの3社によるセッションが予定されています。製造装置のリーディングカンパニーと世界的IT企業が一堂に会し、環境負荷の低いサプライチェーンづくりについて語る注目企画です。
「APCS」「ADIS」など注目の専門企画 パッケージングと設計にスポット
半導体産業は、チップの製造だけでなく、その「実装・パッケージング」や「設計」の高度化も重要なテーマになっています。今回のセミコンでは、そうした分野に焦点を当てた専門企画も多数用意されています。
- APCS(半導体パッケージング):日本のアドバンストパッケージングとチップレット関連業界の成長に光を当てる企画
- ADIS:EDA(電子設計自動化)、IP(設計用知財)、デバイス・基板設計に関わる企業が最新展示とネットワーキングを行う場
- Metrology & Inspection Summit(MIS):検査・計測技術にフォーカスし、製造の高品質化や歩留まり改善をめぐる議論を行う初のサミット
こうした専門企画は、日本の半導体製造技術の「強み」とされる分野をさらに発展させる狙いもあり、「セミコン・ジャパン」が単なる展示会にとどまらず、技術課題を一緒に考える場として機能していることがうかがえます。
artienceなど多様な企業が出展 半導体需要の底堅さを反映
会場には、日本を代表する大手から中堅・スタートアップまで、多様な企業がブースを構えています。その一つが、株式市場でも注目されているartience(アーティエンス)グループです。報道によると、artienceは「セミコン・ジャパン 2025」に出展し、底堅い事業展開が期待される銘柄として投資家の関心も集めています(トレーダーズ・ウェブ報道より)。半導体関連企業への評価が、実際のビジネスの場である展示会と連動していることが分かります。
また、大日本印刷(DNP)も、「SEMICON Japan 2025」にブース出展することを発表しています。DNPは、半導体の「前工程」から「後工程」までを支援する幅広い製品・サービスを紹介する予定です。
- 前工程では、グループ会社のDNPエル・エス・アイ・デザインが、LSIの設計・試作・量産受託サービスやサンプルチップを展示
- ナノインプリントリソグラフィ用テンプレートや、3Dセンサー・ARグラス向けの回折光学素子用マスターテンプレートなどを紹介
- 後工程では、大面積・高効率化に対応する「TGVガラスコア基板」や、高密度光導波路付き「光電コパッケージ基板」を展示
AIの普及に伴って世界的に課題となっているデータセンターの電力消費に対し、DNPは大容量・高速データ処理と省エネルギーを両立する基板技術をアピールしています。こうした出展内容からも、セミコンが「環境問題」や「エネルギー効率」といった社会課題の解決と密接につながっていることが理解しやすくなっています。
若い世代にも開かれた「セミコン」 未来の半導体人材を育てる場に
今回のセミコン・ジャパンは、技術やビジネスの展示だけでなく、学生や若手人材に向けた企画も非常に充実しています。半導体業界の将来を担う人材の裾野を広げることが狙いです。
代表的な取り組みが、半導体業界研究イベントの「未来COLLEGE」です。このイベントは、日本最大級の半導体展示会「SEMICON JAPAN 2025」内で開催される合同説明会形式の企画で、58社の半導体関連企業が出展します。学年問わず参加でき、文系・理系を問わず多くの学生が、現場のエンジニアや人事担当者と直接話せる場として人気を集めています。
- 展示会場では、実際の製造装置や製品を見ながら業界研究ができる
- 企業ブースを巡る「ブースツアー」や、訪問数に応じて特典がもらえるスタンプラリーなどの企画を実施
- 首都圏以外から参加する学生向けに「交通費サポートプログラム」も用意
- 若手社員と交流できる「WAKAMONO CONNECT」など、距離を縮めるイベントも開催
主催のSEMIジャパンは、「半導体業界への興味を持つ若い世代を増やしたい」という思いから、「未来COLLEGE」に加えて、全国の高専生や大学生を対象にした多彩な企画も展開しています。
- 半導体関連企業58社が集まる業界研究イベント「未来COLLEGE」
- 高専生による研究成果展示「The 高専…」
- 全国68大学の研究室による成果発表「アカデミア」と、優秀研究を表彰する「アカデミアAward」
- 多様性・公平性・包括性をテーマにしたパネルディスカッション「Women in Business」
- 若手社員による3日間のハッカソン「TECH CAMP」
- 半導体アーキテクチャ設計をカードゲームで学べる「THE GAME」
- 高専生対象の半導体設計競技会「SEMI Circuit Design Speed Contest」(文科省後援)
さらに、学生と若手社員の交流を後押しする新企画「THURSDAY WAKAMONO NIGHT」も開催されます。eスポーツのプロプレーヤーが登壇する「eSports Innovators」、アーティストBAKENEKOによるフォトスポットやグッズショップなど、「楽しみながら半導体を知る」工夫も盛り込まれています。
日本の存在感が高まるなかで「セミコン」の意味
世界的な半導体不足やサプライチェーン再編が続く中、日本は材料・製造装置・パッケージングなど多くの分野で重要な役割を担っています。今回の「セミコン・ジャパン」では、日本企業による最先端技術の展示や講演が相次いでおり、「日本の半導体技術の存在感」を再認識する機会となっています。
ニュースや投資情報の世界では、「半導体関連銘柄」や「半導体製造装置」、「AI向け高性能メモリ」などと並んで、「セミコン(SEMICON)」というキーワードが頻繁に登場します。これは、単に一つの展示会名にとどまらず、
- 半導体産業全体の「今」を映し出す場
- 技術トレンドや企業動向を知るための重要な指標
- 若い世代に産業の魅力を伝え、人材を惹きつける入口
といった、多面的な意味合いを持ち始めています。
SEMIジャパンの浜島雅彦代表は、「昨年は来場者10万人の目標を達成し、今年は12万人を目標に掲げている」と語っています。半導体が「コアな戦略物資」として国際的に注目を集めるなか、「セミコン・ジャパンに出展したい、ここで発信したい」という声が一段と高まっているといいます。今回の過去最大規模の開催は、こうした期待と関心の高まりをそのまま表したものだと言えそうです。
「セミコン」という短い言葉の裏には、AI、5G、自動運転、データセンター、そして環境・エネルギー問題など、現代社会のあり方そのものを左右する大きなテーマが詰まっています。東京ビッグサイトで開かれる「SEMICON Japan 2025」は、日本と世界の半導体産業の今と未来を映す“ショーケース”として、多くの人の目を引き続けています。



