ジャパネットたかたに措置命令──おせち販売を巡る不当な価格表示の実態
ジャパネットたかたは、テレビやラジオ、ウェブサイトを通じて身近な商品を紹介する大手通信販売会社として広く知られています。そんな同社に、2025年9月12日、消費者庁と公正取引委員会から『景品表示法』違反による措置命令が下されました。このニュースは多くの消費者、特にネット通販利用者にとって大きな注目を集めています。
どんな問題が起きたのか?
措置命令の対象となったのは、「【2025】特大和洋おせち2段重」という正月のおせち料理に関するウェブサイト上の価格表示です。ジャパネットたかたは、自社公式サイトでこの商品を「ジャパネット通常価格29,980円」のところ、「今だけ1万円値引き」で「19,980円(税込)」という早期予約キャンペーンを実施していると大きく表示していました。
- 対象商品:「【2025】特大和洋おせち2段重」
- 表示期間:2024年10月8日 から 2024年11月23日まで
- 表示内容:「ジャパネット通常価格29,980円が」「1万円値引き(7/22~11/23)」「値引き後価格19,980円(税込)」「大人気おせちが今ならお得! 早期予約キャンペーン」など
「通常価格」は実在しなかった?
一見すると1万円もお得になる魅力的なキャンペーンに見えますが、消費者庁や公正取引委員会による調査の結果、この「通常価格」は実際にはセール期間終了後に設定・販売する予定の価格ではなく、「値引き後」の価格が特別割引になっている根拠がないことが明らかになりました。
すなわち、セール期間を過ぎても「29,980円」で販売する合理的な販売計画がなかったにもかかわらず、あたかも”今しか買えない特別な割引”のように消費者に印象付けていたことが、景品表示法第5条第2号(有利誤認)にあたると判断されたのです。
なぜこのような表示が問題なのか?
景品表示法は、「実際より著しく有利に見える表示」を禁止しています。消費者が合理的に自分にとって本当にお得かどうかを判断できるようにするためです。今回の表示については、「今すぐ買わなければ損だ」と思わせて消費者の合理的な選択を阻害する恐れがあるとされました。
消費者庁の措置命令と今後の対応
今回の措置命令では、今後同様の誤解を招く宣伝を行わないことがジャパネットたかたに対して強く求められました。また、公式ウェブサイトや関連メディアなど、あらゆる販売媒体において再発防止と正確な情報提供への取り組みが求められています。
- 再発防止策の徹底
- 消費者への分かりやすい説明や表示ルールの厳守
- 必要な場合の謝罪や補償など誠意ある対応
ジャパネットたかたの過去の類似事例
実はジャパネットたかたには、7年前にもエアコンの販売価格表示に関して同じく措置命令を受けた経緯があります。こうした繰り返しの指摘は、通販業界全体への警鐘ともなっています。消費者庁や公正取引委員会は、近年ネット通販での「価格表示」や「値引き表示」の透明性強化に積極的に取り組んでいる背景があります。
消費者が知っておきたい「価格表示」ルール
- 「通常価格」や「定価」と示された価格には、“根拠”が必要です。過去の販売実績や今後の販売計画に基づき、誰が見ても「最近実際に売られていた価格」でなければなりません。
- 「値引き」「割引」は、実際に適用される価格差やその理由を明確に表示することが求められます。過去にない価格設定・将来の販売予定がない場合、「今だけ」などの訴求は制限されます。
- 疑問がある場合、事業者や消費者センターなどに適切に問い合わせることが大切です。万が一、表示に不自然さや誤解を感じた場合、消費者として声をあげることも品質改善に繋がります。
通販業界への影響と今後の展望
今回の事例は、価格表示の透明性と誠実な情報発信の重要性を社会全体に強く認識させるものとなりました。近年、ネット通販の拡大に伴い、様々な「セール表示」や「限定特価」といった訴求が日常的に行われています。しかしその一方で、消費者の信頼を損ねる不適切な表示は、企業のブランド価値を大きく傷つけうるため、各社が表示ルールを再点検する流れがより強まっています。
特に年末年始の商品、贈答品、おせちなど家族や親しい人に送る「特別な商品」については、消費者が価格や品質を十分に比較・納得して選べる環境作りが不可欠です。今後は、AIやデジタル技術も活用しながら、より正確で信頼できる表示ルールの定着が求められます。
まとめ:消費者も賢い選択が大切
今回のジャパネットたかたのおせち表示問題は、企業側にも消費者側にも「情報の正確な伝達と受け取り」が重要であることを改めて示しました。企業にはガイドラインに基づいた表示の徹底、消費者には冷静な比較・判断が求められています。これからも「安心・納得できるお買い物」のため、お互いの信頼関係を築いていきたいですね。