和菓子店倒産急増と黒字廃業――スイーツ業界の危機とその背景

はじめに

2025年、和菓子業界はこれまでにない厳しい局面を迎えています。長年親しまれてきた老舗を含め、多くの和菓子店が経営困難に陥り、倒産や「黒字廃業」に追い込まれています。本記事では、スイーツ業界の最新動向に加え、背景となる社会問題や、今後の課題について分かりやすく解説します。

和菓子店の倒産が過去最多ペース

  • 2025年1~7月、菓子製造小売業の倒産は39件に上り、前年同期の1.6倍。過去最多だった2019年(49件)を大幅に上回るペースです。
  • 全体のうち和菓子店は13件、洋菓子店は25件、その他(あめ店)は1件でした。
  • 倒産の態様は全件「破産」。大阪府・福岡県が各5件と最多、青森・東京・愛知が各3件など、全国19都道府県に影響が広がっています。
  • 業歴30年以上の老舗は14件に上り、創業160年の老舗「お菓子のみやきん」も負債7億円超で破産するなど、伝統ある商店も苦境から脱することができませんでした。

倒産急増に至った背景

1. 原材料価格の高騰

主原料となる小豆(和菓子)、卵・牛乳(洋菓子)の価格が急騰し、収益を圧迫しています。原材料高騰を理由とした倒産は、全体の約3割にも及びます。円安による輸入コスト増加や天候不順も、経営負担を重くしています。

2. 人手不足と人件費負担

職人の高齢化や若手不足による人材難が深刻であり、高騰する人件費にも悩まされています。また、従業員の退職や後継者不在による「黒字廃業」も増加傾向です。

3. 設備投資・店舗メンテナンスの負担

老朽化した設備の維持・新規投資費用が重くのしかかり、経営資金を圧迫しています。とくに小規模事業者や個人店は、金融機関からの追加融資が難しく、資金調達に苦戦しています。

4. 競合商品・流通環境の変化

コンビニやスーパーによる冷凍スイーツなど低価格・高品質な商品が急増。消費者の購買機会が分散し、従来型の和菓子店・洋菓子店は売上減に苦しんでいます。EC市場やグルメ系アプリの台頭も、顧客の購買行動を変化させています。

黒字廃業の増加と「一億総廃業予備軍社会」

  • 経営自体は安定して黒字でも、社長や職人の高齢化・健康不安、後継者難などの理由から「黒字廃業」を選択するケースが増加しています。
  • 「会社の寿命は社長の健康寿命と同じ」と言われるほどで、一人親方型の和菓子店・洋菓子店ほどリスクが高まっています。
  • 経営基盤の弱い零細事業者は、事業承継支援や地域連携の欠如で「一億総廃業予備軍社会」と揶揄されるほど、今後も廃業予備軍が増加すると危惧されています。

消費者への影響――和菓子やケーキが「高値の花」に

原材料と人件費の高騰から、和菓子やケーキの価格は急激に高騰。消費者の購買機会減少や「贈答用」に特化した高級路線へのシフトが進行し、「普段のおやつ」として手軽に楽しめる時代は過去のものになりつつあります。

最も重要な課題と今後の展望

  • 事業承継・後継者育成―伝統技術の継承と若手職人の確保が急務です。
  • 地域支援・観光連携―地域資源活用や観光地との連携による新しい和菓子文化の創出が求められます。
  • 商品開発・販路拡大―冷凍和菓子やコラボ商品、EC販売への挑戦が活性化の鍵です。
  • 価格転嫁・新しい消費価値―価格転嫁だけでなく、丁寧な説明による付加価値の創出が重要です。

まとめ:和菓子業界が直面する今

2025年の和菓子業界は、倒産・廃業の急増とともに、新たな消費スタイル・後継者難・物価高など、複合的な課題に直面しています。日本の食文化を未来につなぐためには、単なる価格競争だけでなく地域・伝統の魅力を再認識し、持続可能な事業モデルや支援策の構築が不可欠です。和菓子店と消費者、新旧の価値観が交差する今、和菓子の未来は、皆さん一人ひとりの選択にかかっています。

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