日本とアメリカで広がる「学びへの温度差」―最新調査が明かすリスキリングの現実と課題
はじめに
近年、「リスキリング(学び直し)」という言葉が日本のビジネス界で大きく注目を集めています。しかし2025年の最新調査によれば、実際にはその熱狂とは裏腹に、日本の働く人や企業の「学び直し」への意欲はアメリカと大きく異なり、しかも大きな差となって表れていることが分かってきました。このニュース記事では、話題となっている調査結果や企業の取り組み実態、そして日本が今後どう進むべきかを、分かりやすくやさしい口調で解説します。
調査データで見る日本とアメリカのあまりに違う「学びへの姿勢」
- スキル習得の意欲がない人の割合:日本は29.3%、アメリカはわずか3.7%
- 企業のスキル習得支援策が「特になし」:日本22.7%、アメリカ2.0%
- 「仕事に関するスキルの重要性が高まっている」とみる労働者:日本56.2%、アメリカ82.5%
これらの数字から、日本とアメリカの間には「学びに対する温度差」が明らかに存在しています。特に「習得意欲なし」の割合は日本がアメリカの約8倍。企業の支援面でも、日本では学びの機会が個人任せになっている一方で、アメリカでは会社が必要なスキルや研修をしっかり提供する文化が強いと言えます。
日本にリスキリングブームが訪れた「背景」と「凋落の理由」
日本では2022年頃から「リスキリング」が政府施策やメディアで大々的に取り上げられました。DX(デジタルトランスフォーメーション)やAI時代に向け、社会全体が「学び直し」「スキルアップ」を掲げていたのです。
しかし、現場での意識は急激なブームの後に伸び悩んでいます。働く人にとって「新しいスキルを学びたい」と思える具体的な動機が薄く、また企業も「社員の自主性に任せる」という姿勢が目立ちます。実際に、Indeed Japanの調査では「学びたくない」と考える労働者がいまだに約3割、しかも企業側の支援も消極的という結果となりました。
日本の「学びたくない」本音とその背景とは?
- 終身雇用や年功序列が続く企業文化では、スキルアップがすぐ評価や昇給に直結しづらく、動機が弱い
- 失敗への恐れや、「今のままで大丈夫」と考える保守的な傾向が根強い
- 企業側も「社員任せ」としがちで、体系的な学びの場を積極的に用意しない
- 現場では「忙しすぎて学び直す余裕がない」と感じる社員も多い
こうした土壌では、リスキリングへのブームが続かず「学び直し」の熱も冷めてしまいます。
アメリカと比べて、日本の企業支援はなぜ薄い?
- アメリカ企業は、業務に必要なスキル定義を明確にし、社員へ積極的に研修・学習機会を提供する文化が強い
- 雇用の流動性が高く、「学び直し」が転職や昇給につながりやすい
- マネージャーや人事部が個々のキャリア開発を定期面談などでフォロー
- 働き手も「自分の市場価値」を高める意識が高く、学びへのモチベーションが自然と生まれる
対する日本は、「社員が自分で学ぶべき」とする会社が未だ3割近く。会社側の支援策が「特になし」とする回答も2割以上です。
「リスキリングのワナ」:キャリア迷子を防ぐために何が必要か
最近のリスキリングブームのなかで、「とりあえず勉強しなきゃ」「新しい技術も学ぼう」と焦るばかりで、キャリアの方向性や目的が定まらず“キャリア迷子”となる課題も指摘されています。特に日本では「自分の学びが本当に仕事に直結するか分からない」「成果が評価されない」という不安が根強く、学びへの一歩が踏み出しづらい状況です。
ソフトスキル・ハードスキルの日米のニーズの違い
- 日本では「柔軟性・回復力」「好奇心や学び続ける姿勢」など、対人能力を含めたソフトスキルが上位
- アメリカでは「テクノロジーリテラシー」「AI・ビッグデータ活用」など、専門スキルやIT分野が上位
どちらも今後重要とはいえ、「何を身につけるべきか」の意識に日米で隔たりがあります。日本の企業は「人間性や基礎力」に偏りがちで、最新の技術への投資や研修が後回しになりやすいのです。
今後の日本企業に必要なこと
- 会社のミッションやビジョンに沿う「必要なスキル」を明確にし、体系的な研修や学習機会を設計すること
- 社内だけで学び直すのではなく、外部セミナーや動画配信など多様な学びの場を積極的に取り入れる
- 旭化成の事例のような「共同学習」「仲間同士の学習コミュニティ」が効果を発揮。業務外で学ぶことも後押し
- 失敗経験や新たな挑戦にポジティブな評価を与え、安心して学び直す風土をつくるべき
「リスキリングは個人任せ」から、「企業がしっかり支援する」に進化することが、日本企業の人的資本経営を高める重要な一歩です。
国や企業、個人のアクションが求められる
- 採用・人事担当者は、社員がどんなスキルを伸ばしたいか対話し、個々最適な成長機会を設計
- 経営層は、長期的な視野で「人的資本」として社員のスキル育成に投資する姿勢が大切
- 個人も「何のために学ぶのか」を自分なりに言語化し、目的意識を持って新しいスキル獲得に挑む
- 外部サービスやセミナー動画などを活用し、会社以外でも自分に合った成長プランを探すことが有効
国や自治体の施策だけでなく、企業・個人それぞれが「学びをどう設計し、実際に取り組める場を広げるか」が問われています。
まとめ―「学び直し」を単なる流行で終わらせないために
日本はこれまで「リスキリング」に熱をあげてきましたが、実際の意欲や企業の支援策の面でアメリカとの大きな差が浮き彫りとなりました。人材不足や時代の転換点である今、本当に社会や企業、個人が一体となって「学び直し」を根付かせていくことが求められています。「やらされ感」に終わらせず、「自分ごと」としてリスキリングできる環境づくりが、日本全体としての競争力向上につながるでしょう。
参考:主要な調査・発表
- Indeed Japan「労働者のスキルに関する日米調査」(2025年8月実施)
- BUSINESS INSIDER JAPAN「学びたくない日本」アメリカとは8倍差
- PR TIMES「働き手・企業の日米比較スキル調査から読み解くセミナー」
- 旭化成「共同学習」など独自のリスキリング支援事例
- FNNなどの報道資料