四谷大塚は「難関中学に強い塾」なのか?最新合格実績から見える実力

首都圏の中学受験シーズンが一段落し、「今年はいったいどの塾が強かったのか?」という話題が、保護者のあいだで盛んに交わされています。その中でも、老舗大手進学塾である四谷大塚は、「大規模だけれど本当に難関校に強いの?」「御三家にはどれくらい受かっているの?」と、あらためて注目を集めています。

ダイヤモンド教育ラボが発表した「難関中学別・塾別合格者数ランキング」では、男子御三家や難関私立の合格者数をもとに、どの塾がその学校に強いのかを比較しています。本記事では、その中でも特に話題となっている武蔵中学校・麻布中学校・慶應義塾中等部に焦点を当て、最新データを踏まえながら「四谷大塚の現在地」をやさしく解説します。

男子御三家「武蔵中学校」で四谷大塚は2位

まず注目したいのが、男子御三家のひとつである武蔵中学校です。ダイヤモンド教育ラボの調査によると、武蔵中の合格者数ランキングで四谷大塚は2位という結果になりました。3位はSAPIX小学部、そして1位は別の大手進学塾という構図で、いわば「三大進学塾」の間で激しいトップ争いが行われている状況です。

別の合格実績まとめデータを見ると、2025年度入試における武蔵中学の合格者数は、サピックスが40名、四谷大塚が62名、日能研が31名、早稲田アカデミーが86名などとなっています。この数字からも、武蔵中については早稲田アカデミーが最多、四谷大塚が2番手グループの一角という構図が見えてきます。

また、首都圏3大塾(SAPIX・四谷大塚・早稲田アカデミー)の2025年度実績を比較した記事でも、男子御三家のうち武蔵では、前年度比で四谷大塚の合格者が9人増となっており、着実に合格力を伸ばしていることが指摘されています。在籍生数が多い四谷大塚にとって、男子御三家のような最上位校で実績を増やしていることは、「難関校にも強い総合塾」としての存在感を裏づける材料といえるでしょう。

このように、武蔵中学校に関しては、

  • 合格者数ランキングで四谷大塚は2位
  • 大規模塾でありながら男子御三家でも合格者数を増やしている

という点が大きな特徴です。「男子御三家を目指すならサピックスか早稲アカなのでは?」というイメージを持つ方も多いかもしれませんが、最新のデータを見ると、四谷大塚も十分に上位争いをしている塾であることがわかります。

麻布中学校では3位だが前年度比で合格者数増

次に取り上げるのは、やはり男子御三家のひとつである麻布中学校です。ダイヤモンド教育ラボによる「麻布中学校の合格者が一番多い塾はどこか」というランキングでは、

  • 1位:大手進学塾A(SAPIXなどの上位塾)
  • 2位:早稲田アカデミー
  • 3位:四谷大塚

という順になっており、四谷大塚は3位に位置しています。男子御三家の中でもとくに人気と難易度が高い麻布で3位というのは、「トップ層を多数抱える少人数精鋭塾」ではなく、「在籍者数の多い大規模塾」という四谷大塚の特性を考えると、むしろ健闘と評価できる数字です。

別の合格実績データでは、麻布中の合格者は、サピックスが160名、四谷大塚が85名、日能研が69名、早稲田アカデミーが116名などとなっています。三大塾の比較記事によると、この麻布中について四谷大塚は前年度比+16人と、男子御三家の中でもかなり大きく伸ばしていることがわかります

三大塾の動きを整理すると、

  • サピックス:麻布中の合格者数は前年度から減少
  • 早稲田アカデミー:合格者数
  • 四谷大塚:合格者数大幅増(+16人)

という傾向になっており、「麻布中に強い塾」は、ここ数年でやや構図が変わりつつあることが読み取れます。ダイヤモンド教育ラボのランキングでも、こうしたデータを踏まえ、麻布中の上位3塾として四谷大塚の名前がしっかりと挙がっていると考えられます。

麻布を目指すご家庭の中には、「麻布志望ならサピックス一択なのでは?」と感じている方も少なくありませんが、実際の数字を確認すると、四谷大塚も十分に選択肢になりうる塾であることがわかります。

慶應義塾中等部でも3位にランクイン

男子御三家だけでなく、人気の大学附属中学に対しても、四谷大塚は着実に実績を積み上げています。その代表例が慶應義塾中等部です。

ダイヤモンド教育ラボがまとめた「慶應義塾中等部の合格者が一番多い塾ランキング」では、

  • 1位:大学附属志向の高い大手進学塾
  • 2位:早稲田アカデミー
  • 3位:四谷大塚

という順位となっており、ここでも四谷大塚はベスト3入りを果たしています。合格者数一覧表を見ると、2025年度の慶應義塾中等部の合格者は、サピックス120名、四谷大塚24名、日能研12名、早稲田アカデミー56名などとなっており、早稲田アカデミーが頭一つ抜けた数字、その次に四谷大塚や日能研が続く構図です。

三大塾の比較記事では、慶應中等部を含む大学附属校グループで、早稲田アカデミーやサピックスが高いシェアを持つ一方、四谷大塚も一定数以上の合格者を出していることが示されています。在籍者数が多く、「御三家~中堅校まで幅広い層」を抱える四谷大塚にとって、慶應中等部のような超人気附属校で3番手のポジションを維持しているのは、決して小さくない意味を持ちます。

慶應義塾中等部を目指す場合、

  • 最上位層を集める少人数精鋭塾
  • 大学附属対策に特化した塾
  • 幅広い志望校に対応しつつ、慶應中等部でも上位実績を持つ四谷大塚

といった選択肢の中から、「お子さまの学力層や性格」「他の併願校」「通塾のしやすさ」などを総合的に見て検討することが大切です。四谷大塚は、慶應中等部だけを専門に対策する塾ではないものの、最新のランキングからは十分に戦える実績を持っていることがうかがえます。

四谷大塚は「量」だけでなく「質」も向上中

ここまで、武蔵中・麻布中・慶應中等部という3校のランキングから、四谷大塚の立ち位置を見てきました。では、四谷大塚全体としての合格実績はどうなっているのでしょうか。

まず、2025年度の中学入試において、四谷大塚は首都圏の多くの中学校で大量の合格者を出しています。公式サイトに公開されている合格実績では、市川中学校332名、渋谷教育学園幕張440名、広尾学園367名、聖光学院241名など、難関校から上位校にかけて非常に多くの合格者が並んでいます

また、他の分析記事では、四谷大塚の合格実績を偏差値帯ごとに分類し、「評価65以上」の最難関校グループでも一定のシェアを保ちつつ、「評価46以上」の上位校グループではボリュームゾーンとして多くの合格者を送り込んでいることが指摘されています。つまり、

  • 御三家・最難関校:トップ争いをする塾に比べると割合はやや劣るが、合格者数自体は安定して増加傾向
  • 難関~上位校:在籍者数の多さを背景に、合格者数そのものが非常に多い

という二重構造になっていると考えられます。さらに、三大塾比較の記事では、男子御三家について、2024年度から2025年度にかけて、四谷大塚は開成で+5人、麻布で+16人、武蔵で+9人と、いずれも前年を上回る結果になっていることが示されています。これは、四谷大塚が単に「数が多いだけの塾」ではなく、最上位校への合格力を少しずつ底上げしていることの表れともいえるでしょう。

ランキングの「1位・2位・3位」はどう読み解くべきか

ダイヤモンド教育ラボのような「学校別・塾別合格者数ランキング」は、とても参考になる一方で、「1位だから良い塾」「3位だから弱い塾」という単純な見方をしてしまうと、かえって判断を誤ってしまう可能性もあります。

たとえば、四谷大塚は在籍者数が2万人以上とされる大規模塾であり、一人ひとりを少人数で囲い込むタイプの塾とは性格が異なります。そのため、

  • 「合格者数」だけを見れば、上位校から中堅校まで非常に広い範囲に多くの実績を持つ
  • 「合格率」や「在籍者に占める割合」だけを見れば、最上位専門塾に比べて数字が小さく見える

という特徴があります。三大塾比較の記事でも、同じ開成中の合格実績を、「合格者数」「在籍者数」「合格率」という3つの指標で比較しており、それぞれの塾の規模と特性を考慮しながら見ることの重要性が指摘されています

今回話題になっている、

  • 武蔵中:3位サピックス、2位四谷大塚、1位は別の塾
  • 麻布中:3位四谷大塚、2位早稲田アカデミー、1位は別の塾
  • 慶應義塾中等部:3位四谷大塚、2位早稲田アカデミー、1位は別の塾

といったランキングも、「その学校に特に強い塾はどこか」という目安にはなりますが、実際に塾を選ぶ際には、

  • お子さまの現在の成績帯
  • 志望校が1校なのか、複数の候補を考えているのか
  • 自宅から通いやすいかどうか
  • 集団授業が合うか、個別指導のほうがよいか

といった要素も含めて、総合的に判断することが大切です。四谷大塚は、「テキスト・カリキュラムの体系性」や「模試の規模とデータ量」に強みを持ち、御三家から中堅校まで幅広く対応できる塾として長年評価されています。そのうえで、今回のようなランキングで男子御三家や慶應中等部において上位3塾に入っているという事実は、「難関校にもきちんと対応できる総合力のある塾」としての信頼性を後押しする材料だといえるでしょう。

四谷大塚を検討するご家庭へのアドバイス

ここまでのデータやランキングを踏まえ、「四谷大塚は、最難関校志望の子にとってどうなのか?」と悩まれている保護者の方も多いかもしれません。そのような方に向けて、最後にいくつかの視点をまとめておきます。

  • 男子御三家・慶應中等部でも、四谷大塚は上位に入る実績を持っている
    武蔵中では2位、麻布中・慶應中等部では3位というランキングからも、難関校に十分対応できるカリキュラムや指導力を備えていることがうかがえます。
  • 大規模塾ゆえに、「クラス・校舎」の選び方が大切
    同じ四谷大塚でも、校舎やクラスによって雰囲気やレベルは異なります。男子御三家志望なら、上位クラスにどれだけ受験生が集まっているか、実際の合格実績がどうかを、説明会や資料で確認しておくと安心です。
  • 併願校の幅が広い受験生には相性が良い
    開成・麻布・武蔵などの最難関だけでなく、渋谷教育学園幕張や広尾学園、市川、芝、攻玉社、吉祥女子、洗足学園など、難関~上位校に大量の合格実績を持つのが四谷大塚の特徴です。第一志望だけでなく、複数の併願校を視野に入れているご家庭にとっては、情報量や資料の豊富さが大きな強みになります。
  • 最上位専門塾との比較は、「性格」と「学習スタイル」も基準に
    SAPIXのように「最上位層に特化した塾」は、授業スピードや課題量が非常に多く、合う子には大きな力になりますが、そうでない子には負担が大きくなりがちです。一方、四谷大塚はテキスト体系がわかりやすく、復習中心のサイクルが組まれているため、「コツコツ型」「標準~上位の地力をしっかり伸ばしたい子」との相性が良いと言われています。どちらが優れているというよりも、お子さまにどちらのスタイルが合うかを見極めることが大切です。

武蔵中・麻布中・慶應義塾中等部という3校のランキングから見えてくるのは、「四谷大塚は、依然として首都圏中学受験の主役級の一角でありながら、ここ数年で難関校への合格力もじわじわと伸ばしている」という姿です。塾選びの際には、数字だけにとらわれず、「お子さまが4年生から6年生までの長い受験生活を、どの環境なら前向きに続けられそうか」という視点も合わせて、じっくりと検討してみてください。

参考元