「人間を雇うより、どれだけ安上がり? サイゼリヤにすかいらーくも導入『配膳ロボット』の人件費効果をきちんと計算してみた」
外食産業を大きく変える可能性を秘めた「配膳ロボット」。有名ファミリーレストラン大手のすかいらーくグループは、ガストやバーミヤン、ジョナサンなどの店舗で、2021年からネコ型配膳ロボット「ベラボット」を導入し、2022年12月には全国約2,100店舗に3,000台を配置するまでに至っています。今や、すかいらーく系ファミレスに入ると、猫の顔をしたロボットが料理を運んでくる光景は日常となりつつあります。
なぜ今、配膳ロボットが注目されるのか?
配膳ロボットが注目される背景には、慢性的な「人手不足」や「人件費高騰」といった外食業界共通の課題があります。従業員を雇って教育するよりも、ロボットに一定の業務を任せた方がコスト的にも効率的にもメリットがあるのではないか――そんな素朴な疑問を抱く方も多いでしょう。
そこで今回、外食大手2社(サイゼリヤ、すかいらーく)に焦点を当て、実際に「配膳ロボットを導入した場合」と「人間を雇った場合」を比較し、人件費の違いを試算しました。特に、すかいらーくの積極導入を踏まえて、経営現場のリアルな声やデータも交えながら、配膳ロボットの「経済的効果」を分かりやすくご紹介します。
すかいらーくの配膳ロボット導入の現状
すかいらーくグループは、2021年にネコ型配膳ロボット「ベラボット」の導入を開始し、わずか1年半で全国約2,100店舗に3,000台を導入する前代未聞のスピードで拡大を進めています。1店舗あたり1〜2台、規模の大きな店舗では3台体制を敷き、配膳だけでなく利用客や従業員とのコミュニケーション機能も充実しています。
ロボットは「ご注文ありがとうニャン」と料理を運ぶほか、頭をなでると喜んだり怒ったり、オープン時には「ハロー!今日も元気に、一緒に頑張ろうニャ~」と挨拶をするなど、愛嬌のあるキャラクター性が特徴です。SNSでも「猫ロボのためにガストでバイトしたいかも」「ほっこりする」「癒される」といった温かい声が寄せられています。
人件費削減とリアルなコスト比較
そもそも、なぜ配膳ロボットなのか? まずは「人件費」という観点から、その効果を見ていきましょう。
人間のアルバイトの場合、時給は最低賃金の上昇を受け1,000円前後が一般的です。1週間で20時間働く場合、月あたりの給与は約8万7千円(交通費や社会保険料は除く)。年換算では約104万円です。複数人体制で動かすとなれば、この数字はさらに膨らみます。
配膳ロボットの場合、本体価格やレンタル料、メンテナンス費用、充電などの経費をすべて合算しても、一般的な導入コストは1台あたり年間数十万円(補修・消耗品含む)が目安とされます。すかいらーくの例でも、導入直後の営業報告やメディア取材で「コスト面で優位性がある」と明言されています。
実際、すかいらーくの現場では「配膳作業そのもの」の大半をロボットが担うことで、業務分担が明確になり、従業員は接客や調理補助などより生産性の高い業務へシフトできています。さらに「働きやすい職場」が売りになり、多様な人材の採用拡大にも繋がっているようです。
サイゼリヤとの違い、そして各社の戦略
サイゼリヤも配膳ロボット導入を進めていますが、そのスタイルや効果には違いがあります。すかいらーくは「猫型」で愛嬌を重視したコミュニケーション型ロボットを全面展開したのに対し、サイゼリヤはよりシンプルな配膳専用ロボットを採用。それぞれのブランドイメージや経営戦略に沿った形でロボット活用を進めているのが特徴です。
また、すかいらーくではロボットを「単なる省人化ツール」ではなく、従業員との“仲間”として位置づけたことで、現場のモチベーション向上や顧客満足度アップを同時に目指しています。これは単なる人件費削減や業務効率化を超える、新たな「サービスDX(デジタルトランスフォーメーション)」の形と言えます。
顧客満足度・従業員満足度の変化
すかいらーくの取り組みで特筆すべきは、ロボット導入によって「顧客満足度」「従業員満足度」が逆に高まった点です。SNSでは「家族連れが笑顔になる」「子どもがロボットと遊んでくれる」といった声が多数見られ、店舗イメージの向上にも貢献しています。
従業員からも「ロボットと一緒に働くのが楽しい」「業務分担が明確になって働きやすい」といった好意的な意見が多く、人手不足の時代だからこそ、従業員のエンゲージメント向上にも寄与しています。
配膳ロボットの課題&注意点
もちろん、メリットばかりではありません。ロボットが導入されたことで、「忙しい時間帯は人間がサポートしないと回らない」「トラブル発生時の修理・メンテナンスコスト」「人からロボットへの業務移行による新たなスキル要求」など、現場には新たな課題も生じています。
また、ロボット導入によって「人間の仕事がなくなるのでは?」という不安も根強くありますが、現状では「人間とロボットの共存」を通じて、より生産性の高い業務へ転換するケースが増えています。つまり、ロボットが単純労働を代替し、人間はより価値のある業務に集中できる――そんな新しい働き方が広がりつつあるのです。
将来展望と外食業界の変化
すかいらーくを筆頭に、外食大手各社が配膳ロボットの導入を加速させている現状から、今後もさらに導入店舗が増えることは間違いないでしょう。しかし、どんなにロボットが進化しても、最終的な“おもてなし”は人間が担う――それが日本の外食業界の強みであり、今後も変わらぬ価値です。
配膳ロボットの導入は、人手不足への対策にとどまらず、従業員や顧客の満足度向上、ブランドイメージの強化、さらには新しい業務スタイルの創造――といった多面的な効果をもたらしています。まさに、「人とロボットの協働」が新しいサービス価値を生み出しているのです。
まとめ:人間とロボットの共存が未来を拓く
すかいらーくやサイゼリヤなど外食大手の配膳ロボット導入は、「人件費削減」という目先の目的にとどまらず、新しい働き方やおもてなしの形を模索する挑戦でもあります。人間を雇うより「安上がり」かどうか――その答えは、コストだけでは測れません。
今後も、外食業界はロボットと人間が互いの良さを活かしながら、より良いサービスを追求していくことでしょう。その取り組みが、私たちの食卓や日常にどんな変化をもたらすのか――現場の声やデータに今後も注目していきたいと思います。
- すかいらーくは全国約2,100店舗に3,000台の配膳ロボットを導入
- ロボット導入により人件費削減だけでなく、従業員満足度や顧客満足度の向上も実現
- 「人間とロボットの協働」がサービスの新たな価値を生んでいる
皆さんも、近くのファミレスに行った際には、ぜひ配膳ロボットと従業員、そして自分自身の体験に注目してみてください。そこには、外食業界の「今」と「未来」へのヒントが詰まっているはずです。