インテル決算発表で株価上昇―PC需要回復と黒字転換が牽引した2025年第3四半期

インテルの2025年第3四半期決算の概要

米国の半導体大手インテル(Intel Corporation)は、2025年10月23日(木)に2025年第3四半期の決算を発表しました。業績は市場の注目を大いに集めており、その内容と株価の動向が話題となっています。
今回の決算発表によると、インテルは売上高が前年同期比3%増の136億ドルとなり、営業利益は6億8,300万ドルと堅調な業績を記録しました。また、1株当たり利益(EPS)は0.90ドルとなり、前年の赤字から黒字へと転換しました。これにより、投資家からの期待が高まり、決算発表後の時間外取引でインテル株価は5.5%上昇するなど、大きな反響がありました。

売上高の推移とセグメント別業績

今回の決算では、特にクライアント・コンピューティング・グループ(CCG)データセンター・AI部門が好調に推移しています。CCG部門の売上は81億3,000万ドル(前年比10.9%増)、データセンター・AI(DCAI)部門では39億6,000万ドル(前年比約18.4%増)と、市場の堅調な需要を背景に強い成長を示しました。

PC市場の回復基調が鮮明となっており、とくに「AI PC」やAIサーバー市場向けの新型プロセッサーなど、技術革新が業績を大きく押し上げたかたちです。昨今の需要回復によって、インテルは本業の半導体セグメントで着実に市場競争力を維持しています。

第4四半期の展望と今後の見通し

インテルは今後の見通しとして、第4四半期の売上高を128億~138億ドルと予想。中央値の133億ドルは市場予想(133億7,000万ドル)をわずかに下回りますが、それでも十分に堅調な水準と見られています。

アナリストの間でも「AI PC」関連製品やファウンドリー事業への期待が高まっており、今後の循環的な景気回復に乗じて、業績の改善が続くかどうかが注目されています。また、同社はIDM 2.0戦略(製造と設計の統合再建戦略)やAI、ファウンドリー外部顧客獲得など、複数年にわたる事業再建にも注力しています。

株価への影響と投資家の評価

決算発表後、インテル株価は一時5.5%上昇。この反応は、黒字転換と売上の回復ペースが市場の予想を上回ったこと、そして今後の市場環境への期待によるものです。

  • 株価目標(直近12か月):アナリスト26人の平均値は29.08ドル、最高43.00ドル、最低14.00ドルと分布し、市場では今後の不確実性がなお残っています。
  • ボラティリティ(価格変動):決算発表後のインテル株は例年7~8%の範囲で大きく動くことが多く、今回も短期的な取引機会が顕在化しました。

米国の利下げや景気回復への期待、PCやサーバー向け半導体市場の底打ち感といった外部環境もインテル株価の背景にあります。ただし、依然としてファウンドリー事業の競争や、AI分野での成長戦略実現の成否、マクロ経済環境のリスクには投資家からの継続的な注視が求められています。

事業再建戦略と中長期的な展望

インテルは近年、IDM 2.0戦略の下で製造と設計機能の再統合を進め、自社工場のみならず外部顧客向けの半導体製造(ファウンドリー)にも参入しています。AI関連技術が次世代CPUやサーバー市場を席巻するなかで、PCやサーバー向け新製品の拡充は今後の成長エンジンと位置付けられています。

「AI PC」市場では、AIチップ内蔵の新型Core Ultraシリーズが堅調な売上を示し、PC需要の本格回復を下支えしています。また、AIサーバー市場への本格参入と、NVIDIAやAMDなど他社との競争の最前線で技術革新を続ける必要があります。

ファウンドリー(IFS)事業では、外部顧客獲得や受注拡大をめざし、巨額投資を続けています。ただし、同事業は競合が激しく利益貢献には時間がかかるとの見方もあり、アナリストや市場からは慎重な視線が注がれています。

市場が注視するリスクファクター

  • 世界的な半導体需給の変動:在庫調整やマクロ経済の不透明さが業績下押しのリスクとなりうる。
  • ファウンドリー事業の競争激化:TSMC、サムスンとのグローバル競争が今後の利益水準に影響。
  • 地政学リスク:米中間の貿易摩擦や供給網混乱が事業全体に波及する懸念。
  • AI投資の効果:AI分野への研究開発投資が収益貢献に繋がるかは現段階で不透明。

決算発表を受けた今後の注目ポイント

  • 「AI PC」やサーバー向け新製品による事業拡大の進捗
  • ファウンドリー部門での新規顧客獲得および生産能力増強計画
  • 世界市場におけるPC・サーバー需要の継続的な回復傾向
  • マクロ経済や地政学リスクの動向も含めた中長期戦略の実行力

インテルは、PCやデータセンター、AI関連分野で多角的な成長を目指しており、従来の製造力や設計力を生かしながら新たな競争軸を模索しています。今期決算で示した黒字転換や売上成長は、こうした路線が一定の成果を上げつつあることを示唆しています。しかし市場では今後のファウンドリー戦略の実行力、AI分野での巻き返しが競争力維持の鍵になるとの見方もあり、投資家や業界関係者は新たな成長シナリオの成否に引き続き注目しています。

まとめ

2025年第3四半期の決算でインテルは見事に黒字転換を果たし、PC市場の需要回復が業績上振れに大きく寄与したことが明らかになりました。AIやファウンドリーなど新領域への挑戦も着実に進展しており、今後もテクノロジーの進化とともに企業価値の向上が期待されています。ただし、依然として数多くのチャレンジやリスクも残されているため、今後の動向から目が離せません。

投資家やIT業界関係者はもちろん、一般ユーザーにとってもPCやAIの新たな進化を先導するインテルの今後の歩みに注目が集まります。次なる決算や新製品発表にも期待しつつ、その成長戦略の行方を見守るべき時期が続きます。

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