米FOMC、3会合連続利下げ観測で高まる期待と不安 株高・ビットコイン・世界市場への影響は?

米連邦準備制度理事会(FRB)が開催する公開市場委員会(FOMC)を前に、世界の金融市場が大きく揺れています。3会合連続の利下げ観測が強まる一方で、米国株は最高値圏にあり、「エブリシング・バブル(あらゆる資産が割高な状態)」への警戒も高まっています。さらに、FRBが示した予想外の警告が、ビットコイン市場に「暴落懸念」を再燃させていることも話題です。

この記事では、最新のFOMCをめぐる状況を、

  • 米国の利下げ観測と株式市場
  • FRBの姿勢とインフレ・雇用の現状
  • ビットコインなど暗号資産への影響
  • 今後、個人投資家が注視したいポイント

といった観点から、できるだけわかりやすく解説していきます。

FOMCとは?なぜここまで注目されるのか

まずは基本から整理しておきましょう。FOMC(連邦公開市場委員会)とは、FRBが米国の金融政策(政策金利の引き上げ・引き下げなど)を決める会合です。通常、年に8回前後開かれ、

  • 政策金利(フェデラルファンド金利、FF金利)の誘導目標
  • 景気やインフレの見通し(経済見通し=SEP)
  • 将来の金利水準を示す「ドットチャート」

などが公表されます。

2025年12月のFOMCは、現地時間で9日~10日に開催される予定で、事前の市場解説やスケジュール情報でも「今週最大のイベント」として位置づけられています。

3会合連続の利下げ観測 「0.25%」がほぼ織り込み済み

足元の市場では、「今会合でも0.25%(25ベーシスポイント)の利下げが行われる」とみる見方が優勢です。

具体的には、

  • FF金利の誘導目標を0.25%引き下げるとの予想が、先物やオーバーナイト金利の取引からほぼ織り込まれている
  • これが実現すれば、3会合連続の利下げとなる

といった状況です。

また、あるレポートでは、9月時点のFOMCでは「2026年中の利下げは1回(0.25%)」との見通しが中央値だったとされており、今回公表される新たな金利見通し(SEP・ドットチャート)がどのように修正されるかが、マーケットの大きな焦点となっています。

なぜ利下げなのに、インフレ懸念が残るのか

本来、インフレが強い時には利上げ、景気が弱い時には利下げが行われるのが教科書的な金融政策です。しかし現在のアメリカでは、

  • インフレ率は以前より落ち着いたとはいえ、FRBが目標とする2%近辺に十分安定しているとは言い切れない
  • 一方で、雇用や景気指標に弱さが見え始めている

という、両面の難しい状況にあります。

最近のFOMCプレビューでは、

  • 声明文の中で「雇用の弱さやその下振れリスク」に言及し、利下げの根拠を説明するのではないか
  • パウエル議長も、記者会見で「労働市場の減速リスク」に触れつつ、3会合連続の利下げに至った経緯を説明するとみられている

と指摘されています。

つまり、FRBは、

  • インフレを抑え込みすぎて景気後退を招かないようにしたい
  • 同時に、インフレが再び加速してしまう「手遅れ」も避けたい

という、非常に難しいバランスを取ろうとしているわけです。その結果として、「インフレには引き続き警戒しつつも、足元の雇用の弱さを重視して利下げに動く」という構図が見えてきます。

米国株は最高値圏、「エブリシング・バブル」懸念も

こうした利下げ観測は、株式市場にとっては一見すると追い風です。金利が下がると、

  • 企業の借入コストが軽くなる
  • 将来の利益の現在価値が高く評価されやすくなる

などの理由から、株価が上がりやすくなります。

実際に、米国株式市場は最高値圏まで上昇しており、これを背景に「エブリシング・バブル」という言葉も改めて話題になっています。エブリシング・バブルとは、

  • 株式
  • 債券
  • 不動産
  • 一部のコモディティや暗号資産

といった、幅広い資産価格が同時に高止まり、もしくは過熱している状態を指す表現です。

緩和的な金融環境が長く続いたことで、

  • 「お金の行き場」が株や不動産、さらにはビットコインのようなリスク資産に集まりやすい
  • その結果、本来の企業価値やファンダメンタルズに比べて高すぎる価格がついている可能性がある

といった懸念もくすぶっています。

「3会合連続利下げ」でも、FRBは決してハト派一辺倒ではない

注意しておきたいのは、利下げ=本格的な緩和サイクルへの転換と単純に決めつけるのは早い、という点です。

一部のレポートでは、

  • 今回のFOMC後も、FRBは「今後の政策判断はデータ次第」というスタンスを維持するとみられている
  • 来年(2026年)以降の利下げ回数を示すドットチャートは、前回から大きく変わらないとの予想もある

とされています。

つまり、

  • 市場は「利下げが続く」と期待したがる
  • FRBは「とりあえず今は利下げするが、これで終わりかもしれないし、状況次第では再び引き締め方向もあり得る」というメッセージを残したい

という、微妙な綱引きが続いている状況です。

9月のFOMC後には、「2026年は1回の利下げ」という見通しが中央値として示されており、今回その見方が大きく変わらなければ、「今後の大幅な追加利下げは限定的」という印象を市場に与える可能性もあります。

ビットコインに走る「暴落懸念」 FRBの予想外の警告とは

今回のFOMCをめぐる議論の中で特に注目されているのが、ビットコイン価格への影響です。

ここまでのビットコインや暗号資産市場は、

  • 低金利環境や過剰流動性を背景に、大きな価格上昇を経験してきた
  • 「デジタル・ゴールド」として、インフレへのヘッジとして注目されてきた

という流れがありました。

しかし今回は、FRBが予想外の警告的なメッセージを発したことで、

  • ビットコインなどのリスク資産には調整圧力がかかるのではないか
  • 場合によっては、「暴落」と呼べるほどの急落リスクもあるのではないか

といった懸念が再燃しています。

FRBが警戒しているポイントとしては、

  • 一部の資産価格に見られる過度なリスクテイク
  • レバレッジ(借入れによる投資)の拡大が、金融システム全体の不安定要因になり得ること

などが挙げられます。暗号資産市場は、規制面や情報開示の面で、伝統的な株式・債券市場と比べて透明性が低い部分もあり、急落時にはボラティリティ(価格変動の大きさ)が極端に高まりやすいという特徴があります。

米株や他のリスク資産が「エブリシング・バブル」的な様相を強める中で、FRBが資産価格の過熱に間接的に言及することは、ビットコイン市場にとっても無視できない要因となっています。

為替市場もFOMCと日銀会合を意識 ドル円は「動きにくい」局面

FOMCの決定は、当然ながらドル円相場にも影響します。最近の為替レポートでは、

  • 「今週のFOMCでの利下げはほぼ織り込み済み」で、むしろ「その後の見通し」が焦点になっている
  • 一方、日本では、日銀が12月18~19日に金融政策決定会合を予定しており、「利上げ」の思惑もある
  • そのため、ドル安・円高方向の力がやや優勢とみられるが、FOMCと日銀の両方の結果を見極めるまでは、ドル円は大きく動きにくい

といった見方が紹介されています。

つまり、

  • アメリカ:利下げ方向
  • 日本:利上げの可能性

という、政策スタンスの違いが意識されており、中長期的にはドル円が円高方向へ修正されるきっかけになり得る一方、短期的にはFOMCと日銀会合の結果待ちで「様子見ムード」も強い、という状況です。

個人投資家が押さえておきたい「3つのポイント」

今回のFOMCと市場の反応を眺める上で、個人投資家の方が意識しておきたいポイントを3つに整理してみます。

①「利下げ=株は必ず上がる」ではない

利下げ自体は株式市場にプラス要因になりやすいものの、

  • 利下げの背景が「景気悪化」であれば、企業業績はむしろ悪化する可能性もある
  • 「利下げは今回で打ち止め」と市場が受け止めれば、むしろ失望売りが出るリスクもある

ことは、常に頭に置いておく必要があります。

特に、現在のように米国株が最高値圏にある局面では、

  • 良いニュースが出ても株価に織り込まれており、上値余地は限られる
  • 逆に、少しでもタカ派寄りのメッセージが出れば、利益確定売りが一気に出る

といった、「期待のハードルが高い」状態であることに注意が必要です。

②ビットコインなど高リスク資産は、ボラティリティに要注意

ビットコインは、FOMCのスタンスやドル金利の見通しに敏感に反応しやすい資産です。

特に、

  • FRBが資産バブルや過度なリスクテイクを警戒する発言を強める
  • 将来の利下げ期待が後退し、「金利は思ったほど下がらない」と市場が判断する

といった場合には、

  • ビットコインから資金が流出しやすい
  • 下落が下落を呼ぶ「連鎖反応」が起きやすい

といった特徴があります。

短期的な値動きに振り回されず、自分の許容できるリスク量を明確にしたうえでポジションを考えることが、これまで以上に重要になってきます。

③「FOMC後の市場の解釈」を確認する癖をつける

FOMCでは、

  • 声明文
  • 経済見通し(SEP)・ドットチャート
  • パウエル議長の記者会見

など、多くの情報が一度に出てきます。

そして、重要なのは「FRBが何を言ったか」だけでなく、「市場がそれをどう解釈したか」です。

たとえば、

  • FRBは慎重なトーンを維持したつもりでも、市場は「想像よりハト派的」と受け取る
  • その逆に、市場が「タカ派的メッセージ」と受け止めて、金利が上昇し、株やビットコインが売られる

といったことがよく起こります。

FOMC直後から数日の、

  • 米長期金利(10年国債利回りなど)の動き
  • 主要株価指数(S&P500、ナスダックなど)の反応
  • ドル円など主要通貨の為替レート
  • ビットコインなど暗号資産の価格

をあわせてチェックすることで、「今回のFOMCは市場にどう受け止められたのか」が、より立体的に見えてきます。

まとめ:FOMCは「利下げそのもの」よりも「メッセージ」と「市場の受け止め方」に注目

今回のFOMCは、

  • 3会合連続の利下げが有力視されている
  • 米国株は最高値圏で、「エブリシング・バブル」懸念もくすぶっている
  • FRBの発する警告が、ビットコイン市場の「暴落懸念」を再燃させている

という、非常に多くのテーマが交差するイベントになっています。

利下げが行われるかどうかだけでなく、

  • FRBが今後のインフレと雇用をどう見ているのか
  • 2026年以降の金利見通し(ドットチャート)にどのような変化があるのか
  • 資産価格の過熱に対する警戒感をどの程度にじませるのか

といった点に注目することで、株式・為替・暗号資産など、さまざまな市場の「次の一手」を考えやすくなります。

個人投資家にとっては、短期的な値動きに振り回されず、

  • 自分の投資期間とリスク許容度に合ったポートフォリオを維持すること
  • イベント前後でむやみにポジションを大きくしすぎないこと

が、これまで以上に大切になってきているといえるでしょう。

参考元