IHIが株式分割後に上場来高値を更新、防衛・航空事業の好調が追い風に
重工業大手のIHI株式会社の株価が、2025年10月1日に実施された1対7の株式分割後も勢いを維持し、上場来高値を更新する展開となっています。株式分割により最低投資金額が大幅に引き下げられたことで、個人投資家からの資金流入が活発化しており、同社株は市場の注目を集めています。
株式分割の実施で投資のハードルが大幅に低下
IHIは2025年8月6日に株式分割を発表し、9月30日を基準日として10月1日に効力を発生させました。この株式分割により、保有株式1株が7株に分割される形となり、株価も7分の1に調整されました。
株式分割前は1株あたり約15,400円で、最低投資単位である100株を購入するには約154万円が必要でしたが、分割後は1株約2,200円となり、100株でも約22万円で投資できるようになりました。この投資金額のハードル低下は、個人投資家にとって大きな門戸開放となっています。
株式分割の具体的な内容としては、分割前の発行済株式総数が154,679,954株だったものが、今回の分割により928,079,724株増加し、分割後の発行済株式総数は1,082,759,678株となりました。また、発行可能株式総数も3億株から21億株へと変更されています。
株式分割基準日後の株価動向と投資家の反応
株式分割の基準日である9月30日を経て、29日には基準単価が前営業日の26日終値(1万7,495円)から7分の1に低下しました。最低投資金額が大きく低下したことで、これまで高額な投資金額がネックとなっていた個人投資家層からの資金流入が活発化しています。
10月1日付で株式分割により増加した株式数が、各証券会社の振替口座簿に記録され、株主への案内は10月下旬に送付される予定となっています。株式分割後の株主に対しては、三井住友信託銀行株式会社が株主名簿管理人および特別口座管理機関として対応しています。
防衛事業の急成長が株価上昇の原動力
量と質の両面で改善が進む防衛関連事業
IHIの株価上昇を支える大きな要因の一つが、防衛関連事業の好調さです。同社の防衛事業は「量」と「質」の両面で同時に改善が進んでおり、これが投資家の期待を集めています。
特に航空機エンジン事業では、利益率が22.1%という高い収益性を実現しており、これは同社の収益基盤を大きく強化する要素となっています。構造改革により利益が残りやすい体質への転換が進んでおり、これが配当余力の向上にもつながっています。
豪州の衛星新興企業との共同研究契約を締結
2025年10月11日には、IHIがオーストラリアの衛星新興企業との共同研究契約を締結したことが報じられ、株価の大幅続伸につながっています。この動きは、同社が宇宙・防衛分野での事業展開を積極的に推進していることを示すものであり、今後の成長期待を高める材料となっています。
過去最高益更新の予想と業績の安定性
IHIの業績は過去最高益を更新する予想で据え置かれており、これは配当の安定性や成長性にもプラスに働いています。不採算事業の切り離しを進めることで収益の底上げを図っており、事業ポートフォリオの最適化が着実に進行しています。
株価上昇のトレンドと市場での評価
2024年から続く強い上昇トレンド
IHIの株価は2024年から強い上昇トレンドが続いています。2025年8月には株式分割を公表したこともあり、1万8,050円の上場来高値を付けました。その後も株価は堅調に推移しており、株式分割後も上場来高値を更新する展開となっています。
株式分割の実施は、単なる投資金額の引き下げにとどまらず、株価対策として資金を呼び込む効果も期待されています。実際に、分割後は個人投資家を中心とした資金流入が活発化し、株価の上昇を支える要因となっています。
配当政策と株主還元の展望
株式分割が配当に与える影響
株式分割により1株あたりの配当金額は7分の1になりますが、保有株数が7倍になるため、株主が受け取る配当総額は変わりません。むしろ、株価が手頃になることで新規投資家が増加し、配当政策が強化される可能性も指摘されています。
航空機エンジン事業の高収益性を考慮すると、今後の増配余地は十分にあると考えられており、株主還元策の充実が期待されています。現在IHIには株主優待制度はありませんが、個人株主の増加に伴い、今後導入される可能性も指摘されています。
トータルリターンの魅力
配当利回りは現状それほど高くない水準ですが、株価上昇と配当を合わせたトータルリターンは魅力的な水準となっています。また、株式分割後に株価が調整局面に入った場合には、自社株買いによる下支えも期待できるとされています。
投資家にとっての歴史的なチャンス
個人投資家層の拡大を図る戦略
今回の株式分割は、投資しやすい環境を整え、投資家層の拡大を図ることを目的としています。最低投資金額が約154万円から約22万円へと大幅に低下したことで、これまでIHI株への投資を躊躇していた個人投資家にとって、参入のハードルが大きく下がりました。
この株式分割による投資機会は「歴史的投資チャンス」とも評されており、防衛・航空事業の好調さと相まって、個人投資家からの強い関心を集めています。
今後の注目ポイント
IHIの今後の株価動向を占う上で、防衛関連事業の受注動向や航空機エンジン事業の収益性の持続性が重要なポイントとなります。また、不採算事業の切り離しによる収益改善効果がどの程度発現するかも、市場の注目を集めています。
株式分割後の個人投資家の動向や、新規株主の増加が配当政策や株主還元策にどのような影響を与えるかも、今後の重要な観察ポイントとなるでしょう。宇宙・防衛分野での新たな取り組みも、長期的な成長期待を支える要素として注目されています。
まとめ
IHIは2025年10月1日に実施した1対7の株式分割により、最低投資金額を大幅に引き下げ、個人投資家層の拡大に成功しています。防衛・航空事業の好調さと不採算事業の切り離しによる収益改善が株価上昇を支えており、株式分割後も上場来高値を更新する展開となっています。
豪州の衛星新興企業との共同研究契約締結など、新たな事業展開も投資家の期待を高めており、今後の成長が期待される銘柄として市場の注目を集めています。過去最高益更新の予想や高い収益性を持つ航空機エンジン事業の存在により、配当の安定性や増配余地も評価されており、トータルリターンの観点からも魅力的な投資対象となっています。