インバウンド急増と円安でホテル客室の値上がりが止まらない現状

2025年に入り、日本のホテル業界はインバウンド(訪日外国人観光客)の大幅増加と円安の影響を背景に、客室単価の値上がりが著しく続いています。多くの主要都市でホテルの稼働率が高水準を維持するとともに、宿泊料金はコロナ禍前の2倍以上に跳ね上がるなど、価格争奪戦は激化しています。

インバウンド需要の急増と円安がもたらす圧力

日本政府観光局によると、2025年上半期の訪日外国人数は前年同期比で21.0%増の2,151万8,100人を記録し、6カ月間で2,000万人を突破するペースは過去最速となりました。特に東京や大阪などの大都市圏では、インバウンド需要が顕著に回復し、訪日客が高価格帯の宿泊施設を中心に利用しているため、ホテル価格の上昇に拍車がかかっています。

さらに、急激な円安の進行もインバウンド客の購買力を後押しし、訪日旅行の魅力を高めていることもホテル価格の高騰につながっています。円安は訪日外国人にとって物価が相対的に安く感じられ、旅行費用を増やす要因となっています。

ホテルの稼働率と客室単価の推移

上場ホテル13社が運営する15ブランドの2025年3月期の平均客室単価は1万6,679円で、前年同期比12.6%増加しており、2019年以前のコロナ禍最安値期(7,755円)と比べると114.5%増、ほぼ2倍以上にまで上昇しています。

稼働率も15ブランドすべてで70%超えを記録し、このうち9ブランドは80%以上の高稼働率を達成しています。これは、ビジネス利用も回復しつつある中、訪日観光需要の伸びが非常に大きいことの証左と言えます。

宿泊費高騰がもたらす国内旅行者の影響

インバウンドの宿泊需要急増でホテル料金が高騰する一方、国内旅行者にとっては宿泊費の負担増が避けられない状況です。2025年のゴールデンウィーク期間中には、国内旅行者数がやや減少したものの、旅行一人あたりの平均費用は微増しました。これは宿泊単価の上昇が主因であり、特に都心部では短期や近場旅行への志向が強まる傾向が見られます。

札幌を中心とした民泊需要の急増

ホテル価格の高騰は民泊市場にも影響し、特に札幌市では民泊需要が前年比約6割増と急伸しています。もともと賃貸住宅として利用されていた物件が、より高い利回りを見込むために民泊に転換されるケースも増加中です。これにより、地域の宿泊業態の多様化が加速し、観光客の受け入れ環境も変化しています。

ホテル業界の今後の課題と展望

急激な需要回復と値上げに対応するため、ホテル業界は人的資源の確保やサービス品質維持が大きな課題となっています。エネルギー価格や人件費の上昇もコスト増として重くのしかかり、価格転嫁が避けられない状況です。

一方で、インバウンド旅行者の増加は日本の観光関連産業全般の活性化に寄与しているため、バランスの取れた需要供給調整と、新たなビジネスモデルの開発が求められています。民泊とホテルの連携や地域別の特性を生かした運営、国内旅行者の増加を目指した施策も今後のポイントです。

2025年の訪日外国人客数は前年の3,687万人を上回り、4,020万人を突破する見込みであり、この勢いは当面続くと予想されています。宿泊業界全体がこの需要の波にどう対応していくかが、今後の大きな注目点となるでしょう。

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