久光製薬が非公開化へ、4500億円規模のMBOを発表
医療用医薬品の大手製造企業である久光製薬が、経営陣による買収(MBO)で非公開化する方針を固めたことが報道されています。買収規模は4500億円規模となる見通しで、創業家出身の中冨一栄社長の資産管理会社が中心となって進める計画です。この大型の資本取引は、医薬品業界において注目される動きとなっています。
株式売買が停止、報道の真偽を確認中
東京証券取引所は2026年1月6日午前10時34分より、久光製薬の株式売買を停止することを発表しました。売買停止の理由は「公開買付に関する報道の真偽などの確認のため」とされています。この対応は、市場に混乱をもたらさないための標準的な手続きであり、企業側が正式な発表を行うまでの間、取引を一時的に中断するものです。
米ブルームバーグ通信が同日に報道した内容によると、久光製薬は「サロンパス」で知られる大手医薬品メーカーとして国内外で高い認知度を持つ企業です。現在の時価総額は3400億円程度とされており、買収規模の4500億円はこれにプレミアムを乗せた金額となっています。
久光製薬の経営方針と今回の決定
興味深いことに、久光製薬は昨年、2027年2月期から2031年2月期までの5年間にわたる「キャッシュアロケーションに関する基本方針」を発表していました。この方針では、営業キャッシュフロー及び金融資産の活用により2,500億円以上を投資原資とする計画を明示していたのです。
具体的な投資計画としては、以下の内容が含まれていました:
- 成長投資:2,000億円以上-設備投資500億円以上、戦略投資700億円以上、研究開発投資800億円以上
- 株主還元:500億円以上-配当約450億円、自己株式取得を機動的に実施
設備投資では、主力製品「サロンパス」のグローバル市場における成長加速を目指し、世界的な安定供給生産体制の構築やマイクロニードル製剤の量産化などを進める予定でした。研究開発投資では、開発中の医薬品候補である「HP-3150US」や「HP-6050」などのパイプラインを拡充し、初期開発段階の新規薬剤開発にも積極的に投資する方針を示していたのです。
企業価値向上と非公開化のねらい
非公開化による経営の自由度向上というのは、医薬品業界における重要な経営判断です。公開企業として市場の期待値に対応する必要がない分、長期的な研究開発投資や戦略的な経営判断が容易になるメリットがあります。特に医薬品業界では、新薬開発に多年月と巨額の投資を要するため、短期的な業績変動に左右されない経営方針が重要とされています。
久光製薬の最近の業績を見ると、2026年2月期第2四半期における売上高は749億4,300万円(前年同期比0.7%減)、営業利益は81億2,800万円(同9.7%減)と減収減益となりました。ただし、国内医療用医薬品事業の減収一方で、海外医療用医薬品事業は米国を中心に31.5%増と好調な業績を示しています。通期予想では売上高1,650億円(前期比5.8%増)、営業利益200億円(同5.8%増)を見込んでおり、全体的な成長トレンドは継続しているとみられます。
市場への影響と今後の展開
非公開化によって久光製薬がどのような経営戦略を展開するのかが注目されています。創業家出身の中冨一栄社長による主導的な経営体制となることで、より長期的で大胆な投資判断が可能になる可能性があります。特に、グローバル市場でのサロンパスの展開や新規医薬品の開発に対して、市場の短期的な反応を気にすることなく注力できる環境が整備されることが期待されています。
今回のMBOは、医薬品業界における重要なコーポレート・ガバナンスの転換を示すものとも言えます。多くの上場企業が四半期ごとの業績報告に追われる中で、久光製薬が非公開化により長期的な視点から企業価値の向上を目指す道を選択したことは、業界内でも影響を与える可能性があるでしょう。
今後の展開としては、東京証券取引所による調査の完了後に、久光製薬からの正式な発表が行われることになります。その発表の内容によって、MBOの詳細な条件や実施時期、そして経営方針の具体的な変更内容が明らかになるものと予想されます。



