広島大学が国内初のワクチン・医薬品製造拠点を整備 パンデミックに備えて9月完成予定

広島大学が大学として国内初となるワクチン・医薬品製造施設の整備を進めています。この施設は2026年9月の完成を目指しており、次の感染症パンデミックに備えた国家戦略の重要な一環として位置づけられています。

世界初の大学内ワクチン製造施設

広島大学霞キャンパスに整備される予定のこのワクチン・医薬品製造拠点は、大学内に設置される製造施設としては世界初となります。4階建ての建物で、総事業費は50億円、このうち国からの補助金は30億円となっています。

2025年6月23日には起工式が開催され、越智光夫広島大学長を始め、関係機関や企業の代表者が出席して工事の安全を祈願しました。越智学長は式典で「新型コロナウイルス感染症による世界規模のパンデミックから5年、新たな感染症に対する革新的なワクチンや医薬品を開発・製造する拠点の整備は急務となっている」と述べ、国民の健康を守る重要性を強調しました。

有事と平時の両対応が可能

この施設の大きな特徴は、デュアルユース設備を備えていることです。感染症の有事時には政府の指示に基づいてワクチンの治験薬を生産・供給し、平時にはワクチン以外の医薬品を製造することができます。このような両用性のある設備は国内でも極めて希少です。

平時には、治験のために少量の原薬や製剤を提供することで、アカデミアやスタートアップ企業が治験を実施できる環境を提供します。日本では小ロット製造ができる施設が少ないため、この拠点は革新的な医薬品開発の促進に大きく貢献することが期待されています。

経済産業省の支援事業として採択

この拠点整備は、経済産業省の「ワクチン生産体制強化のためのバイオ医薬品製造拠点等整備事業」に採択されました。全国から41件の応募があった中で、17件が採択されていますが、大学の提案として採択されたのは広島大学が唯一です。

広島大学は2022年10月1日に「PSI GMP教育研究センター」を新設していました。このセンターは、メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンをはじめ、核酸やペプチドなど中分子を主体とした治験薬製造施設とGMP教育システムで構成されており、今回の施設整備によってその機能がさらに強化されることになります。

世界トップレベルの医療開発拠点を目指す

広島大学は、南カリフォルニア大学(USC)との連携契約により、国際的な医薬品規制ガイドライン「ICHガイドライン」に則ったGMP教育研修を共同で実施しています。さらに、ワクチン製造や中分子医薬品製造で実績のある複数の企業と産学連携を進めており、世界トップレベルの医療開発拠点を目指す方針が示されています。

広島大学病院は最近、臨床研究中核病院の承認を受けたため、この拠点整備と合わせることで、医薬品の開発から臨床研究、さらには医師主導治験への迅速な移行が可能になると期待されています。

感染症対策における政府の戦略

感染症有事の際、政府の行動計画では、産学官が連携してワクチンを速やかに開発し、有効性および安全性が確保されたワクチンを製造することで、必要なワクチン量を確保することが定められています。この広島大学の拠点は、そうした政府の感染症対策戦略の重要な要素となります。

新型コロナウイルス感染症のパンデミックから学んだ教訓を踏まえ、今後の新たな感染症に対する備えを強化することの重要性が改めて認識されています。広島大学のワクチン・医薬品製造拠点は、こうした社会的ニーズに応える施設として、2026年9月の完成に向けて着実に整備が進められています。

国民の安心・安全の確保へ

この施設の整備には、複数の企業や個人からの寄附も寄せられており、民間企業を含む社会全体の支援を受けて進められています。越智学長は、「国民の健康を守る国家戦略の一翼を担う責務の重さを改めてかみしめている」とのコメントを残しており、広島大学の強い決意が伝わってきます。

今後の感染症パンデミックに対する備えとして、また日本の医薬品産業の振興を通じて、国民の安心・安全の確保に貢献することが期待されている、広島大学のワクチン・医薬品製造拠点。2026年9月の完成が、一日も早く訪れることが望まれています。

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