ヘリオス、2025年上期決算で赤字拡大 ―バイオベンチャーに試練の波―
バイオ医薬品の開発を手掛ける株式会社ヘリオス(東証グロース:4593)は、2025年12月期第2四半期決算(国際会計基準=IFRS)を8月13日に発表しました。
今期は連結最終損益が47億1千万円の赤字となり、前年同期(29億5千万円の赤字)と比較して赤字幅が大きく拡大しました。
本稿では、この決算内容を分かりやすく解説し、背景要因や投資家への影響について詳しくご説明します。
主な決算ポイント
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上期(1-6月)の最終損益:
47.1億円の赤字(前年同期は29.5億円の赤字) -
4-6月期の四半期損益:
21.4億円の赤字(前年同期は5.3億円の赤字) -
売上営業損益率:
前年同期の-56.6%から-3768.2%へと急悪化 -
税引前損益:
中間でマイナス47億400万円
ヘリオスの現状と赤字拡大の背景
ヘリオスは再生医療や細胞治療といった、先端医療分野の研究開発を主力事業としています。特にiPS細胞や間葉系幹細胞などを使った新薬開発に積極的に取り組んできた同社ですが、今回の決算では開発費や研究費の増加、それに伴う収益化の遅れにより、赤字幅が広がる形となりました。
事業構造上、バイオベンチャーは売上が研究段階では大きく立たず、商業化前に巨額の投資が必要となる性質があります。そのため、ヘリオスも今期は「成長段階での先行投資による一時的な赤字拡大」と説明しています。
四半期分析――4-6月期の動き
4-6月期(第2四半期)の連結最終損益は21.4億円の赤字となり、前年同期の5.3億円の赤字から大幅な拡大を見せました。
このわずか3カ月での赤字拡大の背景としては、以下の点が挙げられます。
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研究費(R&Dコスト)の増大:
新規パイプラインや他社との共同開発案件への投資拡大 -
ライセンス収入の変動:
既存収入源の減少が営業損益を悪化させた可能性 -
営業コスト・販管費負担:
社員増強や開発体制拡充によるコスト増
営業損益率は前年同期-56.6%から-3768.2%まで急激に悪化し、販管費等の固定費増大と収入減少が同時に進んだことが影響しています。
バイオベンチャー特有の「赤字局面」
バイオ医薬品開発企業は、商業化されるまでは継続的な赤字が続くのが一般的とされています。理由は、新薬開発サイクルが極めて長期にわたり、臨床試験・承認など多段階を経るため、収益化までに10年以上かかるケースも少なくありません。
そのため、決算で語られる赤字拡大はヘリオスだけに見られる特殊事情ではなく、同業のタカラバイオ(JCRファーマ、サンバイオ等)でも同様に成長段階で赤字を計上することが一般的です。
投資家への影響と今後の見通し
投資家にとって今回は「赤字拡大」のインパクトが大きく、株価にも影響を及ぼす要因となりました。ただし、開発案件が順調に進み上市の可能性が高まれば、将来の収益拡大も期待できるため、短期的な赤字だけで企業価値を判断するのは難しいという側面があります。
今後の注目ポイントとしては、
- パイプラインの開発進捗(臨床試験や承認取得の進展)
- 既存品・新薬の商業化による収益転換時期
- 競合他社との技術競争・提携動向
- 資本政策(資金調達や追加投資の方針)
が挙げられます。ヘリオスは株主などステークホルダーへの十分な説明責任と、長期ビジョンの提示が求められています。
ヘリオスの今後の成長シナリオ
ヘリオスは今後も世界的な再生医療・細胞医薬分野の需要増を背景に、
パートナー企業との連携強化や新規治療法開発を進めていく考えを示しています。ただし「赤字縮小」には時間がかかる可能性が高い一方、着実な進捗が確認できれば中長期での「飛躍的成長」に期待の声も根強いのが実情です。
個人投資家・医療業界が注視する理由
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革新的治療の社会的意義:
難治性疾患への新薬開発が続けば、患者の生活や治療選択肢が大きく広がります。 -
日本発ベンチャーの成長モデル:
日本発のバイオベンチャーが世界市場に挑戦する“ロールモデル”を担っているとの期待が高いです。 -
資本市場の反応:
赤字決算の一方で一定の「将来有望株」として注目する個人投資家も少なくありません。
結びに――市場から問われる「信頼」と「ビジョン」
今回発表された2025年12月期第2四半期累計の47.1億円という赤字は、ヘリオスにとって大きな試練であると同時に、開発型バイオベンチャーの宿命でもあります。将来、自社が培ってきた技術や製品が商業化されることによって、その赤字を埋めていく「成長ストーリー」を市場は強く意識しています。
今後もヘリオスの決算動向やパイプライン進捗、経営陣の説明姿勢を注視したいところです。