2025年、ハンバーガー業界が直面する最大の危機──倒産過去最多の舞台裏

倒産件数、過去最多に──急速に進んだ業界の二極化

2025年、ハンバーガー店の倒産件数が統計開始以来、過去最多を更新しました。東京商工リサーチの調べによれば、1〜10月だけで8件もの倒産が発生し、従来最多だった2014年(6件)を上回る結果となりました。
この数字は単なる統計上の記録更新にとどまらず、業界に大きな転換期が到来していることを示唆しています。店舗の大半が小規模事業者(従業員5名未満)であり、すべてが破産型倒産に至った点も特徴です。

「高級化」か「低価格」か──加速した二極化と中小店舗の苦境

2025年のハンバーガー業界では、下記のような明確な二極化が進行しています。

  • 2,000円を超える高級ハンバーガーの登場
  • 500円前後の低価格を強みとする大手チェーンの攻勢

この二極化の狭間で、これまで「ちょうどいい価格」と「独自性」でファンを得ていた中小ハンバーガー店が強いプレッシャーにさらされています。多様化した消費者ニーズを満たす大手と、圧倒的な付加価値で一部顧客を囲い込む高級店の間に埋もれ、「特色」も「値ごろ感」も打ち出せない店舗が経営を維持できずに姿を消しているのです。

中小の8割が「販売不振」で経営破綻

倒産した8件のうち7件が「販売不振」を理由に廃業へと追い込まれました。従業員5名未満の小規模店舗が6件を占めており、資本力やブランド力に頼れない中小ハンバーガー店の脆弱さが露呈しています。

倒産増加の主な背景──原価・人件費高騰、価格競争、消費の冷え込み

  • 原材料費の急騰
    ハンバーガーの主な原料——牛肉、チーズ、小麦粉、野菜など——の仕入れ価格が急速に上昇。全体のコストの4〜6割を占めるこれら原材料の高騰が、利益率を著しく圧迫しています。
  • 人件費の上昇
    人手不足によるアルバイト・パートの採用難、最低賃金引き上げによる人件費増も重くのしかかっています。
  • 価格転嫁の難しさ/二極化の影響
    大手チェーン(マクドナルド等)は値上げをしつつも数量確保でコストを吸収。高級店は2,000円超えメニューでプレミアム層へ訴求。中小店舗はこの価格レンジのどちらにも属せず、消費者の選択肢から外れがちです。
  • 消費者の節約志向と「割安感」消失
    都内の平均価格は2019年の169円から2025年には243円まで上昇。「600円を超えると手が出しにくい」といった消費者心理の冷え込みに加え、牛丼やラーメン等の低価格ライバル企業との差も拡大しています。

「高級バーガー」刷新の波と大手チェーンの底力

最近では「2,000円超」の高級路線のハンバーガーが登場。ブランド力や素材へのこだわりで差別化を図る店舗も増加傾向です。一方、大手チェーンはサイドメニューや期間限定バーガーなど商品の多角化、スピード提供、電子決済やデリバリーの強化など大手ならではのサービス強化で幅広い層をつかんでいます。
この「価格」と「プレミアム体験」の二律背反的な流れのどちらにも乗れない中小の無印バーガー店は、需要を奪われて苦境に立たされています。

消費動向の変化がもたらした“手軽な外食”イメージの変容

かつては、ハンバーガーは「安くて早くて美味しい」外食の象徴でした。2010年ごろには100円バーガーも珍しくありませんでしたが、昨今の物価上昇を背景にその“お手軽感”は薄れつつあります。値上げは避けられないものの、消費者は既存の価格感覚から抜け出せず“割高”なイメージが先行。「ハンバーガー=安い」の常識は過去のものとなりつつあります。

外食業界全体の危機感──焼肉店にも同様の波

2025年はハンバーガー業界同様、焼肉店についても年間最多の倒産(46件)が東京商工リサーチより報告されています。焼肉業態では、原材料高騰や値上げ・高級化による“客離れ”、牛丼・ファストフードなど低価格競合とのシェア争いの激化が原因とされています。ハンバーガー業界と状況はよく似ており、外食全体が「値段のわりに満足感が薄い」中価格帯から淘汰されている構図がうかがえます。

都心部倒産の特徴と今後の課題

倒産は東京都に4件、大阪府に2件と、都市部への集中が目立っています。これは、賃料・人件費・競争の激しさから、地方以上に経営が難しいことを如実に表しています。今後は、都心型の中小飲食店が、不動産コストの抑制や業務効率化、多様化する消費者ニーズへの柔軟な対応といった課題解決なくして生き残るのは困難な時代となりそうです。

ハンバーガー業界、再生への道は開けるか?

2025年の業界動向は、「安売り」か「高付加価値」か、どちらかを目指す戦略転換なくして生き残りが厳しい現実を突きつけました。地域密着や個性派メニュー、サブスクリプション型サービスなど、独自戦略で生き残る店舗も一部見られるものの、全体の流れとしては厳しい淘汰が続く見通しです。

消費者がハンバーガーに何を求め、いくらまでなら「満足」できるのか。単に値段を下げるだけでなく、食材やサービス、体験そのものの“価値”訴求が欠かせません。外食不況の波を乗り越えられるか、2026年以降のハンバーガー業界の変化が注目されています。

まとめ

  • 2025年、ハンバーガー店の倒産は過去最多の8件に到達し業界の構造変化が鮮明に。
  • 二極化の間で苦しむ中小店舗が消えていく構図。
  • 原材料や人件費高騰、値上げの難しさ、消費者の節約志向が倒産増につながった。
  • 焼肉店など他の外食業態でも同様の傾向が加速。
  • 地域や規模ごとに今後の事業再構築・差別化が求められる。

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