浜松ホトニクスが切り拓くレーザー核融合の最先端──2030年代、世界初の実証が示す日本発「エネルギー輸出国」への道
静岡・浜松で開かれた未来──レーザー核融合の舞台裏
浜松ホトニクス(本社:静岡県浜松市)が、いま世界の注目を集めています。浜松市浜名湖の北東部に位置する同社の研究所では、レーザー核融合の実用化を目指した前例のない技術開発が進められています。
2025年7月31日、浜松ホトニクスとスタートアップ企業「EX-Fusion」は共同で「世界初」となる実証試験に成功。その内容は、大出力パルスレーザーを1時間にわたり連続して模擬燃料ターゲットに照射するというもの。これは従来の単発照射方式ではなく、「連続照射」型という新しい実験手法。その成果は、安全で自然にやさしい純国産のエネルギー実現へ向けて、国内外から大きな関心を集めています。
30年以上続く挑戦──浜松ホトニクスの重み
浜松ホトニクスがレーザー核融合に取り組み始めたのは1990年代前半。2代目社長の晝馬輝夫(ひるま・てるお)氏のもと、30年以上も研究が続けられてきました。
2005年には産業開発研究センターを設立し、大出力レーザーの産業応用を目指した取り組みに着手。現在、約30人の研究者が参画し、地道に前進を続けてきました。その集大成と呼べるのが、今回の連続パルスレーザー照射の実証実験と言えるでしょう。
前人未踏「1時間連続」照射──その技術的意義とは
- 世界初の記録:これまで最大でも単発もしくは20分台の照射が実績の限界でしたが、今回「1時間連続」を達成。これは「民間のみ」のプロジェクトとしても世界初であり、新たな記録となりました。
- エネルギー転換の大きな一歩:従来のレーザー核融合はエネルギー効率や持続時間に課題がありました。連続照射によって安定的・効率的なエネルギー生成への道が拓かれたのです。「エネルギー分野のゲームチェンジにつながる」と専門家も評価しています。
この技術が確立されれば、従来のエネルギー生成の常識が覆されるだけでなく、「より安全で持続的な発電システム」としての可能性が現実味を帯びてきました。まさに「人類全体の夢」に向けた決定的なステップです。
共同開発の推進役──EX-Fusionとのパートナーシップ
スタートアップ企業「EX-Fusion」は、今回の成果発表でこう語ります。
「レーザー核融合を連続で運転できるのだ、ということを見せたい。別方式でこの分野の記録とされていた22分を、超える水準を目標にした」と松尾一輝CEO。浜松ホトニクスの技術とベンチャーの推進力がタッグを組むことで、既存の枠組みを飛躍的に広げることができました。
2030年代の「実用発電」と日本──エネルギー輸出国への転換点
核融合発電の実用化が2030年代にも実現するという期待が高まっています。核融合は「水素」などの軽い元素同士の“合体”によって莫大なエネルギーを生み出す仕組みで、事実上CO2を排出しないクリーンエネルギー。燃料源となる重水素は海水から容易に抽出できることから、従来の化石燃料や原子力に代わる「夢のエネルギー」とも呼ばれています。
さらに、日本独自の民間主導による技術開発が、エネルギー供給の主導権をアジア、そして世界に対して握る可能性を示しています。現地関係者は「日本がエネルギー輸出国となる未来」が現実味を帯びてきたと語ります。「安全で自然にやさしいエネルギーは人類全体の夢」(浜松ホトニクス中央研究所企画部 川嶋利幸部長)。この言葉に夢を託す研究者は少なくありません。
民間だけで切り開く未来──国家プロジェクトを超えたチャレンジ
世界の核融合研究はこれまで国家プロジェクトが主流でしたが、浜松ホトニクスとEX-Fusionによる民間のみの連続照射実証は、各国研究者を驚かせています。民間主導の柔軟性とスピードが、日本の技術革新力を象徴しています。
今後は、さらに高出力レーザー機器の開発やターゲット素材の改良、長時間安定稼働に向けた課題解決など新ステージに入ります。
スタートアップの情熱、浜松ホトニクスの粘り強さ、市民の理解と支援──この全てが合わさり、世界的イノベーションを生み出しています。
“核融合先進国”日本としての挑戦と責任
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地元・浜松市の意義:
光技術の都・浜松らしい、自発的かつ先進的な研究拠点の存在が、今回の成果を可能にしました。 -
産業波及効果:
新たなエネルギー技術は、産業界全体の生産性向上や新規雇用の創出にもつながると考えられています。 -
国際競争力:
他国よりも一歩先んじて量産技術・発電コスト削減に成功すれば、日本が“エネルギー輸出国”として世界のエネルギー地図を塗り替える可能性も見えてきます。
子どもたちへ、未来世代へのメッセージ
現在の成果は決してゴールではありません。「2050年までにカーボンニュートラルを目指す」日本の目標にとっても、レーザー核融合技術は今後の選択肢を大きく広げます。
「自然と共生する持続社会」「安心して暮らせる未来」。浜松ホトニクスが浜松から世界へ投げかけた新しい技術のうねりは、これからの子どもたちや次世代に、希望と活力を与えてくれます。
今後の展望──課題と期待される社会変革
- 技術的課題: さらなる高出力化・長時間安定稼働・コスト削減が残された大きな課題です。
- 社会受容性: 新技術に対する理解や社会実装へのサポートが今後一層求められるでしょう。
- 産業連携: 行政、教育機関、民間、多様な主体の連携が不可欠です。
- 国際協力: 地球規模でのエネルギー危機や環境問題解決に、日本発の技術が果たせる役割がさらに期待されます。
まとめ──浜松から始まる「人類の夢」
静岡県浜松市という日本の地方都市から世界へと羽ばたく浜松ホトニクスとEX-Fusion。
「安全で持続可能、そして未来世代にも誇れるエネルギー社会」の実現へ向けて、いま確かな一歩が踏み出されました。
2030年代、核融合を利用した実用発電の実現──そして日本が堂々とエネルギーを世界へ発信し続ける、その日はもうすぐそこまで来ているのかもしれません。