八十二銀行と長野銀行の合併が実現へ、地域金融の新時代が幕を開ける
2026年1月1日、日本の地域金融機関の歴史に新しい章が刻まれようとしています。八十二銀行と長野銀行が合併し、「八十二長野銀行」として生まれ変わるこの取り組みは、単なる企業統合ではなく、人口減少時代における地域経済の活性化を目指した戦略的な経営統合なのです。
二つの地域金融機関が選んだ統合の道
八十二銀行と長野銀行は、2023年6月に経営統合を決定し、今月27日に発表された新しいアプローチによって、地域経済を支える新たなビジョンを示しました。両行が統合を決断した背景には、人口減少という大きな課題がありながらも、工夫次第で地域経済を伸ばせるという確信があります。
長野県という限定的な市場の中で、二つの主要な地域金融機関が手を組むことで、経営効率を高めるだけでなく、顧客サービスの質を向上させることが期待されています。両行の統合は「日本で一番成功した地域金融機関の経営統合・合併」を目指すという野心的な目標を掲げており、地域金融機関の新しいモデルを全国に示すことになるでしょう。
システム統合による具体的な準備が進行中
合併に向けた準備は既に本格化しています。2023年11月には住宅ローン窓口の一本化が実施され、2024年2月には東京営業部での共同店舗営業が開始されました。さらに2024年5月には信州大学前支店と松本北支店での共同店舗営業もスタートしています。
これらのステップは、合併後の店舗運営がスムーズに進むための準備に他なりません。合併後の八十二長野銀行は、長野銀行の現在52店舗と八十二銀行の既存店舗を統合し、法人営業所、特殊形態支店、ローンプラザを除き151店舗となる予定です。この統合により、地域内で重複する店舗の統廃合を行い、より効率的なネットワークが形成されます。
合併後の経営目標:連結ROEで8%以上を実現
今回発表された新しいアプローチの中で特に注目される点は、合併後の経営目標の明確化です。八十二銀行は2029年3月期における連結ROE(自己資本利益率)で8%以上を目指すことを表明しました。これは、単に収益を増やすだけでなく、株主資本の効率的な活用を重視した経営方針を示しています。
合併前はシステム統合にかかる費用の増加などによりコスト面におけるマイナスシナジーが先行することが予想されます。しかし、合併後の2026年度以降は、トップラインシナジーとコスト面におけるプラスシナジーを本格的に発揮し、収益性を大幅に向上させる計画となっています。
八十二長野銀行へ、総合コンサルへの飛躍
最も興味深いのは、八十二長野銀行が単なる地域銀行ではなく、「総合コンサルへの飛躍」を目指しているという点です。グループとして初となる中期経営計画が公表されるなど、新銀行は従来の金融仲介機能にとどまらず、顧客に対する総合的なコンサルティング機能の強化に注力することが明らかになっています。
人口減少時代において、金融機関の役割は単に預金を集め、融資を行うだけではありません。地域企業の経営課題を理解し、事業承継、事業再生、海外展開など、多岐にわたるコンサルティングを提供することが求められています。八十二長野銀行は、このような新たな役割を担う組織へと進化することで、人口減少下でも地域経済を伸ばすという大きなミッションに取り組むのです。
顧客への影響:口座番号やサービスの変更に注意
2026年1月1日の合併に伴い、顧客にとって重要な変更が発生します。八十二銀行は銀行名を「八十二長野銀行」に変更しますが、金融機関コード(0143)、本店所在地、SWIFTコードは変更されません。一方、長野銀行の顧客に対しては、すべての口座のお取引店・口座番号が変更となります。
また、合併に伴うシステムメンテナンスのため、電子マネーやスマートフォン決済サービスにも影響が生じる可能性があります。特にPayPayやメルペイなどの外部決済サービスのチャージは、2025年12月30日21時をもって終了予定です。顧客は事前に新しい口座番号などの情報を確認し、自動引き落としやダイレクトバンキングの登録変更を済ませておく必要があります。
地域経済への波及効果を期待
この合併は、長野県経済全体に大きな影響を与える可能性があります。統合による経営効率化によって浮いた資源を、地域企業への融資やコンサルティング、起業支援などに向けることで、地域産業の活性化が期待されます。
特に、人口減少が進む地方経済において、限られたリソースを効果的に活用する金融機関の役割はますます重要になっています。八十二長野銀行がこの新しいアプローチを成功させることで、全国の地域金融機関にとって一つのモデルケースとなるでしょう。人口減少という課題を抱えながらも、工夫と創意工夫によって地域経済を成長させることは十分可能であり、その鍵となるのが、このような戦略的な経営統合なのです。
まとめ:新時代への期待
2026年1月1日の合併によって誕生する八十二長野銀行は、単なる地域銀行の統合ではなく、人口減少時代における地域金融機関の新しいあり方を示す重要な取り組みです。連結ROE8%以上の達成、総合コンサルへの飛躍、そして地域経済への貢献という三つの目標を掲げた新銀行は、長野県の経済を牽引する新しいエンジンとなる可能性を秘めています。顧客にとっての利便性向上と地域経済の活性化、これらの両立が、この合併の真の価値を示すことになるでしょう。




