2025年10月、金価格が史上最高値を更新し続ける市場の動き

2025年10月、貴金属市場において歴史的な動きが見られています。金価格は10月17日に1グラムあたり23,062円から23,254円という史上最高値を記録し、さらに10月21日には23,179円という高値を維持しています。これは50年前の1973年の最高価格1,160円の実に20倍以上という驚異的な水準です。

金価格の急騰要因

今回の金価格上昇には複数の要因が絡み合っています。最も大きな要因は米中貿易摩擦の再燃です。トランプ米大統領は中国のレアアース輸出規制強化を受け、11月1日から中国製品に100%の追加関税を課す方針を示しました。この政策は実際に10月16日に実施され、米中関係の悪化が懸念される事態となっています。

グリア米通商代表は「実施は中国の行動次第」と述べていますが、交渉は難航している模様です。世界のハイテク供給網を巡る対立が再び市場の不安を刺激し、安全資産としての金に資金が流入する状況が生まれています。

FRBの金融政策が追い風に

金価格の上昇を後押ししているもう一つの重要な要因が、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ観測です。パウエルFRB議長は講演で、前回FOMC以降の経済見通しはほぼ変わっていないとし、10月28日から29日のFOMCで追加利下げの可能性を示唆しました。

さらに、ウォラーFRB理事が講演で「今月のFOMCでは政策金利を0.25%引き下げるべき」と発言したことで、追加利下げへの期待が一層高まりました。金利低下とドル安が金相場を押し上げる構造となっており、国際金価格は一時1オンス=4,179ドルと史上最高値を更新しています。

10月の金相場の詳細な推移

月初から月中旬までの動き

2025年10月の金相場は、月初の10月2日に1グラムあたり20,003円でスタートしました。これが月の最安値となっています。相場の急騰による反動(利益確定売り)や円高の影響で、月初は調整局面を迎えていました。

その後、10月15日には22,260円まで回復し、前日比で126円の続伸となりました。この日、米中貿易摩擦の再燃と米金融政策への思惑が市場を動かし始めました。

史上最高値更新の連続

10月16日には22,404円と前日比で144円の続伸を記録し、4日連続で過去最高値を更新する展開となりました。ニューヨーク金先物も続伸し、トランプ米政権による中国への100%追加関税の影響で、投資家のリスク回避姿勢が強まりました。

そして10月17日には、前日比で658円という大幅な上昇を見せ、23,062円に到達しました。この日の急騰は、FRBの追加利下げ期待の高まりと、米政府機関の一部閉鎖懸念などの先行き不透明感が重なったことによるものです。

10月21日時点では23,179円という高値を維持しており、月間の平均買取金額は21,551円となっています。

為替市場との連動

国内の金相場は、為替市場の動きとも密接に関連しています。米中貿易摩擦の懸念からドルが売られ、ドル円は一時150円台後半に達しました。その後、150円台前半でやや円高ドル安方向へと推移しています。

円安基調が続くなか、円建て金価格も高値を維持する構造となっており、国内市場では政治・経済の不透明感を背景に、投資家のリスク回避姿勢が一段と強まっている状況です。

銀価格も45年ぶりの高値に

金価格の上昇に連動して、銀価格も大きな動きを見せています。銀は金の上昇に伴って連れ高となり、4週連続の上昇で前週の最高値を再更新しました。国際市場では一時54.47ドルという水準まで上昇し、45年ぶりの高値を記録する事態となっています。

銀は工業用途でも広く使用される金属であり、その価格上昇は製造業などにも影響を及ぼす可能性があります。貴金属市場全体が活況を呈している状況と言えるでしょう。

その他の貴金属の動向

プラチナとパラジウム

金や銀だけでなく、他の貴金属も堅調な推移を見せています。プラチナは4週連続の週間上昇で、2013年2月以来の高値を3週連続で更新しています。2025年10月21日時点での国内買取価格は1グラムあたり8,633円で、前日比340円の上昇となっています。

パラジウムも2週連続で2023年5月以来の高値を更新しており、貴金属市場全体が強気相場を形成していることが分かります。

調整局面の可能性

ただし、急激な上昇の後には調整局面が訪れる可能性も指摘されています。金と銀は最高値の更新を続けた後、一時的に調整の下げが入る場面も見られました。金は4,377ドルから4,204ドルへ、銀も高値から調整する動きを見せています。

上昇速度が速いほど、調整の振れ幅も大きくなる傾向があるため、投資家は慎重な姿勢も必要とされています。

歴史的な視点から見る金価格

長期的な視点で見ると、金価格の上昇トレンドは明確です。1973年の最高価格が1,160円、1980年には6,495円、2000年には1,140円と変動しながらも、2023年には9,935円を記録し、そして2025年10月には23,000円台に到達しました。

これは単純計算で、50年前に金を100グラム10万円で購入していれば、2025年には100万円以上で売却できたことを意味します。長期保有による資産保全の効果が如実に表れている事例と言えるでしょう。

投資家への影響

貴金属市場の活況は、関連銘柄にも影響を与えています。金・銀鉱山株は貴金属価格の上昇に伴って注目を集めており、貴金属関連銘柄は長期保有の選択肢としても検討されています。ただし、貴金属が過去最高値から後退する局面では、鉱山株も調整の影響を受けることがあるため、タイミングの見極めが重要です。

今後の見通し

2025年10月21日時点での金価格は高値圏で推移しており、市場では様々な見方が交錯しています。米中貿易摩擦の行方、FRBの金融政策の方向性、地政学リスクなど、複数の不確定要素が金価格に影響を与え続けるでしょう。

10月28日から29日のFOMCでの決定内容は、今後の相場展開を占う上で重要な指標となります。また、米政府機関の閉鎖懸念や中国との貿易交渉の進展状況も、継続的に注視する必要があります。

投資家にとっては、安全資産としての金の魅力と、調整局面のリスクの両面を考慮した慎重な判断が求められる状況が続いています。

参考元