ユーロ相場にも波及するドル安・円高ムード 155円台の攻防が続く理由をやさしく解説
東京とニューヨークの外国為替市場で、ドル/円が「155円台」を中心に上下する動きが続いています。背景には、日米の金利差がやや縮小し始めていることがあり、ドルを売って円を買う動きがじわじわと優勢になっているのがポイントです。
この流れはドルと円だけでなく、ユーロなど他の通貨の動きにも影響しており、為替全体の力関係が少しずつ変化しつつあります。
NY市場では円買い優勢 155円台後半からじりじりドル安
ニューヨーク時間の為替市場では、ドル/円は155円台後半での取引が中心やや円高・ドル安方向「日米金利差の縮小」が意識され、円を買う動きが優勢 これまでドル高の大きな要因となってきたのが、アメリカと日本の金利差でした。アメリカが利上げを進めてきた一方で、日本は長く超低金利を続けてきたため、金利の高いドルが選好され、円が売られやすい状況が続いていました。
ところが足元では、米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げサイクルに入りつつある日本銀行はマイナス金利を終え、今後は緩やかに金利を引き上げていくとの見方 こうした変化が「これまでのような圧倒的な日米金利差ではなくなりつつある」という意識につながり、ニューヨーク市場ではドルを売って円を買う動き
東京市場の見通し:155円台半ばを軸に「もみ合い」か
一方、12日の東京外国為替市場については、「ドル/円は155円台半ばを中心にもみ合いになる」との見通し 外為関連のレポートによれば、前日のドル/円は一時154円95銭前後まで下落したものの、その後は買い戻しも入り、大きくトレンドが変わるほどの材料にはなっていない
足元では、アメリカの経済指標として新規失業保険申請件数が大きく増加市場は様子見ムード このため、東京時間では新たな決定打となる材料に乏しく、155円台を挟んだレンジ取引
外為どっとコム「ドル/円今日の予想」 方向感を模索する展開
外為どっとコムが配信した「FX/為替『ドル/円今日の予想』2025年12月12日号」でも、ドル/円は方向感を探る値動き レポートでは、前日の相場について次のようなポイントが挙げられています。
- ドル/円は前日比で約0.3%下落し、一時154円95銭前後まで円高が進んだ
- 米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果を受け、対ユーロを中心にドル売り
- 米新規失業保険申請件数の大幅増加がドル売りを誘ったが、その後は一巡して買い戻し
また、レポートでは、現在の為替環境について次のような構図が示されています。
- FRBは利下げサイクルに入っている一方で、欧州中央銀行(ECB)や豪州準備銀行(RBA)は利下げサイクルを終えたとの見方
- そのため、ドルの金利面での優位性はやや後退
- 一方で、日本については来週の日本銀行金融政策決定会合で利上げが見込まれている円を積極的に買い進める流れにはなりにくい
こうしたことから、外為どっとコム総合研究所のアナリストは、「本日のドル/円は155円台を中心に、方向感を探る値動きになりそうだ」
ユーロへの影響:ドル安が進むと「ユーロ高・円高」という組み合わせも
今回のニュースのキーワードとして「ユーロ」ドルの売り圧力がユーロ相場にも及んでいるため 外為どっとコムのレポートでも、FOMCの結果を受け、対ユーロを中心にドル売りが優勢になった
- ドルに対してユーロが買われやすい(ユーロ高・ドル安)
- 同時にドルに対して円も買われやすい(円高・ドル安)
という構図が見られる、ということです。
この場合、為替全体で見ると
- ドルは主要通貨に対してやや弱含み
- ユーロと円は、「どちらがより強いか」をめぐって相対的な綱引き
という状況になりやすくなります。
特に、ECBは利下げをいったん終了したとの見方金利面ではユーロの方が相対的に有利「正常化の入り口」 そのため、ユーロ/円では、「ユーロ買い・円売り」か「円買い・ユーロ売り」かがはっきりしにくい局面
ドル/円の実勢レート:155円台での推移が続く
実際のドル/円相場を示す各種データでも、足元の水準は155円前後〜後半に位置している 例えば、民間の為替レート情報では、直近1週間のドル/円は
- 最高値:およそ156円台後半
- 最低値:およそ154円台半ば
- 平均値:およそ155円台後半
と、まさに155円を挟んで上下するレンジ内で推移 また、国内金融機関が公表しているドル/円の仲値(銀行が公表する対顧客向けの基準レート)でも、12月上旬は155円前後から150円台後半の水準が並んでいる
こうしたデータからも、現在の市場は「ドル高・円安が一服し、155円台でもみ合っている」段階
なぜ「155円台」が意識されるのか
市場で「○○円台半ば」投資家にとっての「目安」や「節目」になりやすい
- 直近の高値圏に近く、市場参加者のポジションが溜まりやすい
- 当局(財務省や日銀など)の為替コメントが出やすい水準としても意識されている
- 過去数日の値動きの中心値(平均値)が155円台に集中
値動きが速かった局面を経て、その後にこうした「もみ合い」が訪れると、市場参加者は
- これ以上の円安が進むのか
- それともいったん円高方向へ調整するのか
を慎重に探る姿勢を強めます。
今回も、日米の金利見通しや、日本銀行の金融政策決定会合、そしてアメリカの重要経済指標など今後のイベントを見極めながら、次のトレンドを探る局面
ユーロと円、個人投資家が意識したいポイント
個人のFX投資家や、海外旅行・海外送金を考えている方にとって、ユーロと円の関係
- ドル中心の動きが、ユーロや円にも波及する
FOMC後のドル売りは、まずユーロ/ドルドル/円 - 金利差は中長期のトレンドを左右する
FRBが利下げに向かう一方で、ECBが様子見、日本銀行が利上げ方向に舵を切りつつある、という今の構図は、今後1〜2年の為替の大きな方向感 - 短期的には経済指標やイベントでのブレも大きい
失業保険申請件数のような指標や、中央銀行要人の発言などによって、為替レートは一時的に大きく動くこともある
ユーロについては、ECBの政策スタンスユーロ圏の景気指標(インフレ率、成長率など) 円については、日銀の政策賃金動向や物価、政府の為替に関する発言 これらを総合的に見ながら、「ドルとユーロ」「ドルと円」「ユーロと円」
投資判断は慎重に 情報収集とリスク管理がカギ
最後に、今回のように155円台を挟んで方向感を探る局面焦らずに情報を集めること 外為どっとコムなど各社のレポートは、日々の値動きと背景をコンパクトにまとめており、相場の「今」をつかむのに役立ちます最終的な投資判断は自己責任
為替相場は、経済指標、金融政策、地政学リスク、投資家心理 特に、今回テーマとなっているユーロやドル、円のような主要通貨ニュースの影響が表れやすい 無理のない範囲でリスクを管理しながら、ニュースやレポートをうまく活用し、ご自身のペースで相場と向き合っていくこと


