世界が注目する「ジャパンブランド調査2025」─地方と福島県をめぐる日本再訪ブームのいま

電通「ジャパンブランド調査2025」概要と注目ポイント

株式会社電通は2025年、「ジャパンブランド調査2025」を実施しました。本調査は世界20の国・地域に在住し、20〜59歳の男女12,400人(中間所得層以上)を対象に、インターネット調査の形式で2025年5月20日から6月22日まで行われました。調査は本年度で15周年を迎え、過去最大規模となりました。この調査は2011年の東日本大震災以来、日本のブランド力や観光地への関心、消費傾向などをグローバル視点で分析し続けてきたものです。

<主な対象国・地域>
アメリカ、カナダ、オーストラリア、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、サウジアラビア、インド、インドネシア、シンガポール、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム、中国本土、香港、台湾、韓国。

「ジャパンブランド」の意味と進化

ジャパンブランドは、単なる観光や特定製品だけでなく、和食や地方創生、日本の文化・価値観、ライフスタイルまで幅広い「日本らしさ」を指します。これは、日本が世界からどのように受け止められ、どのような魅力が共有されているかを明らかにする、いわば現代日本の多面的なイメージの総称です。

日本は「再訪したい国」ナンバーワン

「再び観光で訪れたい国」の問いに、日本は52.7%という圧倒的な支持を集め、2位の韓国(20.0%)、3位の米国(16.6%)など後続を大きく引き離しました。日本独自の四季や文化体験、治安の良さ、食の多様性などが訪日外国人旅行者から高く評価されています。

  • 首都圏や有名観光地だけでなく、地方への関心も高まりつつある
  • リピーター率も非常に高く、一度訪れた人の再訪意欲は依然高水準
  • 実際に地方を訪れた海外旅行者の満足度は9割を超える

都道府県の認知度と地方の現状

日本への関心は高いものの、都道府県の認知度上位はこの10年間ほとんど変わらず、東京、北海道、大阪、京都などの有名都市に集中しています。多くの外国人にとって、これら以外の地方の認知度は依然として低い傾向が見られます。

  • 地方への旅行意欲は若干高まってきているが、訪問経験者自体は少ない
  • 一方で「地方を訪れたことがある人」は、その満足度と再訪意向が共に9割超えときわめて高い
  • 地域差が明確で、関東・関西大都市圏とその他地域の間に大きなギャップが存在

また、日本の「温泉」のような観光資源についても、欧米圏での認知度は低く、世界的な観光地化にはまだ課題が残っています。都市への集中型観光から、持続可能な形で地方分散型観光への転換が求められていると言えるでしょう。

地方創生と観光・福島県の現状と展望

地方部では、知名度・訪問意欲・体験満足度・産業や施策の認知度など様々な格差が露呈しています。とりわけ地方創生には、「マタイ効果」(強いところに集中し、弱いところとの差が広がる現象)が働きやすいことが指摘されており、日本らしさや地域らしさ、観光施設の知名度に顕著な地域差が見られるのです。

ここで注目すべきは、福島県をはじめとした「震災以降の復興地域」についてです。福島県は、2011年の東日本大震災以降、県全体で「風評被害」や観光減少などの苦境に直面し続けてきました。今回の調査でも、全国区での認知度や実際の訪問経験は未だ高くはありませんが、「地方部訪問者の満足度がきわめて高い」ことがデータとして明らかになっています。

福島県では、地元食材を活かした和食体験や、自然景観、歴史文化、復興の歩みを知ることができる観光プログラムが展開されています。近年は、安心・安全への配慮を徹底し、海外のメディア招致やWeb・SNSを通じた発信強化を推進。復興ストーリーを背景にした観光体験は、実際に訪れた外国人観光客から非常に高い評価を得ており、「また訪れたい」「人に勧めたい」という声が多く寄せられています。

  • 福島の見どころ例
    会津若松の歴史街道、磐梯山エリアのトレッキング、猪苗代湖周辺のアウトドア、伝統工芸や地酒体験、地元農産物マーケットなど
  • 原発事故後の安全・安心対策をはじめ、農産品のモニタリング・情報公開施策が訪問者の安心感につながっている
  • 海外メディアを巻き込んだ情報発信や受入体制強化で「行く前の不安」は徐々に払拭されつつある

温泉・食文化、季節体験 ─ まだ欧米で十分に伝わっていない魅力

一方、訪日外国人の間で人気の高い温泉地や四季折々の自然体験については、「欧米圏における認知度の低さ」が課題となっています。温泉地への訪問・体験はアジア圏で根強い一方、欧米では情報自体が届きにくく、魅力を感じるきっかけが不足しているのです。

食文化の面では、訪日旅行者の多くが「寿司」「ラーメン」「和菓子」など日本食に強い関心を示し、現地で食体験を楽しみにしていることが分かりました。とくに「コンビニで寿司を買う」「地元飲食店を発掘する」など、日本独特の食習慣そのものが高く評価されています。

今後の課題と可能性─地方分散型観光へのシフト

「桜シーズン」など特定時期に訪日希望が集中する中、紅葉や夏休み、ウィンタースポーツなど季節ごとに分散した旅行需要への対応も重要です。今後、都市部だけでなく広く地方に目を向け、日本全国の多様な体験・独自の価値を世界へ発信していくことが、持続可能な観光立国化への鍵だと考えられます。

  • 福島県をはじめとする地方では「訪問者満足度が圧倒的に高い」ことを活かすプロモーションが今後期待される
  • 各地の伝統と自然、そこに根差した食文化は、世界中の旅行者にとって新鮮な発見となる
  • 欧米圏へ向けては、日本の温泉や伝統体験を「安心・安全・快適」に進化させて発信することが求められる

今後は、日本ブランドのもつ多様性と深みを生かし、地方創生×観光振興、さらには震災復興への歩みの発信など、多方面で連携が進んでいくことが期待されます。

参考元