福岡発「トライアルGO」が首都圏進出 ローカルスーパー戦国時代に新風
福岡を拠点とするディスカウント系スーパー「トライアル」が、新フォーマットの小型店「トライアルGO」や、西友との協業による「トライアル西友」などを通じて、首都圏への本格進出を加速させています。 さらに、岐阜発「バロー」など他地域の人気ローカルスーパーも関東に相次いで進出しており、「スーパー戦国時代」ともいえる状況が生まれています。
トライアルGOとは? コンビニサイズの「スマートストア」
「トライアルGO」は、トライアルカンパニーが展開する小型のスマートストア業態で、郊外型の大型「スーパーセンタートライアル」とは一線を画すフォーマットです。 店舗面積は40〜300坪ほどとコンパクトながら、取り扱い商品数は約3000〜1万1000点と、日常の買い物には十分な品ぞろえを確保しています。
特に、土地に限りのある都心部や住宅街にも出店しやすい点が特徴で、「大型店には行きづらいけれど、コンビニより安く・しっかり買い物したい」というニーズを狙った店舗づくりになっています。
さらに、「トライアルGO」はテクノロジーを活用して業務を効率化した「スマートストア」として設計されており、低コスト運営による“安さ”と“便利さ”の両立を目指しています。
福岡で実験を重ねた次世代モデル
トライアルは、福岡を中心に「トライアルGO」の実験店舗を展開し、約2年間にわたりオペレーションや品ぞろえを検証してきました。 福岡県内外で20店舗程度まで拡大している段階で、そのノウハウをもとに首都圏への進出に踏み切った形です。
福岡市の「TRIAL GO福岡別府3丁目店」などでは、生鮮食品や日配品に加え、職人監修の弁当やスイーツなども300円台中心の価格帯で販売し、“安くて便利な日常使いの店”として支持を集めています。 こうした実験結果が、首都圏店舗の品ぞろえや価格戦略にも反映されているとみられます。
首都圏へ本格進出 西荻窪・富士見台に2店舗同時オープン
「トライアルGO」は2025年11月、首都圏に初進出し、東京の「西荻窪駅北店」と「富士見台駅北店」の2店舗を同時オープンしました。 いずれも住宅街に近い駅周辺で、コンビニや中小スーパーと競合する立地です。
TBS系のニュース番組「NEWS DIG」では、この首都圏1号店オープンの様子を取り上げ、「福岡発の格安スーパー『トライアルGO』が東京初出店」と紹介しています。 福岡で28店舗を展開してきた実績を背景に、いきなり都内で2店舗同時出店という積極的なスタートを切りました。
番組では、「トライアルGO」が「大手スーパーの牙城を崩そうとする地方発ローカルスーパー」の一角として紹介され、今後の店舗拡大への期待とともに、その戦略が注目されています。
「トライアル西友」1号店・花小金井店の魅力
一方、トライアルは東日本を地盤とする大手スーパー西友との協業にも乗り出しています。2025年11月、東京都小平市に「トライアル西友 花小金井店」がオープンし、新たなフォーマットの1号店として話題になりました。
日本テレビ系「news every.」では、「福岡発のスーパー『トライアル』が西友とのコラボ店舗を都内に初出店」として、花小金井店の売り場を詳しく紹介しています。 店内では、トライアルの低価格戦略と、西友が培ってきた都市型スーパー運営のノウハウが組み合わさった、独自の売り場づくりが特徴です。
人気の理由:圧倒的な「安さ」とプライベートブランド
「トライアル西友 花小金井店」では、特に精肉コーナーが取材で注目されました。日テレNEWSによると、「10種類以上のお肉から選べる3パック1080円」というセットが人気で、家計を意識する利用客から高い支持を得ています。
また、トライアル独自のプライベートブランド商品も豊富に取りそろえられており、日常使いの食品や日用品を低価格でまとめ買いできる点が、都内の新規利用客に“掘り出し物感”を与えています。
番組でインタビューを受けた来店者からも、「安さに驚いた」「この価格なら頻繁に利用したい」といった声が紹介され、売り場の“宝探し感”も含めて、ローカルスーパーならではの魅力が伝えられています。
岐阜&福岡のローカルスーパーが関東へ 「売り場に魅力満載!」
日本テレビの特集「売り場に魅力満載! 福岡&岐阜のローカルスーパー上陸」では、福岡発のトライアルと、岐阜発の「バロー」という2つのローカルスーパーが、相次いで関東に初上陸した様子がレポートされています。
福岡からはトライアルが西友とのコラボ店舗やトライアルGOで都内に進出し、“とにかく安い”というイメージを前面に押し出しています。 一方、岐阜からはバローが横浜市に関東1号店をオープンし、特に魚の「一本売り」など、鮮魚売り場の迫力が紹介されています。
TBSの報道では、バローが岐阜や愛知を中心に248店舗を展開し、横浜の店舗でも天然ハマチ1尾1500円といった、ボリュームと価格を両立した商品で注目を集めていると伝えています。 福岡・岐阜という地方発のスーパーが、関東の消費者に新しい選択肢を提供しているのが現状です。
「まいばすけっと民」に刺さる? トライアルGOのねらい
都市部の日常の買い物といえば、首都圏ではイオン系小型スーパー「まいばすけっと」の利用者が多く、「まいばすけっと民」と呼ばれるほど生活に密着した存在になっています。ニュースや業界記事では、「トライアルGO」がこうした“駅近・小型スーパー派”の消費者層にどこまで食い込めるかが注目ポイントとされています。
トライアルGOは、コンビニサイズでありながらトライアル流のディスカウント価格を打ち出しているため、「まいばすけっとよりさらに安く買いたい」「コンビニよりも生鮮品をしっかり揃えてほしい」という層には魅力的な存在となり得ます。
一方で、都心部はすでに大小さまざまなスーパーやコンビニがひしめき合う激戦区であり、品ぞろえや店内の見やすさ、決済手段、サービスレベルなど、多面的な評価が求められます。 低価格だけでなく、「わざわざこの店を選ぶ理由」をどこまで打ち出せるかが、トライアルGOの勝負どころといえます。
首都圏進出の勝算とリスク
トライアルGOとトライアル西友の勝算としては、以下のような点が挙げられます。
- 低価格力:九州で培ったディスカウント戦略と、スマートストアによるローコスト運営で、都心でも価格優位性を打ち出せる可能性がある。
- フォーマットの多様性:大型のスーパーセンター、小型のトライアルGO、西友との協業店舗など、立地や需要に応じた多様な業態を持つことで、出店余地を広げられる。
- プライベートブランド:トライアル独自の商品を広く展開し、「ここでしか買えない」「安くて品質も十分」というイメージを浸透させられる。
一方で、リスクも少なくありません。
- 競合環境の厳しさ:首都圏では、大手スーパーやドラッグストア、コンビニ、小型ディスカウント店などがひしめき、価格競争も激しい。
- ブランド認知の課題:九州ではなじみのある「トライアル」ブランドも、首都圏ではまだ知名度が高くなく、「ローカルスーパー」としての魅力をどう伝えるかが課題となる。
- 物流・オペレーション:福岡を拠点とした物流網やノウハウを、首都圏の高密度・小型店舗に最適化する必要があり、効率化とコスト管理が大きなテーマとなる。
ただし、トライアルは大型店をハブとして、高頻度配送で小型店を支える「次世代ローコスト小売モデル」を掲げており、首都圏でも同様の仕組みを構築することで、競争力を高めていく構想を打ち出しています。
地方発ローカルスーパーが変える首都圏の「日常の買い物」
福岡発のトライアル、岐阜発のバローといったローカルスーパーが、次々と首都圏に進出している背景には、人口減少や物価高、そして消費者ニーズの多様化があります。
従来の大手チェーンだけでは拾いきれない、地域ごとのニーズや価格感覚に、地方で鍛えられた個性の強いスーパーが応える形で参入してきているともいえます。 低価格に加え、鮮魚の一本売りや地域色の強い惣菜など、売り場の“ワクワク感”も注目ポイントです。
トライアルGOのような小型スマートストアが、「まいばすけっと民」を含む都会の生活者の心をつかむのか。そして「トライアル西友」のような協業店舗が、どこまで拡大していくのか。地方発ローカルスーパーの挑戦は、今後の首都圏の“日常の買い物風景”を大きく変えていく可能性があります。



