富士通と東北大学の連携がもたらす新たな学術イノベーション ― 第3回「スモールリサーチラボ」全国大会レポート
2025年9月18日、富士通と東北大学による「スモールリサーチラボ(SRL)」第3回全国大会が東北大学で開催されました。本大会は、国内外の大学と民間企業が緊密に連携し、社会課題の解決に資する技術と人材の創出を目指す、まさに未来を先取りする産学連携の新しいモデルを示しています。
スモールリサーチラボとは?
富士通は2022年より、国内外の大学内に研究拠点「スモールリサーチラボ(SRL)」を設設け、大学研究者と富士通研究者が現地に常駐もしくは長期的に滞在しながら共同研究を進めています。この枠組みは、研究成果の社会実装を加速しつつ、人材育成も両輪で推進することに重点を置いています。
- 2025年現在、国内外に17か所のSRLが設置されています。
- ラボ間の横連携を強化し、複数大学・企業の知見を融合する「集合知」創出を目指しています。
第3回全国大会の概要と特徴
今回の全国大会では、富士通と東北大学をはじめ、海外でも拠点を持つ複数大学が参加し、さまざまな研究成果の発表、交流、議論が活発に行われました。特に本大会が注目されたのは、「Causality(因果関係)」という新しいテーマのプログラムが採択されたこと、そして東北大学内に設立された「富士通×東北大学 発見知能共創研究所」の活動報告や人材育成への取り組みが紹介されたことです。
- 各拠点の研究成果発表(AI、物理、哲学など多分野)
- 社会実装に向けた議論と協力体制の強化
- 若手研究者や学生の積極的な参画
富士通×東北大学 発見知能共創研究所の最前線
2023年、東北大学と富士通は、AIを活用した社会課題の解決策をデータから発見する「発見知能」の開発と社会実装を目的として、共同研究所を設立しました。ここでは、AI分野の基礎理論から応用研究、哲学・物理・数学など幅広い学問分野の融合が図られています。
- AIを駆使した「因果関係」の発見と分析
- 社会課題(防災、医療、地域創生など)への直接的なソリューション提案
- 異分野融合による新しいイノベーションの創出
ナノ構造を可視化するコヒーレントX線技術と東北大学の挑戦
さらに、東北大学では、富士通など企業と連携し、コヒーレントX線によるナノ構造の観察技術開発が進行中です。この研究は材料科学や生物医学、さらには次世代の半導体開発など、産業と学術の両面で波及効果が期待されています。
- 従来困難だった微小ナノ構造の高精度な可視化が実現
- 新素材・新薬開発など、基礎科学から応用まで幅広い波及効果
人材育成・グローバル連携の取り組み
全国大会では、人材育成や海外ラボとの共同プログラムにも焦点が当てられました。富士通や東北大学の研究者・学生が国境や分野の壁を越えて交流することで、多様な価値観・知識の交差点として新しい発見を促進しています。
- 学術分野だけに留まらず、企業と大学の相互人材交流
- 若手研究者の海外派遣や国際共同研究プロジェクトの推進
今後の展望と課題
富士通と東北大学は、今後も「発見知能」「因果関係の解明」「コヒーレントX線によるナノ構造イメージング」など先端分野で社会実装へと研究を進めていく方針です。また、教育・人材育成プログラムの拡充、国内外の産官学連携のプラットフォームとしての機能強化にも力を入れています。
- より実践的で社会に寄与する研究の加速
- 国際的な知識共有の場として大会の定期開催を予定
- 日本発のイノベーション創出モデルの世界展開
まとめ ― 産学連携が拓く未来の姿
本大会は、富士通と東北大学が中心となり、日本国内外の知のネットワークを拡張し、社会課題の根本的解決への挑戦を加速させる重要な転換点となりました。大学と企業、それぞれの強みを最大限に活かすことで、研究から社会実装、人材育成まで幅広く担う共同体の姿が明確になりました。
今後もこの連携から生まれるシナジーに大きな期待が集まっています。