富士急ハイランドが打ち出す「5万円パス」──進化するテーマパーク体験とその背景
はじめに
富士急ハイランドは2025年9月、新たな試みとして「富士急プレミアムパス」の販売を開始しました。このパスは税込5万円で、対象12種類の人気アトラクションに「待ち時間ゼロ」で乗れる絶叫優先券がセットになった、まさに“プレミアム”なワンデイチケットです。テーマパークのあり方が大きく変わろうとしている中、本取り組みの意図と影響、また今後のテーマパーク体験の変遷について、詳しく解説します。
「5万円パス」とは何か?
- 名称:富士急プレミアムパス
- 価格:50,000円(税込/一人あたり)
- 販売開始:2025年9月3日
- 利用開始:2025年9月5日
- 対象年齢区分:一律(幼児・シニアは利用不可、中高生は一部条件あり)
- 販売場所:CLUBフジQ会員サイトでの数量限定販売
最大の特徴は、「絶叫優先券」対象の12大人気アトラクションを、待ち時間なしで自由に楽しめることです。さらに、「戦慄迷宮」「FUJIYAMAウォーク」「FUJIYAMAスライダー」の指定時間券もセットとなっており、特別感満載の内容となっています。
どんな特典があるのか?
- 優先入園:開園前に特別なゲートから園内に優先的に入場可能。
- 人気アトラクション12種の絶叫優先券:リストバンドを提示すれば、指定時間内なら何度でも絶叫優先口から直行で乗車可能(11:00から有効)。
- 特別体験券の付与:「戦慄迷宮」「FUJIYAMAウォーク」「FUJIYAMAスライダー」の時間指定チケット付き(各1回利用)。
従来のフリーパスとの違い
一般的なフリーパス(例:大人一日券7,400円程度)では、混雑時には人気アトラクションで1~2時間待つことも珍しくありません。
プレミアムパスは、そのストレスをすべて解消し、徹底的に“時短”と“特別扱い”を体験できる、全く新しいプランです。
通常フリーパス | プレミアムパス | |
---|---|---|
価格 | 約7,400円(大人) | 50,000円 |
対象アトラクション | 全て(混雑時待機) | 12台絶叫系+特別体験券 |
待ち時間 | あり | なし(優先口から入場) |
入園優先 | なし | あり(開園前入園) |
販売方法 | 窓口等で随時 | 会員限定・数量限定 |
なぜ「5万円」なのか?価格設定の背景
一見すると5万円「待ち時間ゼロ」「何度でも乗車」という特権は、他のどのチケットでも手に入らない価値です。
また、海外のテーマパーク(例:アメリカのディズニーやユニバーサル)では、これに近い「VIPパス」や「エクスプレスパス」が数万円以上で販売されており、高付加価値の有料オプションへのシフトは世界的トレンドです。
加えて、園側にとっても、一部の高額顧客が快適に回れる仕組みを用意することで混雑緩和や新たな収益源となります。販売数も数量限定にすることで、全体サービスの低下を防ぎつつ、富裕層や体験重視の来園者ニーズにも応えています。
対象アトラクションと特別体験の内容
「絶叫優先券」の12機種は、富士急ハイランドの顔ともいえる人気絶叫マシンが中心です。具体的な対象アトラクションは公式サイト等で都度案内されていますが、例年下記が該当します。
- FUJIYAMA
- 高飛車
- ド・ドドンパ
- ええじゃないか
- 戦慄迷宮(ホラーハウス)
- ナガシマスカ
- 鉄骨番長
- テンテコマイ
- 絶望要塞
- トンデミーナ
- レッドタワー
- パニックロック
これらを「絶叫優先口」から、待たずに繰り返し体験できるのは、絶叫マシン好きならずとも極めて魅力的なポイントです。
さらに、特別体験がつく「戦慄迷宮」「FUJIYAMAウォーク」「FUJIYAMAスライダー」は、いずれも園内屈指の話題スポット。中でも「FUJIYAMAウォーク」は特殊な安全装備でコースターコース上を歩く驚き体験で、通常は人数限定・時間指定でしか味わえません。その専用枠が付属するのも、プレミアムパスの強みといえます。
利用時の流れと注意点
- CLUBフジQでチケット購入後、入園窓口でデジタルチケット提示、パス受取。
- パスで入園後、11時以降は専用リストバンド着用で優先口利用可能。
- 時間指定体験は、指定枠で参加。
- 小学生は「FUJIYAMAウォーク」利用時に必ず18歳以上の同伴者が必要(同伴者もチケットが必要)。
- 枚数限定。売り切れ次第終了。
テーマパークの新たな潮流――“効率・快適さ”の重視へ
近年、遊園地やテーマパークは「忙しくて並べない」「混雑が苦手」という現代人のライフスタイルに合わせ、“効率”“快適さ”を重視したサービスにシフトしています。「並んでこそ楽しむ時代」から、「お金で時間を買う時代」へとパーク体験の質自体が問われているのです。
富士急ハイランドの「5万円パス」は、その象徴的な施策と言えるでしょう。
一方で、「高額なパスで“格差”が生まれる」「誰もが楽しめる遊園地であるべきでは」といった課題も指摘されています。施設ができるだけ多くの人に快適な体験を提供しつつ、多様なニーズにも応えられるバランスの取り方は、今後ますます課題となっていくでしょう。
ユーザーの反応──賛否両論の声
- 肯定的反応:「何度も絶叫マシンを乗りたいので理想的」「遠方から来る客にとっては最大限効率的」「待ち時間がないのは魅力」
- 否定的反応:「高すぎて手が出せない」「特別扱いが強すぎて気が引ける」「ファミリーや学生向けではない」
しかし、この「特別な体験」を必要とする一定層のニーズは、着実に増えているようです。
今後の遊園地・テーマパークはどう変わるのか?
今回の「プレミアムパス」導入は、単なる一商品にとどまりません。運営側にとっては、年間パス・特別チケットなど、多様な価格帯のサービスを併存させることで顧客の幅を広げるだけでなく、混雑緩和や付加価値向上のカギにもなりえます。
今後はAI・デジタル技術による待機時間のコントロール、個別体験プログラムの拡充、そして“並ばず遊ぶ”を叶える付加価値型サービスの拡大が進むと考えられます。「みんなが共有する時代」から、「特別で快適な時間を選ぶ時代」へ、テーマパークの在り方は大きく様変わりしていくことでしょう。
まとめ
富士急ハイランドの「5万円パス」は、単なる高額チケットではなく、テーマパークそのものの“楽しみ方”や“価値観”を問う、エポックメイキングな取り組みとして今、熱い注目を集めています。
今後、他の遊園地やテーマパークでも、この潮流を反映した新サービスが続々登場するかもしれません。「並ばず、最高の体験を得る」そんな新時代のレジャーのかたちが、ここから始まろうとしています。