為替市場の注目は150円突破シナリオ-FOMCの利下げ判断がカギ
9月16日、外国為替市場ではドル円相場が再び注目を集めている。市場関係者の間では1ドル150円突破のシナリオが現実味を帯びてきており、今後の動向に大きな関心が寄せられている状況だ。
円安進行の背景と市場の見方
現在のドル円相場は146円台で底堅く推移しており、専門家の間では年末に向けて150円方向への上昇、さらには155円方向への展開も視野に入れた予想が出ている。この背景には、円の構造的な弱さとアメリカドルの持ち直しが大きく影響している。
特に注目されているのは、FRB(米連邦準備理事会)の金融政策の動向だ。たとえFRBが利下げを実施したとしても、すでに市場に織り込み済みであるため、必ずしもドル安には繋がらないとの見方が強まっている。また、歴史的に積み上がった円ロングの整理、つまり円売りの動きも円安を後押しする要因として挙げられている。
FOMCの利下げ判断と市場への影響
今回のFOMC(連邦公開市場委員会)では、0.25%の利下げが確実視されている状況だ。しかし、市場の関心は利下げ幅よりも、むしろ年末時点での金利見通しに向けられている。この先行きの金利政策が、ドル円相場の方向性を大きく左右する重要な要素となっている。
野村証券のチーフ為替ストラテジストは、米国での利下げ期待が一段と低下していることが、ドル買いの動きを強めている要因だと分析している。実際に、8月には心理的節目として意識されていた1ドル150円を突破する場面も見られ、約4ヶ月ぶりの水準まで円安・ドル高が進行した。
日米金融政策の格差が生む影響
2025年は「利上げの日銀、利下げの米FRB」という構図が予想されており、この日米金融政策の方向性の違いが為替相場に大きな影響を与えると見られている。日米利回り格差の動向は、今後のドル円相場を占う重要な指標となっている。
ただし、専門家の中には、24年末比で「米ドル安・円高」に振れる可能性を指摘する声もある。その根拠として、日米利回り格差の拡大が一服、または縮小が多く見られる可能性があり、これらがドル円の上昇を抑制する要因になるとの分析がある。
欧米為替市場の見通しとリスク要因
欧米為替市場では、ドル・円は下げ渋りの展開が予想されている。米FRBのハト派姿勢に対する警戒感がある一方で、円売りの動きは継続するとの見方が強い。これは、円の根本的な構造問題が解決されていないことを示している。
一方で、複数のリスクシナリオも想定されている。まず、下落リスクとして、米中貿易摩擦の再燃によるドル急落の可能性がある。現在の暫定合意が破棄され、米中が再び高関税をかけ合うような事態になれば、米国の景気減速懸念からドルが大きく下落し、円安よりもドルの下落が上回ることで、ドル安円高に進む可能性が指摘されている。
反対に、上昇リスクとしては、参議院選挙後の財政拡張による「悪い円安」の加速が懸念されている。参議院選挙の結果次第で大型の財政拡張に舵が切られた場合、日本で「悪い金利上昇による円安」というシナリオが現実味を帯びる可能性があるとの分析もある。
重要な節目と今後の注目ポイント
技術的な観点から見ると、2025年の下落局面では150円の維持が重要な焦点の一つとなっている。このラインを目指すサインとして、13週線と26週線という2つの移動平均線の攻防に注目が集まっている。
もしドル円が150円を下方ブレイクする場合は、140.00が視野に入る可能性があるが、専門家の間では140円割れの可能性は低いとの見方が一般的だ。この場合、サポートラインへ転換する可能性がある148.00レベルの攻防が重要になると予想されている。
インフレ再燃がもたらす上振れリスク
2025年のドル円相場において、最も警戒すべき要因として米国のインフレ再燃が挙げられている。これがマーケットのメインテーマに浮上する場合は、ドル円の大幅な上振れを警戒する必要がある。166.00レベルを一気に突破する場合は、170円を視野に入れた上振れリスクに直面する可能性も指摘されている。
ベースシナリオとしては、140.00~162.00のレンジでの推移が予想されているが、インフレ動向次第では、このレンジを大きく上方に突破する可能性も否定できない状況だ。
投資家が注目すべき今後の展開
今後の為替市場では、FRBの政策方針と日銀の動向、米国の経済指標、特にインフレ関連の数値に注目が集まる。また、米中貿易関係の動向や日本の政治情勢も、為替相場に影響を与える重要な要素となっている。
市場関係者の間では、短期的な変動はあるものの、円の構造的な脆弱性は続くとの見方が強い。これは、日本の低金利政策の継続と経済成長の鈍化が背景にあると分析されている。
投資家にとっては、これらの複雑に絡み合う要因を慎重に見極めながら、リスク管理を徹底した投資戦略が求められる局面が続いている。特に、150円という心理的節目を巡る攻防は、今後数ヶ月間の重要なテーマとなりそうだ。