「住宅ローン減税」が大きく変わる?中古住宅への優遇拡充と5年延長のポイントをやさしく解説
政府・与党が、住宅を購入する人を支援するための「住宅ローン減税」について、制度を5年間延長したうえで、特に中古住宅への優遇を大きく拡充する方向で最終調整に入ったことが明らかになりました。
この記事では、「何がどう変わるのか」「どんな人にメリットがあるのか」を、できるだけ分かりやすく解説します。
住宅ローン減税とは?基本をおさらい
まずは、今回のニュースの土台になる住宅ローン減税の基本ルールから整理しておきましょう。
- 対象:新築・中古住宅の取得や一定のリフォームなど(条件あり)
- 仕組み:その年の年末時点の住宅ローン残高に、決められた控除率0.7%をかけた金額を、所得税や住民税から差し引く制度
- 控除期間:原則最大13年間(現行制度)
- 借入限度額:住宅の種類(新築・中古、省エネ性能など)によって上限が決まっている
例えば、年末の住宅ローン残高が3,000万円ある場合、0.7%をかけると21万円になります。
その年の所得税や住民税から、最大でこの21万円が控除される仕組みです(実際には、支払っている税額の範囲内で控除)。
これまでも、子育て世帯などに対しては借入限度額を上乗せする特例が用意されており、2025年度もこの「上乗せ措置」は継続されています。
さらに、2026年度以降も5年間の延長方針が示され、制度は続く見込みとなっていました。
これまで冷遇されていた?中古住宅の扱い
現行制度では、中古住宅は新築に比べて、次のような点で不利な扱いになっていました。
- 控除期間:新築は最大13年に対し、中古は10年
- 借入限度額:新築より低く、例えば一部のケースでは2,000万円が上限
こうした差のため、「減税のことを考えると新築のほうが得」と感じる人も多く、中古住宅は税制面で不利とされてきました。
しかし最近は、建築費や物価の上昇で住宅価格が全体的に高騰しており、比較的価格を抑えやすい中古住宅のニーズが高まっていることが背景にあります。
今回のニュースのポイント1:中古住宅の借入上限を最大4,500万円に引き上げ
今回のニュースで最も注目されているのが、「中古住宅の借入残高の上限を引き上げる」という点です。
報道によると、政府・与党は次の方向で調整しています。
- 中古住宅の借入残高の上限:現在の最大3,000万円から、最大4,500万円まで引き上げ
上限額が上がると何が変わるのでしょうか。
例えば、年末ローン残高が4,500万円まで控除対象になると、控除額は次のように計算されます。
- 4,500万円 × 0.7% = 年間31万5,000円の控除
これは、上限が3,000万円の場合の21万円に比べて、年間で約10万円多く減税を受けられる計算になります。
実際の控除額は払っている税額や所得にも左右されますが、「中古でも大きな借入に対してしっかり減税が効く」形に近づくことになります。
今回のニュースのポイント2:中古住宅の控除期間を13年間へ延長
もうひとつの大きな変更は、中古住宅の控除期間を延長するという点です。
- 現行:中古住宅の控除期間は多くの場合10年
- 今後の方針:新築と同じ13年に延長
期間が3年伸びることで、単純に考えれば減税を受けられる年数が増えることになります。
例えば、先ほどの例のように、年あたり31万5,000円の控除を受けられるケースであれば、
- 10年の場合:最大約315万円
- 13年の場合:最大約409万5,000円
といったイメージで、控除期間の延長はトータルの負担軽減にかなり大きな影響を与えます(あくまで計算上のイメージであり、実際には所得や税額により変動します)。
これにより、これまで「新築だけが13年優遇」という状況だったところから、中古住宅も新築と同じ13年間の支援を受けられるようになる方向です。
今回のニュースのポイント3:制度自体を5年間延長へ
住宅ローン減税は、従来2025年末までが適用期限とされていました。
しかし、住宅価格や物価の上昇、家計負担の増加などを踏まえ、政府・与党は制度を5年間延長する方向で調整しています。
- 適用期限:2025年末 → 2030年末まで延長を想定
これにより、2026年以降に入居する人も、何らかの形で住宅ローン減税の恩恵を受けられる見通しとなっています。
延長の詳しい条件や金額は、今後与党の税制改正大綱などで固められていく予定です。
床面積要件の緩和も検討:狭い住宅でも利用しやすく
住宅ローン減税を受けるためには、これまで床面積の条件50㎡以上床面積要件の緩和
- 方向性:原則50㎡以上 → 40㎡台まで引き下げる案
これにより、単身者やDINKS(共働きで子どものいない世帯)など、広さより立地を重視する人も減税を利用しやすくなることが期待されています。
なぜ中古住宅の支援を手厚くするのか
今回の見直しの背景には、いくつかの大きな流れがあります。
- 住宅価格・建築コストの上昇:新築住宅の価格が上がり、若年層や子育て世帯には手が届きにくくなっている
- 中古住宅ニーズの高まり:価格を抑えつつ、立地や広さを重視して中古を選ぶ人が増えている
- ストック活用・環境配慮:既存の住宅を活用することは、環境負荷の軽減や持続可能な街づくりにもつながる
こうした状況を踏まえ、政府・与党は「新築か中古かで生じていた税制上の差を縮める」方向に舵を切り始めています。
特に、若い世代や子育て世帯が中古住宅も含めて柔軟に住まいを選べるようにすることが、少子化対策や地方活性化にもつながるとの考え方があります。
子育て支援策とのセットで進む税制見直し:「子どもNISA」にも注目
今回の住宅ローン減税の見直しとあわせて、報道では「子どもNISA」の解禁も話題になっています。
NISAは、少額投資非課税制度として、将来の資産形成を支えるための仕組みです。
子ども名義での運用を後押しする「子どもNISA」は、教育費や将来の生活資金づくりを早い段階から支援する狙いがあります。
住宅ローン減税の拡充と、子どもNISAのような資産形成支援策は、いずれも若い世代や子育て世帯の経済的な不安を軽減するという点で共通しています。
「家(住まい)」と「お金(資産形成)」の両面から、生活基盤を支えるセットの政策として位置づけられています。
今回の変更で、どんな人にメリットがありそう?
現時点の報道ベースで考えると、次のような人にとってメリットが大きくなりそうです。
- 中古マンション・中古戸建てを検討している人
→ 借入上限の引き上げと控除期間の13年化により、新築に近いレベルの減税メリットが期待できます。 - 都市部のコンパクトな住宅を検討している人
→ 床面積要件が40㎡台まで緩和されれば、これまで対象外だった物件でも減税が使える可能性があります。 - 2026年以降の入居を予定している人
→ 制度が2030年末まで延長される方向のため、あわてて2025年までに入居を急がなくても、一定の減税が受けられる見込みがあります。
一方で、制度の細かな条件や金額は今後も見直される可能性があり、「いつ買うのが絶対に得」と言い切ることはできません。
物価や金利、建築コストなどの動きも影響するため、住まい選びは総合的な判断が必要になります。
今後のスケジュールと注意点
今回の内容は、政府・与党内での最終調整段階として報じられているものであり、最終的な制度の中身は、これから決定されていきます。
- 与党の税制改正大綱で具体的な数字や条件が固まる
- その後、関連法案が国会で審議・成立して正式に制度化
そのため、「現時点では方針レベル」の部分も含まれていることに注意が必要です。
実際に住宅購入を検討している方は、最新の公表資料や金融機関・不動産会社の説明を確認しながら、具体的なシミュレーションを行うことをおすすめします。
まとめ:中古住宅も選びやすくなる時代へ
今回の住宅ローン減税の見直しは、
- 中古住宅の借入上限を最大4,500万円へ引き上げ
- 中古住宅の控除期間を新築と同じ13年間に延長
- 制度自体を5年間延長し、2030年末まで適用
- 床面積要件を40㎡台まで緩和する方向
といった大きなポイントを含んでおり、これまでよりも「中古住宅を選びやすい環境」へと近づいていく内容となっています。
新築一択ではなく、ライフスタイルや予算に合わせて、中古も含めた幅広い選択肢を検討できるようになることが期待されています。
同時に、「子どもNISA」のような資産形成支援策も動き出しており、住まいとお金の両面から暮らしを支える流れは今後も続きそうです。
住宅購入を考えている方は、制度の動向をチェックしつつ、自分たちのライフプランに合ったタイミングと物件を、じっくり検討していくことが大切になります。



