がん5年生存率、胃64%、大腸67% 膵臓・胆のうがんは依然低く

2025年11月19日、国立がん研究センターがん登録センターは、2012年から2015年にかけてがんと診断された患者の5年生存率に関する最新データを公表しました。この調査は、全国44地域の地域がん登録データをもとに、254万件以上のがん患者を対象としています。今回の発表では、部位ごとの生存率の推移や、都道府県ごとの比較も可能になったことが注目されています。

胃がん・大腸がんは6割以上、膵臓・胆のうがんは依然厳しい

今回の調査で明らかになったのは、胃がんの5年純生存率が63.5%、大腸がん(直腸・結腸)が67.2%と、多くの患者が5年後に生存していることがわかりました。一方で、肝がんや肝内胆管がんは33.7%、肺がんは35.5%と依然低く、特に膵臓がんや胆のう・胆管がんは、診断から1年後の生存率が男性で39.0%、女性で35.7%と、非常に厳しい状況が続いています。

  • 胃がん:63.5%
  • 大腸がん:67.2%
  • 肝・肝内胆管がん:33.7%
  • 肺がん:35.5%
  • 膵臓がん:1年生存率 男性39.0%、女性35.7%
  • 胆のう・胆管がん:1年生存率 男性55.0%、女性45.4%

膵臓がんや胆のうがんは、早期発見が難しく、治療法も限られているため、生存率の向上が課題となっています。一方で、胃がんや大腸がんは、検診の普及や治療技術の進歩により、生存率が着実に向上しています。

都道府県ごとの生存率比較が可能に

今回の調査では、集計対象地域が大幅に拡大され、44地域に及んでいます。これにより、都道府県ごとの生存率の違いを比較できるようになりました。地域ごとの医療体制や検診受診率の違いが、生存率に影響している可能性があり、今後の地域がん対策の参考になります。

過去30年で多くの部位で生存率が向上

1993年からの生存率の推移をみると、多くのがん部位で生存率が着実に向上しています。これは、早期発見の普及や治療技術の進歩、がん登録制度の整備などが背景にあります。特に、胃がんや大腸がん、女性乳房がんなどでは、限局がんで診断された場合の5年生存率が90%以上に達しており、早期発見・早期治療の重要性が改めて示されています。

  • 胃がん(限局):92.4%
  • 大腸がん(限局):92.3%
  • 女性乳房がん(限局):98.4%
  • 子宮がん(限局):94.2%
  • 前立腺がん(限局):105.6%

ただし、一部の部位では90年代と比べて生存率が低下している例もあり、今後の対策が求められています。

小児がんの生存率も高いが、部位ごとに差

小児(15歳未満)のがん全体の5年純生存率は82.3%と高い水準を維持しています。特に、胚細胞性腫瘍や網膜芽腫などでは90%以上と非常に高い生存率ですが、中枢神経系や頭蓋内・脊髄腫瘍では57.1%と低く、部位ごとの違いが顕著です。

がん全体の5年相対生存率は68.9%

最新の統計では、がんと診断された人全体の5年相対生存率は68.9%、10年相対生存率は59.4%に達しています。これは、10年前にがんと診断された人のうち、約6割が生存していることを意味します。生存率の向上は、治療成績の向上や早期発見の普及によるものです。

今後の課題と展望

今回の調査結果は、がん対策の進展を示す一方で、膵臓がんや胆のうがんなど、依然として生存率が低い部位への対策が急務であることを示しています。また、地域ごとの差や、小児がんの部位ごとの差にも注目が必要です。今後は、さらなる早期発見・早期治療の普及、治療法の開発、地域医療の充実が求められます。

がんは誰にでも起こりうる病気ですが、早期発見と適切な治療により、多くの人が長く元気に暮らせる時代になっています。定期的な検診や、がんに関する正しい知識を持つことが、自分や家族を守る第一歩です。

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