御殿場プレミアム・アウトレットで「空飛ぶクルマ」デモ飛行が実現

2025年10月30日、静岡県御殿場市に位置する御殿場プレミアム・アウトレットで「空飛ぶクルマ(eVTOL)」の実機によるデモフライトが初めて実施されました。このイベントは、日本の商業施設で初となる空飛ぶクルマの飛行として注目を集めており、観光や買い物の新たな移動体験が期待されています。

デモフライトの概要と実施背景

このデモフライトは、三菱地所、三菱地所・サイモン、そして空飛ぶクルマのサービス展開を推進するAirXが共同で実施しました。会場となったのは、2025年5月に竣工した「御殿場プレミアム・アウトレット バーティポート」。“バーティポート”とは、eVTOL(電動垂直離着陸機)専用の発着場を指し、同施設のバーティポートは東日本初の本格整備となります。

この場所は国土交通省が2023年に策定した「バーティポート整備指針」に基づき整備されており、国内でのeVTOL導入に向けた社会実装の重要な実証プロジェクトの一環でもあります。

空飛ぶクルマ(eVTOL)の特徴とメリット

  • 完全電動:本イベントで使用された「EH216-S」は中国のEHang社が設計・製造した完全電動式の機体です。騒音が少なく、排出ガスもゼロという環境配慮型の乗り物です。
  • 自動運転・高い安全性:今回のフライトでは、プログラムによる自動運転での飛行が実現しており、将来的な運用でも高度な安全管理を目指しています。
  • 都市部の渋滞を回避:従来の地上交通に比べ、eVTOLは渋滞に左右されずに短時間で移動できるのが最大の特長です。たとえば車で1時間かかるルートも、十数分にまで短縮できる可能性があります。
  • 音の静かさと揺れの少なさ:関係者によると、従来のヘリコプターよりも振動や騒音が非常に少ないのが体験的にも実証されています。

当日のデモフライトの模様

デモフライトは御殿場プレミアム・アウトレットの駐車場中央で行われました。機体にはパイロットではなく、検査員が乗り込み、一周240メートルのコースを周回する形式で実施されました。

  • 飛行したEH216-Sは、時速36km、高度40mで飛行。
  • 最大航続距離は30km。実用化時は時速130kmまで対応可能。
  • 今回は安全性を確認する目的もあり、控えめな速度でのデモンストレーションとなりました。

デモ当日は、見学会も同時開催され、離陸や着陸、静かな飛行の様子を一般来場者やメディア関係者が熱心に見守っていました。

バーティポートの目的と今後の展望

御殿場プレミアム・アウトレットに設置されたバーティポートは、都市部と観光地の快適なアクセス、新たな観光体験の提供、そして災害時の迅速な人員輸送など多様な利活用が想定されています。

  • 買い物利用者向け:都心から御殿場アウトレットまでの、従来なら悩まされる渋滞を気にせず移動できる未来のショッピング体験を提起しています。
  • 観光利用:富士山や近隣観光地への遊覧飛行も将来的に検討されており、新しい観光価値の創出が期待されています。
  • 社会実装に向けた課題と挑戦:バーティポートの設置・運用指針の策定、運航ルールの整備、騒音・安全面での地元住民への配慮といった課題を、一つ一つ段階的に解決していくことが今後の普及定着には不可欠です。

スマートフォンで呼べる新時代の移動体験へ

空飛ぶクルマの運行については、「スマホで呼べるオンデマンド・エアモビリティ」を構想する動きも進んでいます。今後、モビリティサービスの多様化や、市民の日常的な移動手段としての普及が本格化すれば、ドアtoドアのシームレスな移動がスマートフォン一つで実現する日も遠くありません。Japan Mobility Showでもこうした将来像への期待が盛り上がっており、御殿場アウトレットの事例はその社会実装の実証となり得るものです。

来場者・地域へのインパクト

  • 現地でのデモフライトには、多くのメディアやアウトレット利用者が集まりました。これまでの生活圏にはなかった「空を使った移動」を実際に体験する機会として地域住民からも高い関心が示されました。
  • アウトレット運営サイドにとっても、新たな集客力や持続可能な移動手段提供という観点で大きな意義があり、今後も定期イベント化・実用化に向けた取り組みが期待されています。

今後の展望と課題

空飛ぶクルマの社会実装には、乗車体験の普及、安全基準や運航規定の制定、利用料金の低減などまだ多くの課題が残されています。しかし、今回のような大規模集客施設での実証飛行が成功したことは、民間企業や行政機関による協調推進の道を切り拓く画期的な一歩となりました。

将来的には、御殿場プレミアム・アウトレットを利用した空飛ぶクルマでの都市連携、観光活性化、防災ネットワークへの活用など、その可能性は多岐に広がります。日本国内のみならず、世界の先進事例としても注目されていくことでしょう。

まとめ:モビリティ革命の「現場」から

100年に一度といわれる大きなモビリティ革命の「最前線」として、御殿場プレミアム・アウトレットで行われた空飛ぶクルマのデモフライト。実運用に向けた本格的な社会実装の道筋を示すイベントとなりました。

移動時間のストレスを減らし、環境への負荷も抑え、誰もが気軽に「空」を使って買い物や観光に出かけられる新時代。その実現に向け、日本ならではの安全文化・技術力を活かした丁寧な社会実験が進行しています。

参考元