米連邦準備理事会(FRB)、政策金利0.25%引き下げを決定 バランスシート縮小は12月停止へ

アメリカの中央銀行である連邦準備理事会(FRB)は、2025年10月28日・29日に開催された連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利(フェデラルファンド金利)を市場予想通り0.25%(25ベーシスポイント)引き下げし、3.75~4.00%に設定しました。9月に続く2回目の利下げで、FRBの金融緩和マインドが明確になりましたが、一方で「12月の追加利下げは既定路線ではない」とパウエル議長が発言し、先行きには慎重な姿勢を見せています。

会合の内容と市場の反応

FOMCの決定は10対2の賛成多数で可決されましたが、ミラン理事は0.5%の利下げを、シュミッド・カンザスシティ連銀総裁は政策据え置きをそれぞれ主張し、反対票を投じました。賛成多数となったとはいえ、意見の相違が浮き彫りになった形です。

FRBはまた、12月1日からバランスシート(B/S、資産・負債)の縮小を停止することも発表しました。これは、金融市場への流動性供給をより積極的に行うサインと受け止められています。

決定直後、アメリカ長期金利(10年債利回り)は4%台を回復し、2年債利回りも上昇しました。外国為替市場ではドル買いが強まり、ドル/円は151円87銭から152円48銭まで上昇、ユーロ/ドルやポンド/ドルもドル高方向に動きました。

パウエル議長の記者会見で注目の「12月利下げ」発言

パウエル議長は記者会見で、「経済活動は緩やかなペースで拡大しつつある」「雇用の伸びは鈍化している」とコメント。しかし、インフレが依然として高止まりしている点を重視し、「12月の追加利下げは既定路線ではない」と強調しました。この発言は、市場が期待していた年内3回目の利下げ(12月)が自動的に実施されるわけではないことを明言したもので、米株式市場は一時ネガティブに反応。NYダウ平均株価は一時200ドル安をつける場面もありました。

事実、9月に続き、10月、そして12月にも追加利下げが実施されるという市場予想が広がっていましたが、パウエル議長の慎重な発言によって、今後の金融政策の不確実性が一気に高まった格好です。

雇用・インフレの現状と今後の見通し

今回のFOMC声明では、雇用の伸びが鈍化していることが明記されているものの、基本的な経済見通しには大きな変化はなく、リスクバランスも従来通りと判断されました。FRBの基本的なスタンスは、雇用の下振れリスクを回避しつつも、インフレへの警戒感を強めるという「リスク管理」の姿勢です。

2025年9月の利下げを「リスク管理のための利下げ」と位置付けたFRBは、今回の利下げも同様の観点から判断したとみられます。ただし、年内3回の利下げで雇用リスクは「相応に緩和された」とされ、今後の追加利下げには慎重な姿勢を見せています。

今後の注目点は、雇用市場や賃金の動向、加えてインフレ率の推移です。FRBは、物価が安定するまで引き続き警戒を緩めない方針ですが、今後の経済指標次第では追加利下げの可能性も完全に否定できない、というのが現状です。

米経済指標とFX市場への影響

米国の政策金利動向は、世界的な金融市場に大きな影響を与えます。今回の利下げは米ドルの上昇につながり、ドル/円は一時153円台を目指す動きも見られました。一方で、利下げペースが将来的に鈍化する見通しも出てきたことで、ドル高の勢いが持続するかどうかは不透明と言えるでしょう。

ドル買い優勢の中で、日本の株式市場やアジア各国の通貨にも波乱が広がる可能性があります。特に円安傾向が続けば、日本の輸入物価の上昇が消費や企業業績に影響を与える懸念も生まれます。

今後の注目ポイントは、アメリカの雇用統計や消費者物価指数(CPI)、パウエル議長の発言、そして12月のFOMCです。

投資家に向けた留意点

  • 米国政策金利は今回0.25%引き下げられ、3.75~4.00%に設定されました。
  • バランスシート縮小は12月1日から停止する方針です。
  • パウエル議長は「12月の追加利下げは既定路線ではない」と慎重姿勢を示しました。
  • 米株式市場や為替市場には大きなボラティリティ(変動)が発生しています。
  • 今後の追加利下げは雇用・賃金・インフレ指標を注視して判断される見通しです。

以上の背景から、FRBの今後の金融政策は依然として「流動的」といえます。投資家や企業は、今後の米国経済指標やパウエル議長の発言を引き続き注目する必要があります。

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