ユーロ/円が過去最安値を記録──円安の進行が止まらず

2025年10月7日、為替市場ではユーロ/円相場が過去最安値(ユーロ高・円安値)を更新し、市場参加者や経済界に大きな注目を集めています。複数の金融機関や中央銀行が発表した為替レートによると、ユーロ/円は177円台前半まで円安が加速しました。この水準は、これまでの最高値を更新する歴史的な水準です。円安進行の背景には、世界的な金融環境の変化や、日本国内の政策金利水準の違い、そして「キャリートレード」の動きが指摘されています。

ユーロ/円相場 177円台──最新の市場データ

  • 2025年10月7日のユーロ/円仲値は177.60円(TTSベース)に設定され、これはこれまでに記録された最高水準の一つとなりました。取引レンジでは一時177円をやや下回る場面もみられましたが、全体としてはユーロ高・円安基調が根強く続いています。
  • 日本銀行や主要メガバンクなどが発表したデータでも、この水準が「異例」であることが再三強調されています。
  • 2025年に入ってから、ユーロ/円はほぼ一貫して上昇トレンドをたどり、夏以降は特に円安が加速。半年でおよそ20円近く円安が進行しています。

円安の主因は「キャリートレード」──BofA証券・山田氏の解説

キャリートレードとは、金利の低い通貨(この場合は日本円)で資金を調達し、金利が高い通貨(ユーロなど)で運用する投資手法です。BofA(バンク・オブ・アメリカ)証券の山田氏によれば、円の著しい安値更新の背後にはこのキャリートレードが非常に大きな影響を与えていると指摘されました。

  • 「日本銀行が依然として極めて低い金利政策を維持している一方で、欧州中央銀行(ECB)は物価高対応で比較的高い金利水準を継続している。結果として、日本円で安価に資金調達した投資家が、ユーロ建て資産へ活発に資金を移す動き(キャリートレード)が拡大している」と解説しました。
  • これに伴い、ヘッジファンドなどプロ投資家だけでなく、個人投資家からもユーロ/円の買い(円売り)が加速。一部では予想外の速さで円安トレンドが進行する「負の連鎖」も生じています。

リスク回避の動きは限定的──ユーロ売り・円買い拡大の見通し

一方で、急激な相場変動時にしばしば見られるリスク回避の「ユーロ売り・円買い」については、フィスコ等の複数のアナリストが「ただちに拡大する可能性は低い」との見解を示しています。

  • 通常、地政学的リスクや市場の不安が高まる場面では、相対的に低リスク資産とされる「円買い」の動きが強まりやすい傾向があります。しかし現在は米欧の金利差、構造的な円キャリートレードの拡大によって、リスクオフ要因が働きづらい相場になっているとのことです。
  • フィスコの市場解説では「投機的な円買いが急増するには、日銀の為替介入やグローバル経済に極端なショックが生じた場合など、明確な契機が必要」とも指摘されています。

円とユーロの金利差、為替市場の力学

2022年以降、世界的なインフレ高進により、主要先進国は次々と金融引き締め政策に転換しました。一方、日本銀行は金融政策の正常化に慎重な姿勢を維持し、2025年現在も実質ゼロ金利政策が続いています。このため、ユーロと円の政策金利差は歴史的に拡大し、資金の流れが一方向に偏る原動力となっています。

  • 例えば欧州中央銀行(ECB)は基準金利を4%台に維持中(2025年10月時点)、一方で日銀の政策金利はほぼゼロ水準を継続。
  • 金利差に着目する投資家にとって、円で借りてユーロ建てで運用する手法は引き続き魅力的です。
  • この構図が、為替市場の実需・投機の双方からユーロ/円買い(円売り)圧力を支えています。

足元の市場参加者の声と今後の想定シナリオ

為替市場の実務担当者や金融関係者からは、『これほど円安・ユーロ高が進むのは想定外だった』『企業の海外取引コストが想定を上回り、予算再編やリスクヘッジ体制の強化が相次いでいる』といったコメントも相次いでいます。中には、ユーロ/円が年内にさらに180円台へ上抜けする可能性を警戒する声もみられます。

  • 一方、個人による外国為替証拠金取引(FX)などの投資マネー流入も急増しており、取引所の売買高も昨年比で大幅に拡大しています。
  • ただし、『過度な円安と円キャリーポジションの偏りは、ひとたびショックが起きた際には逆回転・急変動リスクを内包する』として、冷静な資金管理の重要性を訴えるプロも多い状況です。

政府・日銀の対応と今後の注目点

こうした円安の流れに対し、日本政府や日銀は市場動向を「極めて重大な関心を持って注視」としています。過去には、急激な円安局面で口先介入や市場への直接介入(為替介入)が行われた事例もあり、市場でも今後の政策対応への関心が高まっています。

  • 市場関係者の間では、日銀が政策金利の変更あるいは直接の市場介入に踏み切るかどうかが大きな注目ポイントです。
  • 一方で、現状では政府・日銀とも「状況を注視する」との発表にとどまり、具体的なアクションは見られていません。
  • 今後も為替市場を取り巻く国際的な金融環境や、大口投資家の動きには一層の注意が求められます。

参考資料および為替市況データ利用上の注意

なお、本文中の為替市況データは、日本銀行および主要銀行が公開した2025年10月7日時点の集計値を主に参照しています。為替相場は急速に変動する場合があるため、利用時は必ず最新情報の確認と自己責任での判断が必要です。

まとめ:歴史的円安局面で正しい備えを

ユーロ/円が史上最安値を更新した2025年10月7日、円安進行の背景にある金利差やキャリートレード、そして市場の複雑な力学が改めて注目されています。先行き不透明な為替市場で、幅広いリスク認識と慎重な資金管理の重要性が一段と高まっています。今後も中央銀行や政府の政策、国際経済動向を注意深く見守る必要があるでしょう。

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