エーザイの新認知症治療薬「レカネマブ」、2025年11月から薬価15%引き下げへ
アルツハイマー病の進行を遅らせる新薬「レカネマブ」(商品名レケンビ)が、2025年11月から薬価を約15%引き下げられることが厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)で決まりました。この値下げで、年間治療費が約45万円ほど減少すると見込まれており、患者負担軽減や医療費適正化が期待されています。
レカネマブとは?
レカネマブは、エーザイ株式会社と米国バイオジェン社が共同開発したアルツハイマー病(AD)の治療薬です。2023年9月に日本で厚生労働省の承認を取得して以降、早期アルツハイマー病患者の認知機能の低下を抑える効果で注目を浴びています。
この薬は、脳内に異常蓄積されるアミロイドβタンパク質に直接作用し、その蓄積を減少させることで病気の進行を遅らせるとされています。特に、まだ神経細胞が破壊されていない早期段階で使用することで、認知機能の維持に効果が認められました。
効果と臨床試験の結果
レカネマブの有効性は50~90歳の軽度認知障害(MCI)や軽度アルツハイマー病患者約1,800人を対象に行われた国際共同第III相臨床試験「Clarity AD試験」で示されました。この試験では2週間に1回の点滴投与を18ヶ月間続け、認知機能の進行を偽薬群と比較。結果、レカネマブ群では認知機能低下が約27%抑制されており、臨床的認知症尺度(CDR-SB)による症状進行は7.5ヶ月遅延しました。また、日常生活動作(ADCS MCI-ADL)における機能低下も約37%抑制しています。
薬価引き下げの背景
今回の薬価引き下げは、費用対効果評価を踏まえたもので、医療費の抑制と患者負担軽減の両立を目的としています。従来、高額な認知症治療薬に対しては社会的な費用負担の増加が懸念されてきましたが、レカネマブはその効果が一定程度実証された一方で、価格面での調整が求められてきました。
中医協の決定により、2025年11月以降、薬価は現行から15%程度引き下げられ、年間必要治療費は約45万円程度減る見込みです。患者の経済的負担を軽減すると同時に、より多くの患者がアクセスしやすくなることが期待されています。
関連薬の動向と業界の注目点
同じく費用対効果の評価により評価された他の薬剤では、ウゴービがマイナス7.3~8.3%の薬価改定を受けています。製薬業界では、価格と効果のバランスを考慮した新薬の薬価設定や開発体制の強化が急務となっており、ネクセラが肥満症治療薬の自社開発を進める動きも注目されています。
レカネマブの副作用と今後の展望
レカネマブは効果が期待される一方で、一部で脳浮腫や頭痛、出血リスクの上昇などの副作用報告もあります。治療開始前の慎重な適応判断と継続的な安全管理が重要です。また、神経細胞がすでに破壊された段階では修復効果は期待できないため、早期診断と早期治療の推進が課題となっています。
今後は、レカネマブの臨床効果をさらに実臨床で検証しつつ、薬価や保険適用の面で患者の負担軽減と医療資源の効率的運用を両立させる動きが注視されます。
まとめ
- レカネマブはアルツハイマー病の進行を抑える新薬で、早期患者に効果がある。
- 2025年11月から薬価が約15%引き下げられ、年間約45万円の治療費軽減が見込まれる。
- 費用対効果評価を踏まえた価格調整が社会負担の適正化に貢献する。
- 副作用にも注意が必要で、早期治療が効果的。
- 製薬業界全体でも費用対効果を重視した新薬開発が加速している。
今後もアルツハイマー病患者の生活の質向上と持続可能な医療の実現に向けて、レカネマブの適正利用と適切な薬価設定が重要となるでしょう。