江別谷藤病院における給与未払い問題が地域医療に投げかける影響

2025年8月25日夜、北海道江別市に位置する「江別谷藤病院」で、医師や職員への給与が2カ月連続で未払いになっている事実が明らかになりました。特にこの病院は、地域の夜間・休日当番病院として、内科・外科を中心に急患対応など重要な役割を担っており、その経営的な問題は地域医療に大きな波紋を広げています。

給与未払いの実態と背景

江別谷藤病院では、非常勤医師を除くほぼすべての医師・職員に対し、給与が2カ月連続で支払われていない状態です。給与未払いの理由については、運営法人の理事長である谷藤方俊氏が「経営的な問題」と説明しつつも、具体的な詳細は明かされていません。同法人が運営する「釧路谷藤病院」でも同様の問題が確認されており、法人自体の財務的困窮が背景にあるとみられます。

理事長は「地域医療の崩壊を防ぐためにも、病院の稼働は続けなければならない」とし、遅配分も含めてできる限り早期に全額を職員へ支給する努力を続けるとコメントしています。また、法人全体の事業再建に向けて関係各所と協議を重ねているとのことです。

江別谷藤病院の役割と地域医療への影響

  • 夜間・休日当番病院としての重要性:江別谷藤病院は、江別市を含む周辺地域にとって夜間や休日の医療を担う基幹病院の一つです。救急・急患対応はもちろん、内科・外科の診療も担っており、地域医療体制の一翼を担っています。
  • 現場の混乱と医療サービス低下の懸念:給与が支払われないことにより、医師や看護師、事務職員のモチベーション低下や、離職を招く可能性が指摘されます。現実に人手不足が進行すれば、患者受け入れ体制や救急医療サービスの質が急激に落ちる危険性があります。
  • 周辺医療機関へのしわ寄せ:江別市立病院や他の民間病院も、既に救急医療の受け入れ件数が増加していることが議会資料等からも確認できます。江別谷藤病院が十分な体制を維持できなくなる事態が長期化すれば、他院への患者集中や受け入れ困難を招き、最終的には市民の安全や満足度低下につながる恐れが強まります。

全国的な医療経営危機と地域病院の現状

近年、少子高齢化や医師不足、診療報酬制度の変更など医療経営を取り巻く環境は悪化しており、病院経営の困難は国レベルで深刻な社会問題になっています。江別市でも公立病院が経営強化プランを策定し、診療体制や経営形態の見直し、再建への努力を繰り返している状況です。

とりわけ都市近郊や地方の中小病院は、小規模な経営基盤や急な人員流出、突然の患者数増減による経営の不安定化を抱えやすいといわれています。江別谷藤病院の給与未払い問題も、こうした構造的な医療経営の脆弱さが顕在化した一例といえるでしょう。

院内と市民生活への波及

  • 医療従事者への影響:未払いの状態が続けば、医療従事者の生活が直撃を受け、精神的ストレスや将来への不安が拡大します。優秀な人材の転職や流出が懸念されます。
  • 市民の不安:「いざ」という時に頼れる病院が機能しなくなるのではないかという不安が市民の間で急速に高まっています。夜間や休日の救急患者を受け入れる体制の継続が今後どこまで維持できるのか、地域全体が注視しています。
  • 情報開示と説明責任:運営法人や行政は、説明責任を果たすべく、市民や患者、従業員への具体的な今後の方向性や対応策について、丁寧な情報開示が求められている状況です。

再建・解決への動き

病院側は再建策として、事業再建や経営基盤強化へ向けて関係団体との協議を積極的に推進していると説明。早期に遅配解消をめざし、今後も診療体制維持に全力を尽くすとの姿勢を示しています。ただし、具体策や時期などは現時点で明らかにされていません。

また、江別市全体としてもこの問題を受け、他院との連携強化や必要な支援策の検討など、市民の命と健康を守り抜くための取り組みが急務となっています。

まとめ・今後の展望

給与未払い問題は、単なる経営の失敗だけでなく「地域医療崩壊」とも直結する重大な社会課題です。
江別谷藤病院の動向は地域医療の今後を占う試金石となるでしょう。運営法人と行政、そして地域医療関係者が連携して課題解決に取り組み、持続可能な医療体制を早期に構築できるかが注目されます。今後も、市民生活や職員への影響について、適切な情報発信と誠実な対応が強く求められていくことは間違いありません。

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