日本ブランドの人型ロボット「cinnamon 1」が世界初公開 AIと身ぶりで自律行動を実現
ロボット開発企業のドーナッツロボティクスが1月21日、「cinnamon 1(シナモン ワン)」という新型の人型ロボットを世界初公開しました。日本ブランドとして展開されるこのロボットは、建築現場や工場、接客業など、様々な業界での活躍が期待されています。今回の発表には、これまでにない革新的な技術が複数搭載されており、ロボットと人間のコミュニケーション方法に大きな変化をもたらそうとしています。
身長169cm、高性能センサーを備えた最新ロボット
cinnamon 1の基本スペックは、身長169cm、体重約70kgの二足歩行型ロボットです。周囲の情報を把握するため、4基のカメラとLiDARを搭載しており、マイクとスピーカーを備えているため、音声によるやりとりも可能です。連続駆動時間は3〜4時間程度で、屋外での作業にも対応する耐久性を持っています。
このロボットは、ドーナッツロボティクスが提供する量産型のヒューマノイドで、既に量産体制が整っているとのことです。2026年内に、工場内や建築現場での作業代替を進める予定で、まずは約50体程度の導入を目指しています。
二足歩行とダンスも可能 デモンストレーションで実力を披露
発表時のデモンストレーションでは、二足歩行やダンス、音声によるやりとりなどが披露されました。ロボットは、カメラで認識した情報を踏まえながら会話する姿も見せています。
ただし、現段階では完璧とは言えない部分もあります。デモ動作のほとんどは遠隔操作で実施され、会話やカメラ映像の処理は生成AIで実行されました。やりとりの一部では、cinnamon 1の文脈に沿わない発言や応答のラグによるすれ違いが生じ、ドーナッツロボティクスのCEO小野泰助氏にツッコまれる場面もあったとのことです。
OpenAIやGoogleのAIモデルを活用した独自の処理システム
cinnamon 1に搭載されている生成AIは、LLMと視覚・言語情報を統合的に処理するVLMを組み合わせた構成になっています。LLMには米OpenAIや米Googleのモデルを利用し、VLMはオープンなAIモデルにドーナッツロボティクスが事後学習したモデルを使用しています。
今後、同社ではロボットの自律的な動作を制御するAIモデルであるVLA(Vision-Language-Action)を2028年をめどに自社開発することを目指しています。このVLAは、ヒューマノイドが自律的に行動するために必要なAIです。
話さなくてもロボットに指示 「サイレント ジェスチャー コントロール」
今回の発表で注目すべき新技術が、「サイレント ジェスチャー コントロール」です。これは「話さなくても、想いが届く」というコンセプトから開発された特許技術で、声を発することなく手振りや指の動きでロボットに指示を伝えることができます。
この技術の利点は多くあります。空港や建築現場、工場など周囲が騒がしい場所、あるいは子供が静かに眠っているご家庭など、音声によるロボット操作ができない場面で大活躍すると期待されています。さらに、世界で約4.3億人いるとされている難聴者にも優しい技術として、ハンディキャップがある方へのサポートにも貢献できます。
中国のOEM技術を活用、将来的には国内生産を目指す
cinnamon 1は「日本ブランド」として展開されていますが、現在は中国のロボット開発企業からOEM提供を受けた機体に、ドーナッツロボティクスの独自AIを搭載している形になっています。OEM先の企業名は明言されていません。
しかし、ドーナッツロボティクスは長期的な国産化を視野に入れています。センサー類を国内品に代替できるか検討するなど、機体の国内生産も視野に入れているとのことです。具体的には、中国企業の協力のもと、ドーナッツロボティクスが人型ロボットの部品を開発・生産し、日本国内の自社工場で組み立てる体制を目指しています。
建築業界との連携で実証実験を加速
ドーナッツロボティクスは、昨年10月に株式会社エムビーエス(山口県)と資本業務提携を結んでいます。この提携により、建築業界などでの導入や、国内VLAデータセンターの設立を目指しています。
2026年内には、工場への試験導入などが並行して進められ、実証実験が本格化する予定です。騒音で声が届きにくい工事現場で、人間の代わりに作業することなどが想定されています。
VLAの自社開発が成功のカギ
今後のドーナッツロボティクスの方針について、2028年をめどにVLAの自社開発を完成させることが重要になります。26年中に約50体程度のcinnamon 1を導入し、VLAの開発に必要なロボットの動作データを集める施設を設立する予定です。このデータ収集が進めば、より自律的で精密な動作が可能になるロボットの実現に近づくことになります。
ドーナッツロボティクスは2014年に創業し、2017年に羽田空港ロボット実験プロジェクトに採択されるなど、長年ロボット開発に取り組んできた企業です。2024年には、イノベーションを推進するスタートアップを表彰する「EY Innovative Startup 2024」のロボティクス部門を受賞するなど、業界からの評価も高まっています。
cinnamon 1の発表は、日本の人型ロボット技術が新たな段階に突入したことを示しています。AIと身ぶりによる直感的なコミュニケーション、自律的な行動制御、そして国産化への道筋が明確になったことで、ロボットの社会実装が加速する時代が到来しようとしています。建築現場や工場での労働不足解決、高齢化社会への対応など、日本が抱える課題解決の一つの手段として、cinnamon 1の活躍に期待が集まっています。



