ドル円、155円台前半へ急伸――財政拡張への懸念が円安を後押し
現在の為替動向とその背景
2025年11月17日夜から翌18日にかけて、ドル円は155円台前半まで上昇しました。これは、およそ9か月半ぶりの円安水準です。背景には、日本の財政拡張策への懸念が強まり、円が売られる流れが加速したことがあります。
昨今の為替市場では、日米の金利差拡大が引き続き円安の主要因として意識されています。米国の強い経済指標やFRBの慎重な利下げ姿勢に加え、日本では日銀が大幅な利上げに慎重であるため、円は売られやすい状況が続いています。
財政拡張への懸念が円安加速の要因に
- 財政拡張政策への市場懸念が円売りを加速。新政権は経済財政諮問会議に金融緩和を支持してきた有識者を加え、市場は円安容認姿勢を材料視しています。
- その結果、「ドル買い/円売り」の流れが強まっていると見られます。
さらに、新NISA導入後の円売りも予想ほど家計レベルで進まなかったことが、円安圧力の一因となっています。
首相と日銀総裁の会談への市場の警戒感
急激な円安進行を受けて、首相と日銀総裁の会談が行われるとの報道も散見されています。市場では、この会談をきっかけに政府・日銀による為替介入の可能性が高まるとの警戒感も漂っています。
- 過去にも円安水準が節目となった場合、当局による為替介入が行われてきました。
- 今回も155円突破が引き金となり、投機的な動きや過度な円安に歯止めをかける意図があると見られます。
- 特に日銀は12月会合での利上げ示唆の可能性が意識されており、為替政策と金融政策の連動が注目されています。
アベノミクス以降の円安容認姿勢と現在の状況
「異例の円安容認」と言われたアベノミクス時代、日銀は大規模な量的緩和を実施し、円安を容認する姿勢を取っていました。現状でも、新政権はその流れを一部踏襲しており、日本経済の活性化と財政拡大路線が市場に円売り材料を供給しています。
加えて、米国の雇用統計や経済指標も強く、FRBの12月利下げへの期待が後退し、ドル高・円安基調を強めています。
市場参加者や投資家への影響
- 輸入企業:円安が進むことで、調達コスト増が企業収益を圧迫。
- 輸出企業:円安による収益押し上げ効果。ただし急激過ぎる為替変動は経営計画に不透明感を与える。
- 家計・消費者:輸入物価上昇による物価全体の上昇圧力。価格転嫁が進むことで実質的な家計負担増につながる。
- 投資家・FXトレーダー:155円台はテクニカル面でも心理的な節目。利益確定売りや“だまし”への警戒感が強く、ボラティリティの高まりが予想される。
今後の為替相場の見通し
為替相場は当面、米国金融政策の動向と日本の財政運営、日銀のスタンス次第で方向感が定まらない展開が続くと見られます。日米金利差が大きな要因である一方、日本側の政策転換や当局の介入があれば、急展開も十分ありえます。
- 為替介入や日銀の利上げ決定が現実化した場合、円急騰の可能性も。
- 逆に、米国経済指標が予想を上回るなどドル高材料が増えれば、円安の深刻化も考えられます。
まとめ:柔軟な資産形成とリスク管理が重要に
2025年11月の為替市場は、財政政策、日米金融政策、経済指標の変化によって大きく揺れ動く状況です。円安基調が今後も継続する可能性がありますが、政府・日銀の対応や世界経済の変化次第では反転も起こり得ます。各種リスクに備えた柔軟な資産形成と動向把握が重要です。
関連データ:2025年のドル円推移(月中平均)
- 1月:156.86円
- 2月:151.96円
- 3月:149.27円
- 4月:144.27円
- 5月:144.92円
- 6月:144.42円
- 7月:146.83円
- 8月:147.87円
- 9月:148.07円
- 10月:151.24円
- 11月:154〜155円台
今後注目すべきポイント
- 日銀・政府の為替介入の有無
- 金融政策会合でのスタンス転換
- 米国の主要経済指標とFRBの政策方針
- 政府の財政運営方針
- 輸入物価の急上昇による国内物価動向
- 市場参加者の心理的節目としての155円台の攻防



