ディスコ、2025年度第2四半期決算発表──AI需要好調も円高が収益圧迫、純利益は減少
注目のディスコ決算──半導体精密加工装置のリーディングカンパニー
株式会社ディスコ(証券コード:6146)は、2025年10月29日に2025年度第2四半期(4~9月)の決算を発表しました。ディスコは半導体ウエハー切断・研磨などを手掛ける精密加工装置メーカーとして、世界的な半導体市場拡大のなか常に注目を集める存在です。
今回の決算内容は、成長を続けるAI関連需要の恩恵を受けつつも、急速な円高やコスト増が収益の伸びを押し下げた形となりました。各種報道や公式開示をもとに詳細をわかりやすく解説します。
2025年4~12月期の業績見通し──純利益は前年同期比5.8%減の803億円
ディスコの2025年4~12月期における連結純利益は803億円になりそうだと見通されています。これは前年同期と比較して5.8%減となる水準です。AIやデータセンター関連の需要が引き続き好調な一方で、為替動向(円高)や一部コスト増が依然として収益への重しとなりました。
- 純利益見通し:803億円(前年同期比5.8%減)[ニュース内容1]
- 売上高や営業利益は、半導体関連需要の強さに支えられ引き続き高い水準
- 為替の動向(円高傾向)が海外売上全体に対して減収要因となった
半導体製造装置分野はグローバルな競争環境下にあり、為替変動の影響が業績にいち早く現れやすい特徴があります。急激な円高は、海外売上高の円換算額が目減りするほか、企業競争力低下を招くこともあります。
2025年4~9月期の実績──営業利益は3.8%増、経常利益もアナリスト予想上回る
実際の2025年4~9月期連結決算では、営業利益が788億円と前年同期比3.8%増となりました。AIチップ向けやハイエンド・ロジック用途の研削・切断装置などが堅調に推移し、多くのアナリスト予想を上回る決算内容でした。
- 営業利益:788億円(前年同期比3.8%増)
- 中間経常利益:約794億6,500万円(アナリスト予想超過)[ニュース内容2]
- 主力装置の販売堅調、アジア圏の大口顧客からの受注も堅調
2024年度から引き続きAI半導体需要の高まりが装置市況全体を押し上げており、「半導体切断・研削」に関連する自社製品が旺盛な引き合いを維持しました。これにより営業利益・経常利益とも堅調推移となっています。
一方で、人的コストおよび研究開発投資の増加もみられました。これは次世代製品開発や生産体制強化など、将来成長に向けた先行投資の一環と説明されています。
10~12月期は純利益23%減、円高が最大の逆風
2025年10~12月単独で見ると、純利益が前年同期比23%減という厳しい数字となりました[ニュース内容3]。これは主に円高進行による海外売上高の減少が直撃したためです。AI関連需要は堅調で、受注推移自体は維持できたものの、為替換算による売上・利益減がインパクトとなりました。
- 10~12月期純利益:前年比約23%減[ニュース内容3]
- 円高により米ドル、人民元建て取引が円換算時に目減り
- AI分野の需要自体は底堅く、装置受注も活況維持
半導体分野はグローバルビジネスであるため、日本国内での円高が主力顧客の多い海外売上全体に直結します。円高ドル安が加速する局面ではどうしても円建て業績が押し下げられ、利益水準が大きく変動するのが現実です。
半導体市場とディスコの成長シナリオ──AI需要で先行投資も積極化
ディスコの根幹事業である「シリコンウエハーの切断・研削装置」は、最先端半導体製造工程に不可欠な分野です。現在、AIチップやデータセンター需要の高まりに支えられ、世界各国の半導体メーカーからの受注が伸びています。2024年以降の供給能力強化や研究開発費増加もその流れの一環であり、設備投資を伴った成長路線を堅持しています。
- AI/IoT/自動運転などの次世代技術の進展により、高集積・高精度な半導体加工技術が求められている
- ディスコは世界でも数少ない「切断・研削」専業のグローバルリーダー
- 半導体製造装置市場は年率7~10%前後の伸長(直近2年)を維持
- 生産能力増強・R&D・コスト競争力強化のため投資を積極化
ただし足元での円高進行、消耗品コストや物流コスト増大、地政学リスク(米中対立の拡大など)は中長期業績へのリスク要因です。グローバルな事業展開を維持するためには、為替変動対策やサプライチェーン分散なども引き続き重要です。
株主・投資家への情報提供──ディスコのIR姿勢と今後の見通し
ディスコは株主・投資家向けに公式サイトで決算短信・説明資料・質疑応答などを定期的に公表し、透明性の高いIR(投資家向け広報)活動を展開しています。直近の決算説明会では、為替影響の大きさや旺盛なAI需要への対応強化、グローバル生産体制の再構築などがトピックスとして取り上げられました。
2026年3月期の通期業績見通しについては現状非開示(開示時期未定)ですが、今後の為替相場や半導体市況による業績変動が丁寧にウォッチされています。AI・データセンターなど主要エンドマーケットの成長期待は強いものの、「円高」や国際情勢リスクを意識した慎重な経営姿勢が続く見通しです。
まとめ:ディスコの実力と課題、これからの展望
ディスコの2025年度上半期決算は、AI・半導体需要の波に乗り「収益力の底堅さ」を示しつつも、為替リスクという現実が収益を圧迫する構図が浮き彫りとなりました。ただ、基礎的な競争力や業界シェアは変わることなく、将来に向けた投資を継続できる力強さも見せています。世界的な半導体産業の変革期において、同社の事業展開・イノベーション戦略から今後も目が離せません。
- AI・先端半導体向け需要の追い風を享受、営業・経常利益は予想超え
- 円高やコスト増で四半期純利益は前年同期比減少
- グローバル分散・為替対策・研究開発投資で未来志向の経営続く
読者の皆さんも、日本発グローバルテック企業・ディスコの動向や、日本半導体産業の今後の展望にぜひご注目ください。



