デンソー、2026年3月期の利益予想を3%下方修正~品質引き当てと為替影響が重圧

自動車部品大手のデンソーが2025年10月31日に発表した2026年3月期(通期)の決算説明では、連結最終利益の予想を従来の5150億円から4970億円へと3.5%引き下げることが明らかになりました。同社は国際会計基準(IFRS)に基づいた決算を報告しており、この下方修正は市場に大きな反応をもたらしています。

業績悪化の主要因

下方修正の背景には、複数の要因が絡み合っています。まず第一に、第2四半期(7月~9月)に発生した品質引き当てが利益を圧迫しました。この四半期の連結最終利益は前年同期比で46.0%減の520億円に落ち込んでおり、売上営業利益率も7.6%から5.7%へと悪化しています。

第二に、為替レートの前提が見直されたことも大きな影響を及ぼしています。デンソーは第3四半期以降の為替レートを、ドル円で従来予想の145円から145円に据え置くものの、ユーロ円については160円から170円へと円安方向に修正しました。この為替前提の見直しに伴い、営業利益予想も引き下げられています。

上期(4月~9月)の実績

2026年3月期第2四半期累計(4月~9月)の連結最終利益は1313億円となり、前年同期比31.2%の大幅な減少を記録しました。この不振は、アジア市場における販売の低迷や日本国内の自動車メーカーによる稼働停止に伴う減産といった市場環境の悪化を反映しています。

営業面では、この期間中の営業利益が圧縮され、売上営業利益率が低下傾向を示しています。同社が直面する課題は、単なる一時的な不調ではなく、構造的な市場環境の変化と品質問題が複合的に作用していることを示唆しています。

通期見通しと下期への期待

興味深いことに、デンソーの発表資料に基づいて計算すると、下期(10月~3月)の連結最終利益は前年同期比60.2%増の3656億円へと大幅に拡大する見込みとなっています。この数字は、上期の不調を補い、通期の利益目標達成に向けた重要な局面が下期に集中することを意味しています。

通期の増益率は、当初予想の22.9%増から18.6%増へと縮小する見通しとなりました。前期の最終利益が4190億円であったことを踏まえると、修正後の予想4970億円は依然として前期比で約18.6%の増益を実現することになります。

市場評価との関係

アナリスト予想との比較では、IBESがまとめた17人のアナリストによる通期連結純利益の平均値が4767億円であったのに対し、デンソーの修正後予想4970億円はこれを上回っています。つまり、市場コンセンサスと比べると、デンソーの見通しはより楽観的なポジションを保っていることがわかります。

この点は、同社の経営陣が下期以降の業績回復に対して一定の自信を持っていることを示唆しています。品質問題の解決見通しや市場環境の改善予測が、こうした数字に反映されているものと考えられます。

中期目標に向けた取り組み

デンソーは2025年中期方針として、2025年度の売上収益を7兆2000億円、営業利益を6750億円とする目標を掲げています。この目標は、2024年度に達成した過去最高の売上収益7兆1618億円と営業利益5190億円からの成長を想定したものです。

同社の経営戦略は、電動化および安心・安全製品といった注力領域での拡販、ポートフォリオの入れ替えによる収益効率の強化、そして継続的な合理化の追求を中心としています。これらの施策が、今期の下方修正を乗り越えるための重要な鍵となります。

今後の展開

デンソーの下方修正は、グローバル自動車産業全体が直面する課題を象徴しています。アジア市場における販売低迷、為替変動への対応、品質管理の強化など、複数の課題に同時に対処する必要があります。

特に注視すべき点は、下期における業績回復の実現可能性です。修正後の通期予想が達成できるかどうかは、今後の市場環境の推移、为替動向、そして品質問題への対応状況に大きく左右されることになるでしょう。

市場関係者の間では、デンソーが発表した見通しに対して慎重な評価も存在します。しかし、同社の長期的な成長戦略である電動化への対応や安全技術への投資が、中期的な競争力強化に寄与することは確実と見られています。

参考元