メモリ高騰でPCは本当に値上げへ?──広がる「pc 値上げ」の波をやさしく解説

ここ最近、「パソコンが値上げされるらしい」「メモリが高くなっている」というニュースを目にする方が増えています。キーワードは「メモリ(DRAM)の価格高騰」です。
この記事では、なぜメモリ価格が急に上がっているのか、それがパソコンやスマホ、ゲーム機などのデジタル製品の値上げにどうつながるのかを、やさしい言葉で整理してお伝えします。

なぜ今、PCの値上げが話題になっているのか

直接のきっかけになっているのは、世界的なメモリ不足と価格高騰です。パソコンに欠かせないDRAMメモリの価格が、ここ数カ月で2倍〜3倍以上に跳ね上がっているケースも報告されています。

この状況を受けて、世界シェア上位の大手PCメーカー3社(デル、レノボ、HP)が一斉に値上げを予告するという、これまでにあまりなかった事態になっています。

日本向けにPCを供給しているメーカー各社も、IT系メディアの取材に対し、メモリやストレージ価格の高騰を認識しており、PC価格への影響を検討していると答えています。

メモリ価格はどれくらい上がっているの?

自作PC向けパーツ市場では、メモリ価格の上昇が特に分かりやすく表れています。PCパーツの価格動向を集計している海外サイトでは、次のような傾向が報告されています。

  • DDR4-3600 32GB(16GB×2)のキットは、2025年6月頃から値上がりを始め、12月時点で値上がり前の約3倍の価格に到達
  • DDR4-3600 64GB(32GB×2)も同様に、大きく値上がり
  • DDR5-5600 32GB(16GB×2)は、2025年9月頃までは比較的安定していたものの、12月時点では3倍以上の水準に急騰

国内の解説記事でも、2025年10月頃から大容量メモリの在庫が目に見えて減り、11月以降はパーツ価格が一気に「倍以上」に跳ね上がったとまとめられています。

特に、最近主流になりつつあるDDR5メモリは、2025年秋以降に2~3倍以上の値上がりが見られ、高クロック・大容量モデルは在庫不足と入荷遅延が発生しているとされています。

メモリ高騰がPC価格にどう響くのか

パソコンの価格の中で、メモリチップは製造コストの約15〜18%を占めると言われています。 メモリそのものが2~3倍になると、メーカーにとってはかなり大きなコスト増となります。

そのため、これまではメーカーがある程度コストを吸収してきた部分もありましたが、ここまで継続的かつ急激な高騰になると、最終的な製品価格にも反映せざるを得ないというのが各社の見方です。

実際、BTOパソコン(構成を選んで注文するタイプ)では、パーツの仕入れ価格の変動が、販売価格にすぐ反映されやすいため、メモリ価格の上昇が即座にPC本体の値上げとなって現れています。

PC大手3社が相次いで「値上げ」を予告

メモリ高騰の影響を象徴するニュースとして、PC世界大手3社(デル、レノボ、HP)が、DRAM不足と価格高騰を理由に値上げを示唆したことが挙げられます。

デル:最大15〜20%の値上げを警告

市場調査会社TrendForceなどの報道によると、デルの幹部は「かつてない速度でメモリコストが上昇している」と述べ、早ければ12月中旬にも、PC製品の価格を15〜20%値上げする可能性があると顧客に通知したとされています。

レノボ:2026年初頭から価格見直しを予告

レノボは顧客に対し、メモリ不足とAI・クラウド市場の急成長への対応を理由に、2026年1月1日から全製品価格を見直すと案内しました。 具体的な値上げ幅は明かされていませんが、デルと同程度になるとの見方も報じられています。

HP:状況次第で値上げの可能性を示唆

HPのCEOも、DRAM価格の高騰と供給不安を受けて、2026年後半にかけて厳しい状況が続く可能性に言及し、「必要に応じて価格を引き上げる可能性がある」とコメントしています。

これら3社は、いずれも世界PC市場で大きなシェアを持つメーカーです。そのすべてがメモリ要因による値上げ方針に言及したことは、業界全体にとっても大きなニュースとなりました。

国内メーカーや販売現場の反応

国内向けにPCを供給している各メーカーも、ITmedia NEWSの取材に対し、メモリ・ストレージ価格の高騰を認め、今後の価格改定を検討していると回答しています。

また、別の国内向け解説記事では、すでに多くのメーカー製PCで価格改定が進行中であり、一部メーカーは「DRAM・SSDコストの上昇による価格改定」を正式に発表したとされています。

流通在庫が切り替わるタイミングで、順次値上げされた価格の製品へと置き換わっていくため、これからしばらくの間は、同じスペックでも以前より高い価格で販売されるケースが増えると見込まれます。

PCだけじゃない──スマホやゲーム機にも広がる影響

今回のメモリ高騰は、PCに限らず、スマートフォンやゲーム機など、あらゆるデジタル機器に影響する可能性があります。ITmedia NEWSの記事では、「PCだけじゃない、スマホやゲーム機にも値上げの波?」というタイトルで、この問題を取り上げています。

スマホもゲーム機も、内部にはDRAMやフラッシュメモリが搭載されています。特にハイエンドモデルでは、大容量メモリを売りにした製品も多く、コスト上昇にさらされています。

現時点で、すべての製品が即座に値上げされているわけではありませんが、新機種の価格設定が高めになる、あるいは同価格帯でも搭載メモリ容量が抑えられるなど、形を変えて影響が出る可能性も指摘されています。

なぜメモリ価格はここまで高騰しているのか

メモリ高騰の背景には、構造的な需要増があります。単なる季節要因や為替変動では説明できない規模の変化が起きていると分析されています。

AIサーバー需要の急増

最大の要因として挙げられているのが、生成AIや大規模言語モデル(LLM)の学習・推論に使われるAIサーバー需要の急増です。

生成AIの学習には膨大なデータを扱うため、1台のAIサーバーに1TB(テラバイト)級のメモリが搭載されることもあります。 データセンターやクラウド事業者が、こうしたサーバーを大量に発注しているため、PC向けのDRAMに振り分ける余裕が小さくなっているのです。

供給側がすぐには増産できない事情

DRAMメーカーも増産を進めていますが、最先端プロセスでの製造拡大には時間と巨額の投資が必要です。 短期間で急増した需要に、供給が追いついていないのが現状です。

また、より新しい規格であるDDR5メモリへのシフトが進む一方で、旧世代のDDR4の生産ラインは縮小されています。 その結果、サーバー需要の影響が直接は及びにくいDDR4でも、生産量の減少による価格上昇が起きています。

大容量・高クロック品ほど影響が大きい

高クロックかつ大容量のメモリは、製造難度が高く、歩留まり(良品率)が低くなりやすいため、そもそもの供給量が限られています。 そこにデータセンターなどからの需要が集中することで、一般向けの流通在庫が枯渇しやすく、価格も大きく跳ね上がるという構図になっています。

今後の見通しと、ユーザーが意識したいポイント

DRAM市場の調査会社は、DDR5メモリの価格は2026年以降も「高止まり」が続く可能性が高いと予測しています。 これは、AIサーバーやクラウド基盤への投資が継続している一方で、DRAMメーカーの増産が技術・コスト面で追いついていないためです。

もちろん、市場環境は常に変化しており、各社の投資状況や需要の落ち着き方によって、将来的には再び価格が下がる局面もあり得ます。ただ、少なくとも現在の時点では、メモリ高騰がPC価格にも反映され始めていることは、複数のメーカーやメディアが一致して指摘しています。

パソコンの購入や買い替えを検討している方にとっては、次のようなポイントを意識しておくとよいでしょう。

  • 「メモリ価格が上がっている=同じスペックのPCでも以前より高くなりやすい」という前提を知っておく
  • BTOや自作の場合、メモリ容量をどうするかが価格に直結するため、用途に応じた適切な容量を見極める
  • メーカーや販売店のキャンペーンや旧モデルの在庫処分セールなど、価格が抑えられているタイミングをチェックする

また、IT系メディアによると、一部メーカーは顧客に対し、「価格引き上げ前に、できるだけ早めの注文を」と呼びかけているケースもあります。 それだけ、メーカー側もコスト上昇の影響を強く受けているということです。

まとめ:メモリ高騰は「pc 値上げ」の大きな要因に

ここまで見てきたように、現在のメモリ価格高騰は、単なる一時的な値動きではなく、AIサーバー需要を中心とした世界的な構造変化に支えられたものです。

その影響は、まず自作PCパーツのメモリ価格として表れ、続いてメーカー製PCやBTOパソコンの値上げ、さらにスマホやゲーム機など他のデジタル製品のコスト増へと波及しつつあります。

大手PCメーカー3社がそろって「値上げ」を口にしたことは、業界全体にとっても大きな転換点です。 ユーザーとしては、なぜ値上がりしているのかという背景を理解した上で、自分の用途や予算に合った製品選びをしていくことが、これまで以上に大切になってきています。

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