データセクション株価急落と大型受注の波紋 ― 日本生命全株売却の影響を探る

はじめに

2025年10月上旬、AIデータセンター事業を手掛けるデータセクション株式会社(証券コード:3905)が、株式市場で大きな注目を集めています。
主要株主であった日本生命保険相互会社による全株売却が明らかになった直後、データセクション株価は急落しました。一方で、新たなAIデータセンター事業での大型受注というポジティブな材料もあり、投資家心理は揺れ動いています。ここでは、今回のニュースに至る流れと市場への影響をわかりやすく解説します。

株価急落の背景 ― 日本生命の全株売却

2025年10月7日午後、データセクション株が突如として急落しました。その最大の要因は、日本生命保険相互会社が保有していた全株式の売却が判明したことです。市場では、主要株主が全保有株を手放すこと自体が大きなセンチメント悪化に繋がりやすいため、大量の売り注文が殺到しました。後場の株価は一時1,836円まで値を下げ、前日終値2,200円から13%以上の下落幅となりました。

  • 売却が明らかになったタイミングで、投資家がさらなる売り圧力を警戒
  • 日本生命は金融機関として長期安定株主であり、その離脱は市場心理に強く影響
  • 出来高は拡大し、一時5百万株近くまで膨れ上がった

株価推移 ― 直近の動き

直近1週間でのデータセクションの株価は、一時好調の動きが見られた後、今回の売却報道を受けて急落しました。2025年10月6日の終値は2,200円、同日の安値は1,836円でした(一時急落からやや下げ幅を縮めて引け)。この日の取引量は4,997,200株と通常よりも高水準になっています。

日付 始値 高値 安値 終値 出来高
2025/10/6 2,265 2,287 2,141 2,200 2,954,400
2025/10/7(速報) 一時1,836円まで下落、売買高は約5百万株

大型受注による株価上昇と反動

実は、この急落に先立ち、データセクション株は一時大幅続伸する場面がありました。主な理由は、2025年10月3日の取引終了後に発表されたAIデータセンターの大型受注です。受注金額は年2億6,600万ドル(約395億円)に及び、取引先については非開示ながらも、グローバルな拡大を視野に入れた事業成長への期待感が一気に高まりました。

  • 豪州シドニーでの新規AIデータセンター案件で、受注額は約395億円相当(年間)
  • AI・データセンター関連銘柄としての注目と共に大商いに発展
  • こうした好材料を受けて、株価は10月上旬で一時2,700円台まで上昇した経緯がある

しかし、大型受注による株価の高騰も、日本生命の全株売却というネガティブインパクトには抗えず、大口保有者の売却発表直後から大きく値を崩す展開となりました。

株主構成の変化と今後の注目点

もう一つ市場が注目しているのは、「5%ルール」の開示に基づき、個人投資家の杉原行洋氏の保有比率が19.99%から21.14%に増加したことです。これは、主要な機関投資家である日本生命が離れ、個人や他の大口投資家による株式取得が進んでいることを意味します。

  • 5%以上の大量保有者は「5%ルール」に基づきその取得や売却を届け出る義務がある
  • 杉原氏が21%超まで持ち株比率を上げた背景として、今後の経営参画や影響力拡大の思惑も市場の関心事
  • 主要な安定株主が抜けたことで、中長期の値動きが不安定化するリスクも顕著

決算情報と事業概況 ― 収益環境の変化

データセクションの2026年3月期第1四半期は、売上高6.68億円(前年同期比23.9%増)となるなど、事業は拡大を続けています。ただし、AIデータセンター事業などへの積極投資によって四半期純損失は3.33億円に及び、成長投資と収益性のバランスが課題となっています。

  • 第20回新株予約権の行使によって資金調達も継続
  • 財務の健全性と事業投資の両立が当面の経営課題

投資家心理と株価展望 ― ポジティブ材料とリスクの交錯

今回のニュースを受けて、今後の株価動向には複数の要因が交錯しています。

  • ポジティブ材料
    • AIデータセンター事業という成長分野での大型受注・グローバル展開期待
    • 新興企業ならではのダイナミックな成長ストーリー
  • リスク・懸念材料
    • 安定大株主が去ったことでの投機的な値動きへの不安
    • 事業投資優先で赤字基調が継続、財務健全性への懸念
    • 5%ルール絡みでの新たな大株主動向と経営譲渡・影響力の変化

AI・データセンターという成長セクターでの躍進と同時に、安定株主の喪失という大きな転換点に立つデータセクション。今後の株価は、事業の実績や新たなステークホルダーの動向、そして市場心理の変化といった複数の要素が複雑に絡み合って決まっていくと考えられます。

まとめ

今回の一連の動きは、データセクションが期待と不安を一身に集める「成長企業ならではのダイナミズム」を市場に示しています。AIデータセンターという最先端領域での拡大期待による好材料と、日本生命全株売却による株価急落という逆風。今後もしばらくは、激しい値動きとニュースの応酬が続く可能性が高いと言えるでしょう。

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