和歌山・白浜「パンダなき危機」──4頭帰国がもたらす町と人々への影響

アドベンチャーワールドとパンダ——深い絆の歴史

和歌山県白浜町のアドベンチャーワールドは、日本国内最多となるパンダの飼育と繁殖実績を誇る動物園です。1994年から中国との協力のもとジャイアントパンダの飼育を開始し、多くの赤ちゃんパンダ誕生の舞台となってきました。良浜(らうひん)やその子どもである結浜(ゆいひん)彩浜(さいひん)楓浜(ふうひん)もまた、数多くの来場者と地元に笑顔や希望を届けてきた存在です

4頭の帰国、その日まで——2か月に及ぶ特別な旅立ちの準備

2025年6月28日、日本で生まれ育った4頭のパンダ──良浜・結浜・彩浜・楓浜——が中国四川省の成都ジャイアントパンダ繁育研究基地へ帰国しました。出発に先立ち、パンダたちは1か月間の隔離検疫期間を過ごし、ガラス越しでのみの一般公開となりました。6月27日には、アドベンチャーワールドで盛大な歓送セレモニーが開催され、飼育スタッフ、地元住民、全国から集まったファンが見守る中、4頭は白浜を旅立ったのです

  • トラック内やチャーター機の貨物室もパンダに適した温度・湿度が徹底管理され、彼らの健康が最大限守られました。
  • 輸送には日本側と中国側スタッフが同行し、フライト中も食事や休息が取れるよう特別なケージが用意されました
  • 現地到着後、成都市の施設で慎重に検疫が行われ、今後の様子も公表される予定です

なぜ今、パンダたちは帰国したのか

今回の帰国は、中国との間で進めてきた「ジャイアントパンダ保護共同プロジェクト」の2025年8月での契約満了が主な理由です。このプロジェクトは
パンダの貸与による収益だけではなく、繁殖や保護、遺伝子多様性の維持、環境教育など多岐にわたる協力の歴史を有しています。

個体ごとの年齢や健康も考慮されています。良浜は高齢で、中国の医療体制の充実した施設で余生を送る方針となりました。若い3頭には、今後繁殖やより自然に近い生育環境が必要とされ、中国の基地が最適な場と判断されたのです

白浜町にもたらされた「観光危機」

華やかなセレモニーの後、町には急激な観光客減少という現実が押し寄せました。アドベンチャーワールドを目当てに訪れていた人々の多くがパンダを観ることを目的としていたため、その存在が消えたことでホテル宿泊者数は『1万人減』という数字も報告されています[ニュース内容1][ニュース内容3]

  • 地元町長は「お客さんが少なくなったのを“パンダのせい”にしてしまう悪循環を断ち切らねばならない」と表明し、町全体で新たな観光振興策や町の魅力発信に取り組む必要性を訴えています。
  • 地域経済を支えるホテルや飲食店、土産物店などにも影響が出始めており、喪失感や不安が広がっています。

町民・ファンの想いと涙——にぎわいを築いたパンダの存在感

地元住民や毎年パンダを見に訪れていたファンからは、
もう日本で会えない寂しさ」「この子たちがいなくても、これから白浜を応援したい」など、複雑な声が寄せられています
別れのタイミングでは涙ぐむ人の姿も多く、最後の観覧日には長蛇の列ができました。

  • パンダを目当てに初めて白浜を訪れ、町や人々に魅了されたファンも多く、「理由はパンダでも、白浜自体を好きになった」という声も聞かれます。
  • パンダ誕生や成長を見守り、名付け親や応援団として関わってきた人々の心にも、その記憶や体験は大切なものとなっています。

パンダの中国帰国——今後のゆくえと日中友好の架け橋

返還先となった成都ジャイアントパンダ繁育研究基地は、世界でも一、二を争うパンダ繁殖と研究の拠点です。パンダたちはここで検疫後に新たな生活を始め、今後もその様子が発信される予定です

今回のパンダの帰国は単なる“動物の移動”ではなく、30年以上にわたる日中両国の相互理解と信頼関係の象徴でもあります。中国動物園協会も「日本側との友好的な協議のもと、安全に帰国した」との声明を発表しています

新たな白浜へ——パンダ不在下の挑戦と期待

これから白浜町は「パンダなき時代」の新たな一歩を歩み始めます。「観光危機」を乗り越えるためには、地域資源の再発掘や新たな観光価値の創出が求められています。
温泉や美しい海岸線、歴史ある文化・グルメなど、白浜ならではの魅力も改めて見直されています。

  • 町長・観光協会・地元事業者などが連携し、パンダに頼らない独自の町おこし・観光振興戦略を模索しています。
  • 「パンダのせいで客が減った」というイメージを払拭し、新たな発信とチャレンジに町民一丸で取り組もうという機運も高まり始めています。

一方で、「またいつかパンダが白浜に戻ってきてほしい」「白浜の再出発を見届けたい」という願いも広がっており、パンダと過ごした日々の思い出はこれからも色あせることはありません。

まとめ──パンダが残してくれたもの、これから町が取り戻すべき未来

4頭のジャイアントパンダは、和歌山・白浜に多くの笑顔、友情、思い出、そして経済的な活力をもたらしました。その帰国は町に試練をもたらしていますが、「パンダだけではない白浜の魅力」を発信する取り組みは新たなエネルギーになりつつあります。

白浜町にとって、“パンダなき危機”は町が本来持つポテンシャルを問われる契機でもあります。多くの人々の願いや想いが町の未来を創る力になることを願い、今後の白浜の挑戦に注目が集まります。

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